家族信託は実家の空き家対策に使える?岡山でのメリットと注意点
「親が認知症になると実家が売れなくなる」と知って調べていくと、家族信託という言葉にたどり着く方が多いようです。
結論からお伝えすると、実家の空き家対策として、家族信託は有力な選択肢のひとつです。親御さんの判断能力が低下しても、託された家族が売却や賃貸を進められます。しかも成年後見と違い、家庭裁判所の許可は不要です。
ただし、万能ではありません。費用がかかり、できないこともあり、受託者となるご家族には長期の負担が生じます。さらに2026年6月、成年後見制度を見直す法改正が成立したことで、両者の比較の前提が変わりつつあります。
この記事では、良い面と注意点の両方を、実務の目線で整理します。
家族信託は、親(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理を託す契約です。親の判断能力が低下しても、受託者が実家を売却・賃貸できます。
成年後見と違い、居住用不動産の処分に家庭裁判所の許可は不要とされています。ここが最大のメリットです。
一方で、費用はおおむね数十万円から。身上監護(施設入所の契約など)はできず、信託した不動産の損失は他の所得と損益通算できないといった制限があります。
契約できるのは、親の判断能力があるうちだけです。
2026年6月に成年後見制度の改正法が成立・公布され(施行は未了)、後見・保佐が補助に一元化されて必要がなくなれば終了できる仕組みになります。家族信託との比較は、今後変わっていく可能性があります。
家族信託の仕組み
家族信託(民事信託)は、信託法にもとづく契約です。登場人物は3者います。
実家の空き家対策では、「委託者=受益者=親、受託者=子」という形が典型です。親が自分のために、子に管理を託すわけです。
実際にどう使うか
- 親御さんがお元気なうちに、お子さんとの間で信託契約を結ぶ(公正証書で作成するのが一般的)
- 実家について信託の登記を行う。登記簿上の名義は受託者である子に移ります
- その後、親御さんの判断能力が低下
- 施設入所の費用が必要になり、子が受託者として実家を売却
- 売却代金は信託財産として、親御さんのために使われます
登記簿上の名義は子に移りますが、利益を受けるのは親御さん(受益者)のままです。だから贈与とは扱われず、贈与税はかからないとされています(委託者=受益者の場合)。
あくまで「管理を任せるための形式的な名義移転」という位置づけです。
成年後見との違い
| 項目 | 家族信託 | 成年後見(現行) |
|---|---|---|
| いつ契約・利用するか | 判断能力があるうち | 判断能力が低下してから |
| 居住用不動産の売却 | 家庭裁判所の許可は不要 | 家庭裁判所の許可が必要 |
| 誰が管理するか | 契約で自分たちで決められる | 家庭裁判所が選任。専門職が選ばれることも |
| 継続的な報酬 | 原則として不要(家族が受託者の場合) | 専門職が選任されると発生するのが一般的 |
| 身上監護 | できません(財産管理のみ) | できます(施設入所契約など) |
| 初期費用 | おおむね数十万円〜 | 申立費用(比較的少額) |
| 財産の範囲 | 信託した財産のみ | 本人の財産全体 |
| 二次相続以降の指定 | できる場合があります | できません |
いちばん大きな違いは、家庭裁判所が関与するかどうかです。成年後見では、居住用不動産を売るたびに許可の申立てが必要で、本人にとっての必要性を説明しなければなりません。家族信託なら、信託契約で定めた範囲内で受託者が判断できます。
メリット
- 実家が凍結されない——判断能力が低下しても、受託者が売却・賃貸・修繕を進められます
- 家庭裁判所の許可が不要——売却のタイミングを逃しにくくなります
- 管理する人を自分で決められる——親御さんが「この子に任せたい」と選べます
- 継続的な報酬が原則かからない——家族が受託者なら、毎年の報酬は通常発生しません
- 承継先を柔軟に設計できる——「父の次は母、その次は長男」といった二次相続以降の指定ができる場合があります
- 空き家のまま放置されるリスクが下がる——管理の責任者が明確になります
たとえば「父が亡くなったら母が受益者、母も亡くなったら実家は長男へ」といった設計ができる場合があります。遺言では自分の相続までしか指定できないため、ここは信託ならではの特徴です。
ご兄弟が多く、将来の共有名義化を避けたいご家庭では、検討の価値があります。
注意点|ここを知らずに進めないでください
初期費用がまとまってかかります
専門家へのコンサルティング報酬、信託契約書の公正証書作成費用、信託登記の費用と登録免許税。これらを合わせると、おおむね数十万円から、財産規模によっては100万円を超えることもあります。
信託登記の登録免許税は、所有権移転の登記について課されない一方、信託の登記について課税されます(税率は土地・建物で異なり、軽減措置が設けられている場合があります)。なお不動産取得税は、形式的な移転として課されないのが一般的とされています。
※税の取扱いは制度改正や個別の事情により異なります。必ず税理士・司法書士にご確認ください。
実家の評価額が低い場合、費用に見合わないことがあります。「800万円の実家のために80万円かける意味があるか」は、冷静に考えるべき論点です。
