「出所の日が近づいているのに、どこに住むかが決まっていない」
「家族には頼れない。施設に入るのか、すぐアパートを借りられるのか分からない」
「いつ、何から準備を始めればいいのか、順番が分からない」
出所の日が近づくほど、「その日の夜、どこで眠るのか」という不安は大きくなります。頼れる人がいない、お金も少ない。そんな状況で、何から手をつければいいのか分からなくなるのは当然のことです。
でも、出所後の住まいには、いくつかの選択肢と、決まった順番があります。順番が分かれば、今どこにいて、次に何をすればいいのかが見えてきます。
先にお伝えします。出所後の住まいは、「出所してすぐに自分でアパートを借りる」よりも、家族のもと・更生保護施設・自立準備ホーム・就労先の寮などで生活を整えてから、アパートへ移るのが一般的な流れです。準備は受刑中から始まっています。出所前に帰住先の希望を伝えること、出所直後に住民票と身分証を整えること、施設にいる間に貯金と部屋探しを進めることが、スムーズに進めるポイントです。
この記事では、出所を控えた方とご家族、支援者の方に向けて、帰住先の選び方と、受刑中からアパート入居までを時期ごとに整理したチェックリストを、岡山市の不動産会社の立場からまとめます。
※更生保護施設を退所してアパートを契約するときの詳しい手続き(保証会社・緊急連絡先・過去のことの伝え方など)は、更生保護施設からアパートへ|岡山市で出所後の住まいを探すときの流れで解説しています。前科のある方の部屋探し全体は岡山市で前科があっても部屋は借りられる?、審査の仕組みは前科は賃貸の審査でわかる?をご覧ください。
結論|出所後の住まい探しで押さえたい5つのこと
- 準備は受刑中から:帰住先の希望を伝え、保護観察所による「生活環境の調整」を受けます
- いきなりアパートより「段階を踏む」が一般的:家族のもと、更生保護施設、自立準備ホーム、就労先の寮などを経て移る方が多くいます
- 行き先がないまま出所したら、保護観察所へ:満期で出所した方も「更生緊急保護」を申し出ることができます
- 出所後すぐに住民票・身分証・携帯電話を整える:アパートの審査ではここが土台になります
- 施設にいる間に「貯金」と「部屋探し」を並行する:在所できる期間は限られています
ご家族・支援者の方からのご相談も歓迎です。
出所した人は、どこに帰っている?
国の統計を見ると、刑務所を出た方の帰住先はさまざまです。家族のもとへ帰る方がいる一方で、4人に1人ほどは更生保護施設などに帰住しています。
| 帰住先(全国・2022年) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 父母のもと | 4,497人 | 約26% |
| 更生保護施設など | 4,121人 | 約24% |
| 配偶者のもと | 1,448人 | 約8% |
| 知人のもと | 1,419人 | 約8% |
| 兄弟姉妹・その他の親族のもと | 1,369人 | 約8% |
| 自宅・雇い主のもと・社会福祉施設 | 1,431人 | 約8% |
| その他(帰住先が決まっていない方などを含む) | 2,857人 | 約17% |
| 合計 | 17,142人 | 100% |
※矯正統計年報(令和4年)をもとに「第2次岡山県再犯防止推進計画」に掲載された数値から作成。割合は四捨五入しています。
岡山県では、2021年に刑務所を出て県内に帰住した方は253人で、そのうち約4割が更生保護施設などに帰住しています。県内には、更生保護施設が2施設、自立準備ホームが10施設あります(2023年4月時点)。「施設を経てからアパートへ」は、決して珍しい道すじではありません。
帰住先の選択肢と、それぞれの次の一歩
| 帰住先 | 向いている方 | よい点 | 気をつけたい点 | アパートへの移り方 |
|---|---|---|---|---|
| 家族・知人のもと | 受け入れてくれる家族・知人がいる方 | 出所直後から生活の場がある | 長く同居すると負担になることも。家族と期間を話し合っておく | 働いて貯金し、数か月〜1年ほどで一人暮らしへ |
