「生活保護の相談に行ったら、『先に不動産担保型の貸付けを検討してください』と言われた」
「家を担保にお金を借りるなんて、そのあと家はどうなってしまうのか」
「子どもに家を残せなくなるのではないか」
長年住んできた持ち家がある高齢の方が、年金だけでは暮らしが成り立たなくなって相談に行くと、この制度の名前を聞くことがあります。初めて耳にする長い名前に、不安を感じるのは当然のことだと思います。
先にお伝えします。要保護世帯向け不動産担保型生活資金は、住み慣れた家に住み続けながら、その家を担保にして毎月の生活資金を借りられる公的な制度です。岡山県では、岡山県社会福祉協議会が実施しています。
そして、一定の条件に当てはまる場合は、生活保護より先に、この制度を利用することになります。この記事では、制度の仕組み、対象になる条件、生活保護の前に検討を求められるのはどんなケースか、そして家族が知っておきたいことを整理します。
結論|家に住み続けながら生活費を借り、亡くなったときに家で返す制度
- 誰のための制度か:原則65歳以上で、一定の価値がある持ち家に住んでいて、この制度を使わなければ生活保護が必要になる高齢者世帯
- 何ができるか:自宅を担保に、毎月の生活資金を借りられる。家に住み続けられる
- いつ返すか:借りている方が亡くなったときなどに、まとめて返す。多くの場合、家を売って返済する
- 生活保護との関係:条件に当てはまると、生活保護より先にこの制度を使う。借りられる上限に達したら、生活保護へ移行する
ひとことで言えば、「家という財産を、住みながら少しずつ生活費に変えていく仕組み」です。生活保護は、使える財産をまず活用することが前提の制度です。持ち家という大きな財産がある場合に、それを手放さずに活用する方法として用意されています。
制度の仕組み|岡山県社会福祉協議会が実施しています
この制度は、国の生活福祉資金貸付制度のひとつで、岡山県では社会福祉法人 岡山県社会福祉協議会が貸付けを行っています。ただし、申込みの窓口はお住まいの地域の福祉事務所です。岡山市にお住まいの方なら、各区の福祉事務所になります。
お金の流れ
① 自宅(土地・建物)を担保に設定する
↓
② 岡山県社会福祉協議会から、毎月決まった額の生活資金が振り込まれる
↓
③ 家にはそのまま住み続ける
↓
④ 借りた合計が上限に達したら貸付けは終了 → 生活保護へ移行
(または、借りている方が亡くなったら貸付けは終了)
↓
⑤ 契約終了後、借りたお金と利息をまとめて返す(多くは家を売却して返済)
対象になる条件
国の制度の考え方では、おおむね次のすべてに当てはまる世帯が対象とされています。
① 原則として65歳以上の高齢者世帯であること
借入申込者と、同居している配偶者が対象になります。
② 一定の価値がある居住用不動産を持っていること
今住んでいる家とその土地で、評価額がおおむね500万円以上であることが目安とされています。マンションなどの集合住宅も対象になります。
③ その不動産に、抵当権や賃借権などが設定されていないこと
住宅ローンが残っていて金融機関の抵当権がついている家や、人に貸している家は、原則として対象外です。
④ この制度を使わなければ、生活保護が必要になると福祉事務所が認めた世帯であること
年金などの収入だけでは最低限度の生活ができない状態であることが前提です。
細かな条件は窓口で確認を
評価額の目安や、所有の形(単独所有か、配偶者との共有か)などの細かな条件は、運用によって異なる場合があります。ご自身が対象になるかどうかは、お住まいの区の福祉事務所、または岡山県社会福祉協議会へご確認ください。
生活保護の前に検討を求められるのは、どんなケースか
条件に当てはまる場合、生活保護に優先して、まずこの貸付けを利用することになります。具体的には、次のような状況で案内されることが多くなります。
検討を求められやすいケース
ケース1|住宅ローンを払い終えた持ち家に、ひとりで暮らしている70代
年金が少なく生活費が足りないけれど、家には土地の価値がある。こうした方が生活保護の相談に行くと、まずこの制度を案内されることが多くなります。
ケース2|夫婦ともに65歳以上で、持ち家で暮らしている
夫婦の年金を合わせても生活費に届かない場合です。配偶者との共有名義でも、対象になることがあります。
ケース3|すでに生活保護を受けているが、持ち家の評価額が高い
条件に当てはまる場合、受給中であっても、この貸付制度への切り替えを案内されることがあります。