身上監護はできません
家族信託は財産管理の仕組みです。施設への入所契約、医療に関する手続き、介護サービスの契約といった身上監護は含まれません。
実務上は、ご家族が事実上対応できる場面も多いのですが、法律上の権限が必要な場面では成年後見や任意後見が必要になります。
そのため「家族信託+任意後見契約」を組み合わせる設計が取られることもあります。
損益通算ができません
信託した不動産から生じた損失は、信託していない他の所得と損益通算できないとされています。また、その損失を翌年以降に繰り越すこともできません。
実家を貸して赤字が出る、大規模修繕で損失が出る——こうした場合に、他の収入と相殺できないということです。収益物件を信託する場合は特に重要な論点になります。
受託者の負担は、思っているより重い
受託者には法律上の義務があります。信託財産を自分の財産と分けて管理すること、帳簿を作成し報告すること、受益者のために忠実に行動すること。
しかもこの状態が何年も、場合によっては十数年続きます。「名義を預かるだけ」という感覚で引き受けると、後で苦しくなります。
受託者になる方ご本人が、内容を理解し納得したうえで引き受けることが前提です。
受託者が先に亡くなるリスク
受託者が亡くなったり、病気で管理できなくなったりすることもあります。第二受託者を契約で定めておくのが一般的ですが、これを忘れると信託が立ち行かなくなります。
親子の年齢差が小さい場合、たとえば親が80代で子が60代といったケースでは、特に検討が必要です。
他のご家族への説明を省かないこと
登記簿上、実家の名義は受託者である子に移ります。事情を知らないご兄弟が登記を見たら、「勝手に名義を変えた」と受け取られかねません。
また、信託の内容によっては遺留分との関係が問題になることもあります。
契約を結ぶ前に、相続人となる方全員に説明しておいてください。これを省いたために関係が壊れた例は、残念ながらあります。
2026年の法改正で、比較の前提が変わります
令和8年6月17日に成年後見制度を見直す民法等改正法が成立し、6月24日に公布されました。主な内容は次のとおりです。
- 後見・保佐を廃止し、補助に一元化
- 代理権・同意権は本人の同意と必要性を要件に、特定の行為ごとに審判で付与
- 利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できる
- 本人の意思の尊重を強化
- 現在利用中の後見・保佐は、補助へ移行するか既存制度を継続するか選べる経過措置
施行は公布から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされ、2026年10月時点では施行されていません。
家族信託が選ばれてきた理由のひとつは、成年後見が「一度始めると終われない」「財産全体を委ねることになる」「専門職の報酬が続く」という点にありました。
改正後は必要な範囲で利用でき、必要がなくなれば終了できる仕組みになります。つまり「実家を売るために、必要な期間だけ利用する」という使い方に近づく可能性があるということです。
ただし施行はこれからで、実際の運用は今後定まります。居住用不動産の処分に家庭裁判所の許可が必要という点が今後どう扱われるかも含め、現時点で断定はできません。
いま家族信託を検討されるなら、この改正を踏まえたうえで判断できる専門家に相談することをおすすめします。
向いているケース・向かないケース
| 向いている | 向かない |
|---|---|
| ・親御さんの判断能力がしっかりしている ・不動産の資産価値が一定以上ある ・託せる家族がいて、本人も納得している ・二次相続以降の承継先まで決めておきたい ・収益物件があり、管理を継続する必要がある ・相続人が多く、将来の共有名義化を避けたい |
・すでに判断能力が低下している(契約できません) ・実家の資産価値に対して費用が重い ・受託者を任せられる家族がいない ・身上監護こそが主な課題 ・近いうちに売却する予定がある ・親族間で意見が対立している |
「近いうちに売るつもり」なら、親御さんがお元気なうちにご本人の意思で売るのがいちばんシンプルで、費用もかかりません。信託は、あくまで「すぐには売らないが、将来に備えたい」場合の仕組みです。
目的が「実家の処分」であるなら、まずいま売ったらいくらになるかを知るところから始めてください。
専門家選びについて
家族信託は比較的新しい仕組みで、対応できる専門家が限られます。司法書士、弁護士、税理士などが関わりますが、実績には差があります。
- 家族信託の組成実績がどのくらいあるか
- 費用の内訳が明確か(コンサル報酬、公正証書、登記費用、登録免許税)
- 税務面について税理士と連携しているか
- 信託後のフォローはあるか(受託者の帳簿作成や報告の支援など)
- 家族信託以外の選択肢(任意後見、遺言、売却)も含めて比較してくれるか
- 2026年の成年後見制度改正を踏まえた説明があるか
最後の項目は、現時点では良い判断材料になります。また「家族信託ありき」で話を進める相手には注意してください。選択肢を並べて比較してくれる専門家のほうが信頼できます。
よくある質問
- Q. 家族信託を使えば、親が認知症になっても実家を売れますか?
