中古住宅として売るか古家付き土地で売るか|岡山の分かれ目
「まだ住める家だとは思う。でも、買う人が住みたいと思うかは分からない」
築年数の経った家を売ろうとするとき、多くの方がここで立ち止まります。中古住宅として出すのか、土地として出すのか。同じ物件でも、どちらで売り出すかによって、問い合わせてくる人も、価格の決まり方も、契約書の中身も変わります。
そして、この判断は「建物がきれいかどうか」だけでは決まりません。買主がどうやってお金を用意するかという、一見遠そうに見える要素のほうが、実は結論を大きく左右します。
この記事では、岡山市とその周辺で売買のご相談をお受けしている不動産会社の立場から、この分かれ目をどう判断すればいいのかを整理します。
1.この記事が扱う「分かれ目」はどこか
築古住宅の売り方は、大きく3つあります。この記事が扱うのは、そのうち①と②の分かれ目だけです。
| 売り方 | 建物の扱い | この記事での扱い |
|---|---|---|
| ① 中古住宅として売る | 住むもの(=価値がある前提) | 本記事のテーマ |
| ② 古家付き土地として売る | おまけ(=土地の価格で評価) | 本記事のテーマ |
| ③ 解体して更地で売る | なくす | 扱いません(関連記事へ) |
📌 「壊すかどうか」と「値段をつけるかどうか」は別の判断です
解体するかどうかで迷っている方は、先に「岡山市で古家付き土地を売りたい方へ|解体前に知るべき注意点」をご覧ください。
本記事は、建物を残すと決めたうえで、どちらの看板で売り出すかという話です。
2.いちばん大きな違いは「買主が別人」だということ
不動産ポータルサイトやレインズでは、「中古一戸建て」と「売土地」はカテゴリが分かれています。つまり、探している人の入口そのものが違います。
| 中古住宅として出す | 古家付き土地として出す | |
|---|---|---|
| 主な買主 | すぐ住みたい人、リフォーム前提で探す人 | 建て替えを考えている人、土地を探している人 |
| 比較される相手 | 近隣の他の中古戸建て | 近隣の売土地・分譲地 |
| 見られるポイント | 水回り、間取り、日当たり、傷み具合 | 面積、形、接道、方位、駐車スペース |
| 内見の性格 | 家の中をじっくり見る | 外から見て終わることも多い |
ここで大事なのは、どちらが「上」ということではないという点です。土地を探している人にとって、中古住宅のカテゴリに埋もれている物件は見つけられません。逆も同じです。売り出すカテゴリを間違えると、いちばん買ってくれそうな層に届かない——これが、価格を下げても反応が出ない物件の典型的な原因です。
3.実務でいちばん効いてくるのは「買主の資金計画」
ここが、この判断のもっとも実務的な部分です。
中古住宅として買う場合
買主はその家に住むことを前提に、通常の住宅ローンを組みます。物件を担保にして融資が実行されるため、手続きは比較的シンプルです。ただし、建物が昭和56年以前だと住宅ローン控除の要件で別の壁が出てきます(この点は築古物件のリフォーム記事もあわせてご覧ください)。
古家付き土地を買って建て替える場合
話がひとつ複雑になります。住宅ローンは原則として建物を担保にするため、建物が完成してからでないと実行されません。土地の代金や着工金は、それより前に必要になります。そこで買主は、土地先行融資(分割融資)やつなぎ融資といった方法を使うことになります。
⚠️ 「誰が、いつ解体するか」を先に決めておかないと契約が止まります
金融機関によっては、土地取得資金の融資や建て替えにあたり、附属建物も含めてすべて解体され、更地になっていることの確認を求められることがあります。
ところが、引渡し前に売主が解体すれば売主の負担になり、引渡し後に買主が解体するなら融資実行のタイミングと噛み合わない、ということが起こります。
古家付き土地として売る場合は、解体の負担者・時期・費用の上限を契約の段階で具体的に決めておく必要があります。取り扱いは金融機関ごとに異なりますので、買主側の融資条件を早めに確認することが欠かせません。
💡 「現金で買う人」が多いのは、実は古家付き土地のほうです
建て替え前提の買主は、地元の工務店やハウスメーカーと一緒に動いていることが多く、資金計画も含めて相談相手がいます。一方で、融資の組み方が複雑になる分、売主側も条件を整理しておかないと話が流れやすいという側面があります。
4.契約の中身も変わります
| 中古住宅として売る | 古家付き土地として売る | |
|---|---|---|
| 建物の契約不適合責任 | 建物も取引の対象。設備の状態を含めて取り決めが必要 | 建物については免責とする特約を付けるのが一般的 |
| 付帯設備表 | 給湯器・エアコン・コンロなどの状態を細かく記載 | 簡素になることが多い |
| 残置物 | 原則として売主が撤去 | 解体前提なら扱いを個別に取り決め |
| 解体費の負担 | 問題にならない | 必ず取り決めが必要 |
