実家の名義、親が元気なうちにやっておくこと【岡山市】
「相続で揉めたくないので、今のうちに実家を自分の名義にしておきたい」——親御さんがご健在のうちにご相談にみえる方から、よくうかがうお話です。
そのお気持ちはよく分かります。ただ、結論からお伝えすると、生前に名義を変えることが得になるケースは、実はそれほど多くありません。税負担が重くなり、かえって損をすることがあります。
では、元気なうちに何をしておけばいいのか。答えは「変更」ではなく「確認」です。この記事では、確認しておきたい6つのことと、2026年に成立した遺言制度の改正について整理します。
元気なうちにやるべきは、名義変更ではなく現状の確認です。
確認したいのは6つ。①登記の名義 ②把握していない不動産の有無 ③権利証など書類の場所 ④境界 ⑤親の意向 ⑥遺言の要否。
生前贈与は、登録免許税が相続より高く、不動産取得税も課税対象になるなど、税負担が重くなる傾向があります。安易に名義を動かさないでください。
2026年6月、遺言制度も大きく見直されました。自筆証書遺言などの押印が任意化され、法務局で保管する「保管証書遺言」が創設されます。施行時期は内容により異なります。
そして、いちばん大切なのは親御さんの意思がはっきりしているうちに動くことです。
なぜ「生前に名義を変える」が得策とは限らないのか
不動産の名義を生前に子へ移すと、それは贈与になります。相続で引き継ぐ場合と比べて、かかる税金が変わります。
| 項目 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の2.0% | 固定資産税評価額の0.4% |
| 不動産取得税 | 課税対象(軽減措置あり) | かかりません |
| 贈与税/相続税 | 贈与税。基礎控除は年110万円 | 相続税。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
| 小規模宅地等の特例 | 使えません | 要件を満たせば宅地の評価額を大きく減額できる場合があります |
※税率・控除額は制度改正により変わります。適用の可否は個別の事情によって異なるため、必ず税理士または税務署にご確認ください。
さらに見落とされがちなのが小規模宅地等の特例です。要件を満たせば宅地の評価額を大きく減額できる制度ですが、生前贈与では使えません。相続税がかかる規模のご家庭では、この差が決定的になることがあります。
それでも生前贈与が検討される場合
すべてのケースで不利というわけではありません。次のような場合には検討の余地があります。
- 相続時精算課税制度を使う場合(一定の要件のもと、累計2,500万円まで贈与税がかからない仕組み。2024年から年110万円の基礎控除も併用できるようになりました)
- 贈与税の配偶者控除(婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産の贈与について一定額まで控除される制度)
- 将来大きく値上がりすることが見込まれる不動産
- 特定の相続人に確実に渡したい事情がある場合
いずれも要件が細かく、判断は税理士の領域です。「名義を変えておけば安心」という単純な話ではない、とだけ覚えておいてください。
元気なうちに確認しておきたい6つのこと
登記事項証明書で、今の名義を確認する
いちばん最初にこれをやってください。法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、権利部(甲区)の所有者欄を見ます。登記事項証明書は全国どこの法務局でも取得できます。
「父の名義だと思っていたら、祖父の名義のままだった」——岡山市の古い住宅地や郊外では、実際にあります。数世代前の相続登記が済んでいないケースです。
この場合、相続人が十数人に膨れ上がっていることもあります。しかも親御さんがご健在のうちなら、その世代の事情を知る方がまだいらっしゃいます。発見が早いほど、解決できる可能性は高くなります。
なお相続登記は2024年4月から義務化されており、法改正前に発生した相続の期限は2027年3月31日とされています。祖父名義のままなら、この期限も関係してきます。
把握していない不動産がないか調べる
「実家だけだと思っていたら、山林や農地、私道の持分が出てきた」——これも非常によくあります。
2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まりました。法務局が、特定の名義人が所有権の登記名義人となっている全国の不動産を一覧化した証明書を交付する制度です。
ご本人であれば、ご自身の分を請求できます。親御さんがお元気なうちに取得しておくと、後の手続きが格段に楽になります。
※手数料や請求方法は法務局にご確認ください。登記記録上の氏名・住所を検索条件とする仕組みのため、住所変更登記が未了の不動産が漏れる可能性があります。