対象になりにくいケース
- 住宅ローンが残っていて、抵当権が設定されている家
- 原則として65歳未満の方
- 評価額が目安に届かない家(古く、土地の価値も低い家など)
- 人に貸していて、賃借権がついている家
- 今は住んでいない家(空き家など)
特に住宅ローンが残っている家は、抵当権がついているため、この制度を使いにくくなります。その場合は、保護を受けるにも難しさがあるため、売却や住み替えを含めて考えることになります。
ご自宅の価値、おおよそでも把握されていますか
制度を使うか、売って住み替えるか。
判断の前提になる「家の価値の目安」をお調べします。
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岡山県での貸付けの内容
岡山県社会福祉協議会と岡山市が公表している内容を整理すると、次のとおりです。
| 貸付限度額 | 居住用不動産の評価額の7割程度(集合住宅は5割) |
|---|---|
| 貸付月額 | 福祉事務所が算定した額(生活扶助額の1.5倍以内) |
| 貸付期間 | 借受人が亡くなるまで、または借りた元利金が貸付限度額に達するまで |
| 据置期間 | 契約終了後 3か月以内 |
| 償還(返済) | 据置期間の終了時に一括で返す |
| 利子 | 年3%、または長期プライムレートのいずれか低い利率 |
| 連帯保証人 | 不要 |
| 申込窓口 | お住まいの地域の福祉事務所 |
| 初回送金まで | 申請から3か月程度が目安(事情により延びる場合あり) |
申請から最初の振込みまで3か月ほどかかる点は、ぜひ覚えておいてください。生活が苦しくなってから動き始めると、その間をどうしのぐかが問題になります。早めに相談することが大切です。
※ 内容は公表情報をもとに整理したものです。最新の条件は、岡山県社会福祉協議会またはお住まいの区の福祉事務所でご確認ください。
数字でイメージしてみます
どのくらいの期間、借りられるのか。考え方の例を2つ挙げます。
例1|評価額がおおむね1,000万円の一戸建ての場合
貸付限度額:1,000万円 × 7割程度 = おおむね700万円
毎月の貸付額:おおむね12万円と仮定
→ 単純に割ると、700万円 ÷ 12万円 = 約58か月(4年10か月ほど)
→ 実際には利息も加わっていくため、これより早く上限に達します。
→ 上限に達したあとは、生活保護へ移行します。
例2|評価額がおおむね800万円のマンションの場合
貸付限度額:800万円 × 5割 = おおむね400万円
毎月の貸付額:おおむね12万円と仮定
→ 400万円 ÷ 12万円 = 約33か月(2年9か月ほど)
→ マンションは限度額の割合が低いため、一戸建てより早く上限に達しやすくなります。
数字はあくまで考え方の例です
実際の評価額は社会福祉協議会が依頼する鑑定などによって決まり、毎月の貸付額は世帯の状況に応じて福祉事務所が算定します。利率も年によって変わります。上の数字は仕組みをイメージしていただくための目安としてお読みください。
「不動産担保型生活資金」との違い
名前がよく似た制度に、「不動産担保型生活資金」(要保護世帯向けではないもの)があります。こちらは、生活保護の手前にある、低所得の高齢者世帯向けの制度です。混同されやすいので、違いを整理しておきます。
| 項目 | 要保護世帯向け | 不動産担保型(一般) |
|---|---|---|
| 対象世帯 | この制度を使わなければ生活保護が必要と福祉事務所が認めた世帯 | 市町村民税非課税程度の低所得世帯 |
| マンション | 対象(限度額は評価額の5割) | 対象外 |
| 評価額の目安 | 居住用不動産でおおむね500万円以上 | 土地の評価額で一定の基準(岡山県社協の案内では1,500万円、条件により1,000万円以上) |
| 貸付月額 | 生活扶助額の1.5倍以内 | 30万円以内 |
| 申込窓口 | 福祉事務所 | 市町村社会福祉協議会 |
生活保護の相談に行って案内されるのは、「要保護世帯向け」のほうです。マンションも対象になり、評価額の目安も低めに設定されているのが特徴です。
利用するメリットと、知っておきたい注意点
メリット
- 住み慣れた家に住み続けられる。引っ越しをせずに、生活費の不安を和らげられます
- 連帯保証人がいらない
- 上限に達したあとは生活保護へ移行できる。貸付けが終わったら暮らしが途切れる、ということにはなりにくい仕組みです