⚠️ 免責特約があっても、隠したことは免責されません
古家付き土地では建物の契約不適合責任を免責とするのが一般的ですが、民法572条は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができないと定めています。
雨漏り、シロアリ、傾きなど、把握している不具合は、どちらの売り方を選ぶ場合でも物件状況報告書に記載してください。
5.税金の分かれ目:相続空き家の3,000万円特別控除
相続した家を売る場合、ここは金額のインパクトが大きい部分です。
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。ただし、この特例では建物が耐震基準に適合していること、または取り壊すことが求められます。
つまり、古家付き土地として建物を残したまま引き渡すと、そのままでは適用されません。ここまでは、よく知られた話です。
📌 ただし、令和6年1月1日以後の譲渡には道があります
令和6年1月1日以後に行う譲渡については、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、買主が耐震改修または取壊しを行った場合でも適用対象となる形に拡充されています。
つまり、古家付き土地として売る場合でも、売買契約に買主が期限内に取り壊す旨を定め、実際にそれが行われれば、控除の対象になり得るということです。契約書の書き方と引渡し時期の組み立てが結果を左右します。
⚠️ 適用可否は必ず税理士・税務署にご確認ください
この特例には、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること、売却代金が1億円以下であること、昭和56年5月31日以前の建築であること、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないことなど、複数の要件があります。また、制度自体の適用期限も定められています。
当社が個別の税務判断を行うことはできません。売り方を決める前に、税務の確認を先に済ませることをおすすめします。順番を間違えると、使えたはずの制度が使えなくなります。
もうひとつ:契約書の価格按分
中古住宅として売る場合、売買契約書に土地と建物の内訳価格を記載するのが一般的です。この内訳は、売主の譲渡所得の計算にも、買主側の扱いにも関係します。古家付き土地では建物価格をごく低額とすることが多くなりますが、実態と大きくかけ離れた按分は避けるべきです。この点も、税理士に相談したうえで決めてください。
6.岡山で、現地を見るときのポイント
ここからは、岡山でご相談をお受けしていて実際に判断材料になっている点です。
駐車スペースが2台取れるか
岡山は車が生活の前提になる地域です。既存の建物を残したまま、駐車が1台分しか取れない配置だと、中古住宅としては敬遠されやすくなります。逆に、建て替えれば2台置ける形の土地なら、古家付き土地としての評価が上がります。
接道と再建築の可否
ここは結論が逆転する重要ポイントです。再建築ができない土地の場合、「建て替え前提」の買主は買えません。つまり古家付き土地としての売り方が成り立ちにくく、むしろ「今ある建物を使える」ことのほうが価値になります。この場合は中古住宅として、リフォーム前提の買主に向けて出すほうが現実的です。
敷地が広すぎないか
岡山の郊外では、敷地も建物も大きい家が珍しくありません。建物が大きいほど解体費は上がります。「古家付き土地」として出すと、買主は解体費を差し引いて価格を考えるため、大きな家ほど土地としての手取りは目減りします。
市街化調整区域かどうか
市街化調整区域では、建て替えや用途の変更に制限がかかる場合があります。土地としての売り方が難しくなる一方、既存の建物をそのまま使えることに価値が出ることもあります。該当しそうな場合は、先に確認が必要です。
7.分かれ目チェックシート
当てはまる項目が多いほうが、その売り方に向いています。
| チェック項目 | 該当すると… |
|---|---|
| □ 水回り(キッチン・浴室・トイレ)がそのまま使える | 中古住宅寄り |
| □ 雨漏り・傾き・シロアリ被害が見当たらない | 中古住宅寄り |
| □ 再建築ができない、または建て替えに制限がある | 中古住宅寄り |
| □ 学区や駅距離など、住宅としての立地の魅力がある | 中古住宅寄り |
| □ 荷物の撤去が済んでいる、または撤去できる | 中古住宅寄り |
| □ 建物の傷みが構造部分に及んでいる | 古家付き土地寄り |
| □ 土地の形が整っていて、接道も良好 | 古家付き土地寄り |
| □ 周辺で建て替えや新築の動きが多い | 古家付き土地寄り |
| □ 建物に手をかける費用も時間もかけたくない | 古家付き土地寄り |
| □ 家財が大量に残っていて、撤去が難しい | 古家付き土地寄り |
🔎 迷ったときの目安