権利証・重要書類の場所を聞いておく
どこにしまってあるかを、必ず聞いておいてください。実家では次の場所から出てくることが多いものです。
- 仏壇の引き出し
- タンスの最下段
- 押入れの奥、天袋
- 金庫(鍵や暗証番号も一緒に確認を)
確認したい書類は、登記識別情報通知(権利証)、測量図、建築確認済証・検査済証、固定資産税の納税通知書、火災保険証券、借入の有無が分かる書類など。
権利証が見つからなくても売却はできますが、手続きが増えます。場所が分かっているだけで、後がまったく違います。
境界を確認する
古い住宅地では、境界標が失われていたり、隣地との認識がずれていたりすることがあります。
親御さんがご健在なら、経緯を知っています。「このブロック塀は隣のもの」「この木はうちが植えた」——こうした情報は、ご本人しか知らないことが多いのです。
測量まですぐに行う必要はありません。まず親御さんと一緒に敷地を一周し、話を聞きながら写真を撮っておく。これだけでも大きな財産になります。
親の意向を聞いておく
ここが、いちばん後回しにされやすい部分です。
- 最後までこの家で暮らしたいのか、施設も考えているのか
- 家を誰かに継いでほしいのか、売ってもいいと思っているのか
- お墓や仏壇をどうしたいか
- 兄弟のうち誰かに渡したい事情があるか
「売ってもいいよ」と一言聞けているかどうかで、後の家族の意思決定はまったく変わります。逆に「この家は残してほしい」という希望が分かれば、それを前提に方法を考えられます。
聞き方のコツは、別の記事で詳しく触れています。
遺言が必要かを考える
不動産は分けにくい財産です。相続人が複数いて、主な財産が実家だけという場合は、遺言を検討する価値があります。
遺言があれば、遺産分割協議をせずに手続きを進められる場合があります。兄弟が全国に散らばっている、連絡が取りにくい方がいる、といった事情があるなら特に有効です。
ただし遺留分への配慮が必要なほか、書き方を誤ると無効になることもあります。公正証書遺言、または法務局の保管制度の利用を検討してください。
2026年、遺言制度も大きく変わりました
令和8年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)が成立し、6月24日に公布されました。遺言については次の見直しが行われます。
| 改正内容 | 施行時期の目安 |
|---|---|
| 押印の任意化——自筆証書遺言、秘密証書遺言、特別の方式の遺言について押印要件が廃止されます | 公布から1年を超えない範囲内で政令で定める日 |
| 保管証書遺言の創設——データまたはプリントアウトを法務局に提出し、遺言の全文を口述するなどして保管。ウェブ会議の利用も可能で、検認は不要 | 公布から3年を超えない範囲内で政令で定める日 |
| 自筆証書遺言書保管制度のデジタル化——オンラインでの保管申請や証明書交付請求が可能に | 同上 |
| 死亡危急時遺言の方式追加——パソコン等で作成したデータや、録音・録画による方式が追加されます | 内容により異なります |
| 証人等の欠格事由の見直し——受遺者の被用者(法人の場合は役員を含む)は証人になれなくなります | 内容により異なります |
いずれも2026年10月時点では施行されていません。具体的な運用は今後定まる部分があります。
押印が不要になれば、自筆証書遺言のハードルは下がります。保管証書遺言が始まれば、手書きが難しい方でもデータで作成でき、法務局が保管し、検認も不要という形が可能になります。
ただし施行はこれからです。今すぐ遺言を作る必要があるなら、現行の公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を使うことになります。どの方法が適切かは、司法書士・弁護士にご相談ください。
名義を変えなくても、備える方法はあります
「名義を動かさずに、認知症になったときに備えたい」という場合の選択肢を挙げます。
| 方法 | 内容 | 名義 |
|---|---|---|
| 任意後見契約 | 将来に備えて、支援してほしい人と支援内容を自分で決めておく。公正証書で作成 | 親のまま |
| 家族信託 | 財産の管理を信頼できる家族に託す契約。判断能力が低下しても受託者が管理・処分できる | 形式上は受託者へ移転 |
| 遺言 | 亡くなった後の承継先を決めておく | 親のまま |
| 元気なうちに売却 | 本人の意思で売る。いちばんシンプル | 買主へ |
親御さんの判断能力が低下した後では、成年後見制度を利用することになり、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要になります。時間も手間も大きく変わります。
よくある質問
- Q. 親が元気なうちに実家の名義を自分に変えたほうがいいですか?