- 公的な制度なので、利率が年3%以内に抑えられている
注意点
家は、最終的に返済に充てられることが多い
契約が終わると一括で返済する仕組みのため、多くの場合、家を売却して返済します。家を子どもに残すことは難しくなる可能性があります。相続人が自分で返済して家を引き継ぐことも考えられますが、まとまった資金が必要です。
利息が積み重なる
借りている間、利息も加わっていきます。そのぶん、上限に達するのが早くなります。
最初の振込みまで時間がかかる
申請から3か月程度が目安です。評価や審査、担保の設定に時間がかかります。
家の維持は自分で続ける必要がある
住み続ける以上、固定資産税や修繕など、家を保つための手間や費用は引き続きかかります。
ご家族(お子さん世代)が知っておきたいこと
この制度は、利用する本人だけでなく、将来その家を相続する立場の家族にも関わる制度です。
親が亡くなったら、借りたお金の一括返済が必要になる
契約終了後、3か月以内の据置期間を経て一括返済となります。家を売って返済するのか、家族が返済して家を引き継ぐのかを、比較的短い期間で決める必要があります。
家を売って余りが出れば、相続の対象になる
売却額が返済額を上回れば、残ったお金は相続財産になります。逆に、返済額のほうが大きい場合もあります。
利用する前に、家族で話しておくことが大切
後になって「家がなくなるとは知らなかった」とならないよう、利用を検討する段階で、家族にも説明しておくことをおすすめします。手続きの中で、家族の状況を確認されることもあります。
民間のリバースモーゲージやリースバックとの違い
家を活用して生活資金を得る方法には、金融機関のリバースモーゲージや、家を売却して賃料を払いながら住み続けるリースバックなど、民間のサービスもあります。
ただし、これらは金利、手数料、契約期間、家賃の見直し、相続時の扱いなどが商品ごとに大きく異なります。特にリースバックは、売却価格が相場より低くなりやすい、将来の家賃が上がる可能性がある、契約期間が定められている場合があるなど、確認すべき点が多いサービスです。
まずは公的な窓口から
生活保護との関係で検討されるのは、この記事で説明している社会福祉協議会の制度です。民間のサービスを検討する場合は、先に福祉事務所や社会福祉協議会に相談したうえで、費用の総額、契約期間、解約の条件、家族への影響を必ず書面で確認してから判断してください。即決を迫られるような勧誘には応じないことをおすすめします。
岡山市での相談・申込みの流れ
① お住まいの区の福祉事務所に相談する
生活が苦しいこと、持ち家があることを伝えます。
↓
② 要保護の状態かどうかを確認してもらう
収入や資産の状況から、この制度の対象になるかを判断してもらいます。
↓
③ 不動産の評価
家と土地の評価が行われます。
↓
④ 申込み・審査
福祉事務所を通じて、岡山県社会福祉協議会へ申し込みます。
↓
⑤ 契約・担保の設定
貸付契約を結び、家に担保を設定します。
↓
⑥ 毎月の貸付け開始
申請から初回の振込みまで、3か月程度が目安です。
相談するときは、家の登記事項証明書や固定資産税の納税通知書、年金額が分かる書類、通帳などがあると話が進めやすくなります。そろっていなくても相談はできますので、まずは窓口へ行ってみてください。ケースワーカーは、制度の中で使える道を一緒に考えてくれる相手です。
制度についての問い合わせ先
社会福祉法人 岡山県社会福祉協議会
所在地:岡山市北区南方2丁目13-1 きらめきプラザ3階
電話:086-226-3544
※ 申込みの窓口は、お住まいの地域の福祉事務所です。
※ 連絡先は記事作成時点の公表情報です。変更されている場合があります。
住み続ける希望がない場合は
この制度は、「将来もその家に住み続けたい」という希望がある方のためのものです。一方で、次のような事情がある方もいらっしゃると思います。
- 家が広すぎて、ひとりでは管理しきれない
- 階段や段差がつらく、住み続けるのが体力的に難しい
- 通院や買い物に不便な場所にある
- 子どもの近くに移りたい
こうした場合は、家を売却して、暮らしやすい住まいへ移るという選択肢もあります。売却で得たお金は生活費に充てることになり、使い切ったあとに必要があれば生活保護を検討する、という流れになります。どちらが合っているかは、福祉事務所とも相談しながら考えてください。売却を考える場合は、先に福祉事務所へ相談してから進めることが大切です。
よくあるご質問
Q1. 要保護世帯向け不動産担保型生活資金とは何ですか?
