2018年の大雨で床下まで水が来た。もう直したし、言わなくてもいいのでは」
浸水の話をしたら、買い手がつかなくなるのではと心配」
親から『昔、庭が冠水した』と聞いたことがあるだけ。これも伝えるべきなのか」
浸水したことがある家を売るとき、被害歴をどこまで伝えるかは、多くの売主の方が迷うところです。
結論から言うと、知っている浸水の事実は伝えるのが基本です。伝えずに売ると、あとで責任を問われることがあります。一方で、伝え方を工夫すれば、必要以上に不安を与えずに済みます。
この記事では、ハザードマップの説明と被害歴の告知のちがい、伝える内容、契約不適合責任、そして告知書の書き方の例を整理しました。
売るときの「説明」には2つあります。①ハザードマップ上の位置の説明は、2020年8月28日から不動産会社の義務です。②過去に浸水した事実は、売主が知っていることを告知書などで伝えるものです。「何年前なら言わなくてよい」という決まりはありません。 知っている事実は伝え、分からないことは「分からない」と伝えましょう。「責任を負わない」という特約を付けても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。修繕の記録や写真、その後の対策をそろえて、事実を落ち着いて示すことが大切です。
2つの「説明」は別物
| 項目 | ① ハザードマップ上の位置の説明 | ② 過去の浸水の事実(被害歴) |
|---|---|---|
| だれが | 不動産会社(宅地建物取引業者) | 売主(知っていることを伝える) |
| 何を | 水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップ上の物件のおおむねの位置 | 実際に浸水した時期・程度・修繕など |
| いつから・根拠 | 2020年8月28日から、重要事項説明で義務 | 売買契約の当事者としての説明。告知書(物件状況等報告書)に書くのが一般的 |
| 対象 | すべての売買・賃貸 | 浸水したことを売主が知っている家 |
ハザードマップで色がついていない場所でも、実際に浸水したことがあれば、②は伝える必要があります。 逆に、色がついていても、実際に浸水したことがなければ、②は「浸水したことはない(知る限り)」と伝えます。
なお、不動産会社には、宅地建物取引業法で、重要な事項について、故意に事実を告げない、または事実と異なることを告げることが禁じられています。売主から聞いた浸水の事実は、不動産会社から買主にも伝えられます。
何年前のことまで伝える?
「何年前なら言わなくてよい」という決まりはありません。 判断の目安は、次のとおりです。
| 売主が知っていること | 伝えるか |
|---|---|
| 自分が住んでいた間に、床上・床下まで浸水した | 伝える |
| 敷地や車庫が冠水したことがある(建物の中には入っていない) | 伝えるのがおすすめ(買主が気にするポイント) |
| 前の所有者や親から「昔浸水した」と聞いている | 聞いている範囲で伝える(「〇〇年ごろ、床下まで浸水したと聞いている」など) |
| 家の前の道路が冠水したことがある | 伝えるのがおすすめ |
| 浸水したかどうか分からない | 「分からない」と伝える。「浸水はなかった」と言い切らない |
迷ったら伝える、分からないことは分からないと伝える。これが、あとで困らないための基本です。
伝える内容|7つのポイント
告知書や、不動産会社への説明では、次のことを整理しておきましょう。
- いつ:年月(例:2018年7月)、どんな雨・台風だったか
- どこまで:敷地だけか、床下か、床上か、水の深さ(何cm程度)
- 原因:川からあふれた、側溝や下水からあふれた(内水)、など分かる範囲で
- 被害:床・壁・設備(給湯器、エアコンの室外機など)の被害
- 修繕:いつ、どこを、どう直したか(床板の張り替え、消毒・乾燥など)、業者、費用
- 保険・証明:火災保険の保険金の請求、り災証明書の有無
- その後の対策:止水板、かさ上げ、排水の設備、周りの排水の工事など
書類や写真が残っていれば、それが一番の説明材料になります。
契約不適合責任|知りながら告げないと、特約があっても責任を免れない
2020年4月の民法改正で、売主の責任は契約不適合責任になりました。売った家が契約の内容に合っていないと、買主から次のことを求められることがあります。
- 修補(直すこと)
- 代金の減額
- 損害賠償
- 契約の解除
個人の売主どうしの取引では、古い家について「責任を負わない」「責任を負う期間を短くする」という特約を付けることがよくあります。ただし、売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れません(民法572条)。
つまり、浸水の事実を隠して売ることは、特約では守れないということです。
過去の浸水の説明が争われた裁判例
東京高裁 平成29年7月19日判決では、中古住宅の売買で、過去に地下駐車場が浸水したことがあるにもかかわらず、「浸水はなかった」と説明した売主と媒介業者について、調査・説明の義務に違反したとされました。購入後に再び浸水し、簡易止水板の設置費用、車の修理費、弁護士費用など、合計約237万円の賠償が認められています。
この裁判例から分かるのは、確認できないことを「なかった」と言い切らないことの大切さです。
例|告知書にこう書く(仮)
例:2018年7月の大雨で床下浸水、その後修繕した家
2018年7月の大雨の際、床下まで浸水しました(床下の地面から約20cm。建物の中には入っていません)。原因は、家の前の側溝からあふれた水と思われます。同年8月に、業者に依頼して床下の消毒・乾燥を行いました(作業報告書あり)。その後、2026年9月までに浸水したことはありません。
例:親から聞いた話しか分からない家