「自分の子どもが住むとしたら、どれくらい直す必要があるか」を考えてみてください。水回りの交換と内装で収まりそうなら中古住宅、構造から手を入れる必要があるなら古家付き土地。乱暴な目安ですが、実際の判断とそう遠くない答えが出ることが多いです。
8.「まず中古住宅で出して、様子を見て切り替える」は有効です
実務では、この進め方がよく機能します。中古住宅として出しておき、反応を見ながら古家付き土地に切り替えるという流れです。
理由は単純で、順番が逆だと不自然になるからです。土地として出していた物件を途中から「中古住宅」に変えると、買主から見たときに「売れないから見せ方を変えたのだろう」と映ります。逆に、中古住宅から古家付き土地への変更は、「建て替えたい方にも」という前向きな案内として自然に伝わります。
✅ 切り替えを考えるタイミングの目安
・掲載から1〜2か月、問い合わせがまったくない
・内見はあるが、水回りや傷みを理由に見送られることが続く
・問い合わせの内容が「建て替えられますか」「解体費はいくらですか」に偏ってきた
・近隣で同じような築年数の物件が、土地として成約している
※長く同じ条件で出し続けるほど「売れ残り感」が出ます。切り替えは早めのほうが結果につながりやすい印象です。
9.やってしまいがちな失敗
- 家財を残したまま中古住宅として出す……内見の印象が大きく下がります。片付けが難しいなら、最初から古家付き土地のほうが誠実です
- 建物価格をほぼゼロにしておきながら、広告で建物の魅力を強調する……買主が混乱し、価格交渉の火種になります
- 解体の負担者を決めないまま契約を進める……融資の段階で止まります
- 両方のカテゴリに、条件の違う内容で同時掲載する……情報の不一致は信頼を損ないます
- 税務の確認を後回しにする……3,000万円特別控除は、売り方と契約内容で結論が変わります
まとめ
中古住宅か古家付き土地か。この分かれ目は、建物の見た目ではなく、「誰に売るか」から逆算して決めるものです。
買主が変われば、探す場所が変わり、お金の用意の仕方が変わり、契約書の中身が変わります。そして相続した家であれば、税制の扱いまで変わります。先に売り方を決め、それに合わせて契約と税務を組み立てる——この順番を守れば、途中で止まるリスクはかなり下げられます。
どちらが向いているかは、現地を見ればおおよそ判断がつきます。迷っている段階でこそ、一度ご相談ください。
よくあるご質問
Q1.中古住宅として売るほうが、高く売れますか?
一概には言えません。建物に価値を認めてもらえれば、その分は上乗せされます。一方で、傷みが目立つ建物を中古住宅として出すと、内見のたびにマイナス評価を受け、結果的に値下げを重ねることになりがちです。高く売れるかどうかは「どちらで出すか」より「その物件を欲しい人に届いているか」で決まります。
Q2.古家付き土地にすると、建物はタダ扱いになるのですか?
価格の考え方としては、土地の価格から解体費を見込んだ形になることが多く、建物に大きな値がつくことは少なくなります。ただし契約上は建物も引き渡す対象で、所有権移転の登記も必要です。「建物がないもの」として扱えるわけではありません。
Q3.途中で売り方を変えても大丈夫ですか?
できます。中古住宅から古家付き土地への変更は自然に伝わります。逆方向はやや不自然に見られやすいので、迷ったら中古住宅から始めるほうが選択肢を残せます。
Q4.再建築できない土地です。どちらがよいですか?
建て替え前提の買主が入れないため、古家付き土地としての売り方は成り立ちにくくなります。今ある建物を使えることが価値になりますので、中古住宅としてリフォーム前提の買主に向けて出すのが現実的です。
Q5.相続した家です。3,000万円の控除は使えますか?
要件を満たせば使える可能性があります。建物を残したまま引き渡すと、そのままでは適用されませんが、令和6年1月1日以後の譲渡では、翌年2月15日までに買主が取壊しなどを行った場合も対象となる形に拡充されています。契約の書き方と引渡し時期が結論を左右しますので、売り方を決める前に税理士または税務署へご確認ください。
Q6.査定だけお願いできますか?
できます。「中古住宅として出した場合」「古家付き土地として出した場合」の2パターンでお出しすることも可能です。数字を並べたうえで判断されるのが、いちばん納得のいく進め方だと思います。
「中古住宅」と「古家付き土地」、2パターンで査定します
どちらで出すかは、現地を見て、周辺の動きを確認すれば、おおよその方向が見えてきます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、個別の物件・契約・税務・融資についての判断を示すものではありません。売却の結果を保証するものでもありません。制度の内容や要件は改正されることがありますので、ご利用の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。
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