| 更生保護施設 | 頼れる人がいない、すぐに自立するのが難しい方 | 宿泊・食事に加え、仕事探しや生活の相談ができる | 在所期間は平均でおおむね3か月と限られる | 在所中に貯金と部屋探しを進め、退所に合わせて入居 |
| 自立準備ホーム | 頼れる人がいない方(保護観察所が委託先を調整) | NPOなどが運営。施設の一室や借り上げのアパートなど形はさまざま | ホームによって支援の内容や生活のルールが違う | 委託が終わったあと、同じ部屋で賃貸契約を結ぶ例もある |
| 就労先の寮 | 住み込みで働ける仕事が見つかった方 | 仕事と住まいが同時に決まる | 仕事を辞めると住まいも失うことがある | 仕事が続いたら、貯金して寮から一人暮らしへ |
| 福祉施設・グループホーム | 高齢や障害があり、福祉の支援が必要な方 | 生活の支援を受けながら暮らせる | 受刑中からの調整(特別調整など)が必要なことが多い | 支援者と相談し、見守りつきの一人暮らしも検討 |
| 生活保護を受けてアパート | 働くことが難しく、収入の見通しが立たない方 | 家賃は住宅扶助の範囲で確保できる | 契約はケースワーカーの確認の後。物件は家賃の上限内で探す | 福祉事務所・支援者と一緒に部屋を探す |
※一般的な整理です。実際の受け入れや支援の内容は、施設・機関や個々の状況によって異なります。
更生保護施設と自立準備ホームの違い
| 項目 | 更生保護施設 | 自立準備ホーム |
|---|---|---|
| 運営 | 法務大臣の認可を受けた更生保護法人など | 保護観察所に登録したNPO法人・社会福祉法人など |
| 住まいの形 | 施設(職員が常駐し、原則24時間体制) | 施設の空き部屋、借り上げのアパートなど |
| 支援 | 宿泊・食事、仕事探しの手伝い、生活の相談、退所後のフォローアップ | 宿泊場所、生活の指導(毎日の支援。巡回による支援も)、必要に応じて食事 |
| 岡山県内の数 | 2施設 | 10施設(2023年4月時点) |
| その後の住まい | 退所してアパートなどへ | 委託終了後、同じ部屋で賃貸契約に切り替える例もある |
※法務省・厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な整理です。どちらに入るかは、保護観察所が本人の状況を見て調整します。
時期別チェックリスト|受刑中からアパート入居まで
ここからは、時期ごとにやっておきたいことを整理します。ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方が一緒に確認できるようにまとめました。
- 出所後にどこへ帰りたいか(帰住先の希望)を、刑務所の職員に伝える
- 保護観察所や保護司が、帰住先や引受人を調べて調整する「生活環境の調整」を受ける(仮釈放の審理にも使われる)
- 高齢・障害などで福祉の支援が必要な場合は、刑務所の福祉専門官に相談する(地域生活定着支援センターにつながる場合がある)
- 運転免許証・マイナンバーカードなど、身分証が使える状態かを確認する
- 入る前に住んでいた部屋の契約・家賃の未払い・荷物がどうなっているか、分かる範囲で家族などに確認してもらう
- 決まった帰住先へ向かう。行き先がないまま満期で出所した場合は、保護観察所に「更生緊急保護」を申し出る(原則として釈放後6か月以内。宿泊場所の手配などを相談できる)
- 区役所で住民票の状況を確認する。受刑中に職権で消除されていることがあるため、住所の届出を相談する
- 国民健康保険などの手続きも、区役所であわせて相談する
- 本人名義の携帯電話を用意する(不動産会社や保証会社からの連絡を受けるため)
- 銀行口座が使えるかを確認する(給与や家賃の口座振替に必要)
- 仕事を探す(ハローワーク、協力雇用主、施設の就労支援など)。岡山県の協力雇用主は333事業所(2023年10月時点)