父から「昭和50年代に一度、庭が冠水したことがある」と聞いています。建物の中まで浸水したかどうかは分かりません。私が管理を始めた2015年以降、浸水したことはありません。
事実・時期・程度・その後の対応を、分かる範囲で具体的に書くのがポイントです。「多分大丈夫」「問題ない」といった評価の言葉は避けましょう。
伝えると売れにくくなる?|伝え方で印象は変わる
浸水の事実を伝えると、買主が慎重になることはあります。ただ、事実を隠して売るほうが、あとで大きな問題になるおそれがあります。
伝え方で、買主の受け止め方は変わります。
| 伝え方 | 買主の受け止め方 |
|---|---|
| 「浸水したことがあります」だけ | 何がどうなったのか分からず、不安が大きくなる |
| 時期・程度・修繕・その後を記録とセットで伝える | 状況が分かり、判断しやすくなる |
| 建物の状態の調査(インスペクション)の結果もある | 今の状態が分かり、さらに安心材料になる |
既存住宅の状態を専門家が調べる「建物状況調査(インスペクション)」を売る前に受けておくと、床下や基礎の状態を客観的に示せます。
売る前にすること|4つのステップ
- 浸水の記録を集める(写真、修繕の見積書・請求書・作業報告書、保険金の書類、り災証明書)
- 家族に聞く(親や前の所有者から聞いていることを書き出す)
- 必要なら建物状況調査(インスペクション)を受ける(床下・基礎の状態を確かめる)
- 不動産会社と一緒に告知書を書く(事実・時期・程度・その後の対応を整理)
当社にできること・できないこと
当社は、岡山市北区奉還町で売買仲介を行っている不動産会社です。
当社がお手伝いできるのは、浸水の記録の整理、告知書の書き方のアドバイス、ハザードマップ上の位置の説明、建物状況調査(インスペクション)の手配のご相談、浸水歴をふまえた査定、そして売却です。
一方で、契約不適合責任など法的な判断は弁護士、建物の状態の専門的な判断は建築士などにご相談ください。当社は、浸水のリスクがない、安全だ、と保証することはできません。
よくあるご質問
浸水したことがある家を売るとき、被害歴は伝えなければいけませんか。
売主が知っている浸水の事実は、告知書などで伝えるのが基本です。「責任を負わない」という特約を付けても、知りながら告げなかった事実については、売主は責任を免れません(民法572条)。
何年前の浸水まで伝える必要がありますか。
「何年前なら言わなくてよい」という決まりはありません。知っている事実は伝え、前の所有者や親から聞いた話は、聞いている範囲で伝えましょう。分からないことは「分からない」と伝えることが大切です。
床下浸水だけでも伝えるべきですか。
伝えるべきです。床下浸水は、床下の湿気やカビ、木材の傷みにつながることがあり、買主が気にするポイントです。修繕や消毒・乾燥をしていれば、その内容もあわせて伝えましょう。
ハザードマップの説明と、被害歴の告知は何がちがいますか。
ハザードマップ上の位置の説明は、2020年8月28日から重要事項説明で不動産会社に義務づけられたものです。被害歴の告知は、実際に浸水した事実を売主が伝えるものです。ハザードマップで色がついていない場所でも、実際に浸水したことがあれば伝える必要があります。
浸水の事実を伝えなかった場合、どうなりますか。
買主から、修補、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められることがあります。過去の浸水について誤った説明をした売主と媒介業者に、止水板の設置費用など約237万円の賠償が認められた裁判例(東京高裁 平成29年7月19日)もあります。
浸水したかどうか分からない場合は、どう書けばよいですか。
「浸水はなかった」と言い切らず、「分からない」「私が住んでいた〇〇年以降は浸水していない」など、知っている範囲を正確に書きましょう。
浸水歴を伝えると、売れにくくなりませんか。
買主が慎重になることはありますが、時期・程度・修繕・その後の対策を記録とセットで伝えると、状況が分かり判断しやすくなります。建物状況調査(インスペクション)の結果があると、さらに安心材料になります。
浸水歴のある家、伝え方から一緒に整えます
浸水の記録の整理、告知書の書き方のアドバイス、ハザードマップ上の位置の説明、建物状況調査の手配のご相談、浸水歴をふまえた査定まで。
- 電話で相談する:086-239-3296(10:00〜18:00/水曜定休)
- LINEで相談する(修繕の書類や浸水したときの写真をそのまま送れます)
- メールで相談する:minikuru@bc.wakwak.com
※契約不適合責任など法的な判断は弁護士にご相談ください。当社は、浸水のリスクがないことを保証することはできません。
正直に伝えることは、あなた自身を守ることでもあります。 浸水したことを伝えるのは、勇気がいることかもしれません。でも、事実をきちんと伝えておけば、売ったあとに心配を抱え続けずに済みます。記録を一つずつ集めて、一緒に告知書を整えていきましょう。急がなくても大丈夫です。
最終更新日:2026年9月26日
確認先:国土交通省(水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明の義務化)、民法(契約不適合責任、担保責任を負わない旨の特約)、宅地建物取引業法(重要な事項の不告知等の禁止)、一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO No.117 裁判例紹介)、岡山市(住家のり災証明書の交付)。法的な判断は弁護士にご確認ください。
(この記事は一般的な情報の整理です。当社は、法的な判断、浸水のリスクがないことの保証は行えません。)
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