一定の価値がある持ち家に住み、将来もそこに住み続けたい要保護の高齢者世帯に対して、その家を担保に生活資金を貸し付ける公的な制度です。岡山県では岡山県社会福祉協議会が実施しており、申込みの窓口はお住まいの地域の福祉事務所です。
Q2. 生活保護より先にこの制度を使わなければいけないのですか?
条件に当てはまる場合は、生活保護に優先してこの制度を利用することになります。生活保護は使える財産をまず活用することが前提の制度で、持ち家を手放さずに活用する方法として位置づけられています。貸付けが上限に達したあとは、要件を満たせば生活保護へ移行します。
Q3. 対象になる条件を教えてください。
原則として65歳以上の高齢者世帯で、居住用不動産の評価額がおおむね500万円以上、その不動産に抵当権や賃借権などが設定されておらず、この制度を使わなければ生活保護が必要になると福祉事務所が認めた世帯が対象とされています。細かな条件は福祉事務所や岡山県社会福祉協議会でご確認ください。
Q4. 住宅ローンが残っている家でも利用できますか?
住宅ローンが残っている家には金融機関の抵当権が設定されているため、原則として対象外になります。その場合は、売却や住み替えを含めて考えることになりますので、福祉事務所にご相談ください。
Q5. 借りたお金はいつ、どうやって返すのですか?
借受人が亡くなったときや、契約が終了したときに、3か月以内の据置期間を経て、借りた元金と利息をまとめて返す仕組みです。多くの場合は家を売却して返済します。相続人が自分で返済して家を引き継ぐことも考えられます。
Q6. マンションでも利用できますか?
要保護世帯向けの制度では、マンションなどの集合住宅も対象になります。ただし貸付限度額は評価額の5割程度と、一戸建て(7割程度)より低く設定されています。なお、名前の似た一般向けの不動産担保型生活資金では、マンションは対象外とされています。
まとめ
- 持ち家を担保に、住み続けながら毎月の生活資金を借りられる公的な制度
- 岡山県では岡山県社会福祉協議会が実施。申込み窓口は福祉事務所
- 原則65歳以上、評価額おおむね500万円以上、抵当権などがないこと等が条件
- 条件に当てはまると、生活保護より先にこの制度を利用する
- 限度額は評価額の7割程度(マンションは5割)。月額は生活扶助額の1.5倍以内
- 上限に達したら生活保護へ移行。亡くなったら一括返済(多くは家を売却)
- 申請から初回送金まで3か月程度。早めの相談を
- 家族にも関わる制度。利用前に話し合っておく
- 住み続ける希望がなければ、売却して住み替える道もある
長い名前の制度ですが、根っこにあるのは「住み慣れた家で暮らし続けたい」という願いを支える仕組みです。家を手放すことへの抵抗がある方にとっては、むしろ心強い選択肢になりえます。仕組みを知ったうえで、ご自身とご家族にとって納得のいく形を選んでください。
年金だけでは足りないことを誰かに打ち明けるのは、とても勇気のいることです。「家があるのに困っているなんて」と、ご自身を責める必要はありません。家は暮らしの土台ですが、それだけで毎月の生活費が生まれるわけではないのですから。地域包括支援センターや福祉事務所は、こうした相談を受けるための窓口です。ひとりで悩まず、まずは話してみてください。
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