「内見のときは動いていた冷蔵庫が、引き渡しの後に冷えなくなった」
「製氷機が壊れていたので貸主に修理をお願いしたら、『それは前の借主のものだから』と言われた」
居抜き店舗では、前のお店の厨房機器をそのまま使えることが大きな魅力です。一方で、機器が古かったり、すでに壊れていたりすることもあります。そして、壊れたときに修理費を誰が払うのかは、その機器の「所有者が誰か」によって大きく変わります。
この記事では、岡山市で居抜き店舗を検討している方に向けて、厨房機器の所有者の確認方法と、契約前の動作確認、契約書に残しておきたいポイントをまとめました。
- 居抜き店舗の厨房機器は、①貸主の設備 ②造作譲渡で買い取る設備 ③リース品 ④残置物のどれかに分かれ、壊れたときの修理負担がそれぞれ違います。
- 契約前に、機器ごとに所有者を一覧にして、貸主・前の借主(前テナント)・不動産会社の三者で認識をそろえましょう。
- 内見や引き渡し前に、実際に電源・ガスを入れて動作確認し、故障や不具合があれば価格交渉・修理・撤去の扱いを決めてから契約します。
- 決めた内容は、賃貸借契約書・造作譲渡契約書に書面で残すことが大切です。
厨房機器の「所有者」で修理負担が変わる
居抜き店舗にある厨房機器は、見た目は同じでも、所有者によって次の4つに分かれます。
| 区分 | 所有者 | 壊れたときの修理(一般的な考え方) | 確認すること |
|---|---|---|---|
| ①貸主の設備 | 貸主 | 民法では貸主に修繕義務がある(借主の責任で壊れた場合を除く)。ただし事業用の契約では、特約で借主負担になっていることも多い | 賃貸借契約書の付帯設備の記載と、修繕の特約 |
| ②造作譲渡の設備 | 買い取ったあなた(前の借主から譲渡) | 自分の持ち物になるため、原則として自分で修理する | 造作譲渡契約の「現状のまま引き渡し」「不具合があった場合の扱い」 |
| ③リース品 | リース会社 | リース契約・保守契約の内容による。勝手に譲渡・処分はできない | リース契約を引き継ぐか、返却するか |
| ④残置物 | はっきりしないことがある | 貸主の設備ではないため、修理してもらえないことが多い | 所有権の扱い、使ってよいか、不要なら誰が処分するか |
冒頭の「貸主に修理を頼んだら断られた」というケースは、その機器が貸主の設備ではなく、前の借主から譲渡された設備(または残置物)だったことが原因の典型例です。
貸主の設備の場合:民法の原則と特約
民法606条では、貸主は貸している物の使用に必要な修繕をする義務を負うとされています(借主の責任で修繕が必要になった場合を除く)。また、借主が修繕の必要を伝えても貸主が相当の期間内に修繕しない場合や、急を要する場合には、借主が修繕できるとされています(民法607条の2)。
ただし、これらは契約で別の取り決めをすることもできる規定です。店舗などの事業用の契約では、「小修繕は借主負担」「設備の修繕は借主負担」といった特約が入っていることがよくあります。契約書の修繕に関する条項を契約前に読んでおきましょう。
造作譲渡の設備の場合:「現状のまま」に注意
造作譲渡で買い取った設備は、引き渡しを受けた時点であなたの持ち物です。造作譲渡契約では、「現状のまま引き渡す」「引き渡し後の不具合には責任を負わない」といった条項が入ることが多く、引き渡し後に壊れても、前の借主に修理費を請求できないことがあります。引き渡し前の動作確認が重要なのはこのためです。
リース品の場合:契約の引き継ぎか返却か
製氷機や食器洗浄機、冷蔵庫などは、リース契約になっていることがあります。リース品の所有者はリース会社なので、前の借主が勝手に譲渡することはできません。リース契約を引き継ぐ(名義変更)か、リース会社に返却するかを確認し、引き継ぐ場合は月々のリース料と保守の内容も確かめましょう。
契約前に所有者を確認する手順
- 設備の一覧表をもらう
「付帯設備表」などで、機器ごとに所有者(貸主・前の借主・リース会社・不明)の欄を設けてもらいます。 - 機器の銘板・シールを確認する
メーカー名・型番・製造年を確認します。リース会社の管理シールが貼られていることもあります。 - 貸主・前の借主の両方に確認する
前の借主の説明だけでなく、貸主(管理会社)にも「貸主の設備はどれか」を確認し、食い違いがないかを見ます。 - 動作確認をする
電源・ガス・水を通して、実際に動かしてもらいます(次の章のチェックリスト参照)。 - 不具合の扱いを決める
修理してから引き渡す、譲渡代を下げる、撤去してもらう、などを話し合います。 - 契約書に書面で残す
所有者の区分、不具合の扱い、修繕の負担を、賃貸借契約書・造作譲渡契約書に反映します。
機器別・動作確認チェックリスト
| 機器 | 確認すること | 所有者 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 冷蔵庫・冷凍庫 | 設定温度まで下がるか、霜・水漏れ・異音、扉のパッキン | ||
| 製氷機 | 氷ができるか、給水・排水の状態、清掃の状態 | ||
| 食器洗浄機 | 洗浄・すすぎ温度、給排水、エラー表示 | ||