- A. 判断能力があるうちに信託契約を結んでおけば、その後に判断能力が低下しても、受託者が契約で定めた範囲内で売却できます。成年後見と異なり、居住用不動産の処分に家庭裁判所の許可は不要とされています。
- Q. 家族信託の費用はどのくらいかかりますか?
- A. 専門家へのコンサルティング報酬、公正証書の作成費用、信託登記の費用と登録免許税を合わせて、おおむね数十万円からが目安です。財産規模によっては100万円を超えることもあります。実家の資産価値に見合うかどうかの検討が必要です。
- Q. 名義が子に移ると、贈与税がかかりませんか?
- A. 委託者と受益者が同一人(親)である場合、実質的な利益の移転がないため贈与税はかからないとされています。ただし設計によって取扱いが変わるため、必ず税理士にご確認ください。
- Q. 家族信託があれば成年後見は不要ですか?
- A. 不要とは限りません。家族信託は財産管理の仕組みであり、施設入所契約や医療・介護に関する手続きといった身上監護はカバーしません。家族信託と任意後見契約を組み合わせる設計が取られることもあります。
- Q. 2026年の成年後見制度の改正は、家族信託の判断に影響しますか?
- A. 影響する可能性があります。改正により後見・保佐が補助に一元化され、必要な範囲で利用でき、必要がなくなれば終了できる仕組みになります。家族信託が選ばれてきた理由の一部が解消に向かうため、比較の前提が変わり得ます。ただし施行は公布から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされ、2026年10月時点では未施行です。
- Q. 岡山市外(倉敷市・玉野市・瀬戸内市など)でも相談できますか?
- A. はい。ミニクルホームでは岡山市周辺エリアの不動産についてご相談を承っています。信託の組成そのものは司法書士・弁護士等の領域となりますので、必要に応じて専門家をご紹介します。
その前に、実家の価値を知っておいてください
家族信託を組むかどうかは、司法書士・弁護士・税理士とご家族で決めることです。私たちが判断する立場にはありません。
ただ、この判断には必ず「実家がいくらなのか」という情報が必要です。費用が数十万円かかる仕組みですから、資産価値に見合うかどうかを考えなければなりません。そして「近いうちに売るなら、元気なうちに売ったほうがシンプル」という選択肢も、価格が分からないと検討できません。
ミニクルホームは、JR岡山駅西口から徒歩7分の奉還町にある不動産会社です。売買仲介・賃貸仲介から空き家の管理・活用まで対応しており、「親はまだ元気だが、将来に備えたい」という段階からのご相談をお受けしています。
売る前提である必要はありません。無理におすすめすることもありません。ご家族と専門家で話し合うための材料として、まず数字をお持ちください。
LINEで相談する(無料) 電話で相談する 086-239-3296
株式会社ミニクルホーム
岡山県岡山市北区奉還町二丁目19番14号(JR岡山駅西口 徒歩7分)
TEL:086-239-3296
※本記事は信託法、民法、法務省および国税庁の公表情報、当社の実務経験にもとづき、一般的な考え方を整理したものです(2026年10月時点)。当社は法律事務所・税理士事務所ではなく、個別の法律判断や税務判断を行う立場にはありません。家族信託の設計は個々の事情により大きく異なり、税務上の取扱いも制度改正や契約内容によって変わります。掲載している費用はすべて目安です。2026年6月24日に公布された民法等改正法(令和8年法律第45号)の施行日は公布から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされており、本記事の執筆時点では施行されていません。家族信託の組成は司法書士・弁護士へ、税務の取扱いは税理士または税務署へご相談ください。
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