- A. 多くの場合、おすすめしません。生前贈与は登録免許税が相続より高く(固定資産税評価額の2.0%と0.4%)、不動産取得税も課税対象になります。さらに小規模宅地等の特例が使えません。税負担が重くなる傾向があるため、税理士にご確認ください。
- Q. 元気なうちに何をしておけばいいですか?
- A. 名義変更ではなく確認です。①登記の名義 ②把握していない不動産の有無 ③権利証など書類の場所 ④境界 ⑤親の意向 ⑥遺言の要否、の6つを確認しておくと、後の手続きが大きく変わります。
- Q. 実家の名義が祖父のままでした。どうすればいいですか?
- A. 数世代前の相続登記が済んでいない状態です。相続人が多数になっている可能性がありますが、親御さんがご健在ならその世代の事情を知る方がまだいらっしゃる分、解決しやすくなります。早めに司法書士へご相談ください。なお相続登記は2024年4月から義務化され、法改正前の相続の期限は2027年3月31日とされています。
- Q. 親の不動産をすべて把握する方法はありますか?
- A. 2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まり、法務局が全国の不動産を一覧化した証明書を交付します。ご本人であればご自身の分を請求できます。ただし登記記録上の氏名・住所で検索する仕組みのため、住所変更登記が未了の不動産が漏れる可能性があります。
- Q. 2026年の遺言制度の改正では何が変わりますか?
- A. 自筆証書遺言などの押印が任意化され、データ等で作成して法務局に保管する「保管証書遺言」が創設されます。検認は不要です。自筆証書遺言書保管制度のデジタル化も行われます。施行時期は内容により異なり、押印の任意化等は公布から1年、保管証書遺言等は3年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。
- Q. 岡山市外(倉敷市・玉野市・瀬戸内市など)でも同じですか?
- A. 登記や税の仕組みは全国共通です。登記事項証明書は全国どこの法務局でも取得できます。
確認作業のうち、不動産の部分はお手伝いできます
登記や税、遺言は司法書士・税理士・弁護士の領域です。必要な場面では専門家をご紹介します。
一方で、「この家は今いくらで売れそうか」「貸すとしたらいくらか」「境界はどうなっていそうか」「再建築はできる土地か」——こうした部分は、私たちがお調べできます。
そして実務の感覚としては、この数字があるかどうかで、ご家族の話し合いの進み方がまったく違います。「いくらになるか分からない財産」について話し合うのは、とても難しいことだからです。
ミニクルホームは、JR岡山駅西口から徒歩7分の奉還町にある不動産会社です。売買仲介・賃貸仲介から空き家の管理・活用まで対応しており、「親はまだ元気だが、そろそろ考えておきたい」という段階からのご相談もお受けしています。
売る前提である必要はありません。急かすこともいたしません。まずは現状を知るところから、ご一緒させてください。
LINEで相談する(無料) 電話で相談する 086-239-3296
株式会社ミニクルホーム
岡山県岡山市北区奉還町二丁目19番14号(JR岡山駅西口 徒歩7分)
TEL:086-239-3296
※本記事は民法、法務省および国税庁の公表情報、当社の実務経験にもとづき、一般的な考え方を整理したものです(2026年10月時点)。当社は法律事務所・税理士事務所ではなく、個別の法律判断や税務判断を行う立場にはありません。税率・控除額・特例の適用要件は制度改正により変わり、個別の事情によって結論が異なります。2026年6月24日に公布された民法等改正法(令和8年法律第45号)の施行日は内容により公布から1年・3年を超えない範囲内で政令で定める日とされており、本記事の執筆時点では施行されていません。生前贈与や相続税については税理士または税務署へ、登記や遺言については司法書士・弁護士へ、測量については土地家屋調査士へご相談ください。
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Googleマップへ寄せられたミニクルホームのお客様の声を、 プライバシーに配慮して一部抜粋・匿名化してご紹介します。
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