| ガスコンロ・フライヤー・オーブン | 点火、火の状態、ガス漏れ、温度調整 | ||
| 給湯器 | お湯の温度・量、エラー表示、設置年 | ||
| 換気扇・ダクト | 吸い込みの強さ、異音、油汚れの付き具合 | ||
| グリーストラップ | 清掃の状態、におい、排水の流れ | ||
| 業務用エアコン | 冷暖房の効き、異音、水漏れ、設置年 | ||
| シンク・排水 | 水漏れ、詰まり、蛇口の状態 |
動作確認は、できれば実際の営業に近い状態で行うのがおすすめです。冷蔵庫は電源を入れてすぐには冷えないため、前日から電源を入れておいてもらうなどの準備をお願いしましょう。不安な場合は、厨房機器の業者に点検を依頼し、修理見積もりをとっておくと交渉の材料になります。
壊れていた・不具合があったときの選択肢
- 修理してから引き渡してもらう:前の借主(または貸主)の負担で修理してもらい、動作を確認してから引き渡しを受けます。
- 造作譲渡代を下げてもらう:修理見積もりの金額を根拠に、譲渡代の減額を交渉します。
- 譲渡の対象から外して撤去してもらう:使わない・直さない機器は、撤去してもらう方法もあります。撤去費をどちらが負担するかも決めましょう。
- 貸主に修繕を依頼する:貸主の設備であれば、契約書の修繕の取り決めに沿って依頼します。
どの方法にしても、口約束ではなく書面に残すことが大切です。「引き渡しまでに修理済み」「修理費はどちらが負担」「修理できなかった場合は○円減額」など、具体的に書いておきましょう。
業務用の冷凍冷蔵機器・エアコンには点検の義務も
業務用の冷凍冷蔵機器や業務用エアコンは、フロン排出抑制法の対象になっています。機器の管理者(所有者や使用者など)には、3か月に1回以上の簡易点検や、一定規模以上の機器の定期点検、点検・修理の記録を機器の廃棄後も3年間保存することなどが求められています。
居抜きで機器を引き継ぐ場合は、これまでの点検記録があるか、引き継いだあと誰が管理者として点検するか(貸主か、借主か、リース会社や保守業者か)を確認しておきましょう。
開業後に備えておきたいこと
- 機器ごとに修理を頼む連絡先(貸主・管理会社・リース会社・メーカー・保守業者)を一覧にしておく
- 保守契約が引き継げる機器は、保守の範囲と費用を確認する
- 古い機器は、買い替えの予算を事業計画に入れておく
- 修理中に営業できなくなった場合の代わりの手段(予備の冷蔵庫など)を考えておく
ミニクルホームにご相談ください
ミニクルホームでは、貸店舗・事務所の賃貸のご相談もお受けしています。居抜き物件では、貸主の設備・造作譲渡の設備・リース品などの区分を整理し、賃貸借契約の条件とあわせて契約前の確認をお手伝いします。
まずはLINEで「居抜き店舗の設備が気になる」と一言送っていただくだけでも大丈夫です。
※物件の条件や貸主・前の借主との合意内容により、ご希望に添えない場合があります。
※当社は不動産会社のため、法律上の判断や、前の借主・貸主との交渉の代理はできません。機器の状態の判断は厨房機器の専門業者に、法律の判断は弁護士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
- 居抜きの厨房機器が壊れたら、貸主に修理してもらえますか?
- その機器が貸主の設備であれば、民法上は貸主に修繕義務があります。ただし、事業用の契約では特約で借主負担になっていることも多く、また前の借主から譲渡された設備や残置物であれば、貸主は修理しないのが一般的です。まずは所有者と契約書の修繕の条項を確認しましょう。
- 引き渡し後に壊れた場合、前の借主に修理費を請求できますか?
- 造作譲渡契約の内容によります。「現状のまま引き渡し」「引き渡し後の不具合には責任を負わない」といった条項がある場合は、請求が難しいことがあります。引き渡し前に動作確認をし、不具合の扱いを書面で決めておくことが大切です。
- リース品かどうかは、どうやって見分けますか?
- 機器にリース会社の管理シールが貼られていることがあります。ただしシールがない場合もあるため、前の借主にリース契約の有無を確認し、設備の一覧表に記載してもらいましょう。
- 残置物の機器は自由に使っていいですか?
- 残置物は所有者がはっきりしないことがあるため、使ってよいか、壊れたときに誰が修理するか、不要な場合に誰が処分するかを、貸主に確認してから使いましょう。
- 業務用冷蔵庫に点検の義務はありますか?
- 業務用の冷凍冷蔵機器や業務用エアコンは、フロン排出抑制法により、管理者に3か月に1回以上の簡易点検などが求められています。引き継ぐ際は、誰が管理者として点検するかを確認しておきましょう。
まとめ
- 居抜きの厨房機器は、貸主の設備・造作譲渡の設備・リース品・残置物に分かれます。
- 修理負担は所有者と契約書の取り決めで決まります。
- 契約前に所有者の一覧と動作確認を行い、不具合の扱いを決めましょう。
- 決めた内容は賃貸借契約書・造作譲渡契約書に書面で残すことが大切です。
- 業務用の冷凍冷蔵機器・エアコンは、フロン排出抑制法の点検も確認しましょう。
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