- 働くことが難しい場合は、福祉事務所で生活保護を相談する。住む場所がない状態でも申請はできるとされている
- 収入の見通しから、家賃の目安と貯金の目標を決める(次の章の例を参照)
- 保護観察中の方は、担当の保護観察官・保護司と面接を続け、生活の状況を伝えておく
- 給与明細をそろえ、貯金を続ける
- 施設の職員や支援者と一緒に、不動産会社に相談を始める(希望エリア・家賃・入居時期)
- 緊急連絡先を頼める人がいるか、いなければ支援者・居住支援法人に相談できるかを確認する
- 保護観察中の方は、転居の許可を受ける準備をする(契約の前に担当者へ相談)
- 物件を決めて申し込み、保証会社などの審査を受ける
- 生活保護を受ける方は、見積書をケースワーカーに出し、確認を受けてから契約する
- 電気・水道・ガスの開始手続き、最低限の家具・家電、引っ越しの段取りをする
- 区役所で住所変更の届出をする
- 家賃を期日どおりに払い続ける(最初の1年の支払いが、次の住み替えのときの信用になる)
- 困ったときは、更生保護施設のフォローアップや訪問支援、ケースワーカー、居住支援法人、不動産会社に早めに相談する
※時期は目安です。仮釈放か満期か、どこに帰住するかによって流れは変わります。
ご本人・支援者の方と一緒に考えます。
アパートに移るまでに、いくら貯めればいい?
働いて部屋を借りる場合、目安になるのは初期費用と、最初の生活に必要なものです。家賃40,000円の部屋を例に計算してみます。
| 費用の項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 敷金(1か月分) | 40,000円 |
| 前家賃(1か月分) | 40,000円 |
| 仲介手数料(家賃1か月分+消費税) | 44,000円 |
| 保証会社の初回保証料(家賃等の50%の場合) | 20,000円 |
| 火災保険 | 15,000円 |
| 鍵の交換 | 15,000円 |
| 初期費用の合計 | 174,000円 |
| 家具・家電・引っ越し・生活用品 | 50,000〜100,000円 |
| 準備したい金額の目安 | 約224,000〜274,000円 |
224,000円 ÷ 3か月 ≒ 月75,000円/274,000円 ÷ 3か月 ≒ 月91,000円
月の手取りが14万円で、貯金に回せるのが月75,000円ほどなら、3か月で最低限の準備ができる計算です。難しい場合は、敷金・礼金なしの物件、仲介手数料を抑えた物件、家具・家電つきの物件を選ぶと、必要な金額を下げられます。
※説明のための目安です。費用は物件・保証会社・管理会社によって大きく異なります。施設で必要な費用の扱いは、施設にご確認ください。
生活保護を受けて部屋を借りる場合は、家賃は住宅扶助の範囲(岡山市の単身でおおむね37,000円が目安)で探します。住む家がない状態で保護が始まる場合などは、敷金などの初期費用が認められることがあります。金額や扱いは、必ず担当の福祉事務所で確認してください。
ご家族ができること・無理をしなくていいこと
- できること:受刑中の本人と、出所後の住まいの希望を話し合う/前の部屋の契約や荷物の状況を確認する/保護観察所からの調査に協力する
- 無理をしなくていいこと:同居や連帯保証人を必ず引き受けなければならないわけではありません。保証会社を使える物件や、更生保護施設・自立準備ホームなど、家族以外の選択肢もあります
- 同居する場合は、期間の目安(例:半年で一人暮らしへ)を最初に話し合っておくと、お互いの負担を減らせます
ミニクルホームができること
- 受刑中・施設にいる間からの、入居時期と予算の見通しのご相談
- 施設の退所日や仕事の状況に合わせた物件のご提案(初期費用を抑えた物件を含む)
- 更生保護施設・自立準備ホーム・保護観察所・福祉事務所などの支援者の方との連絡の調整
- 生活保護を利用する方の、家賃上限内の物件と、ケースワーカー確認用の見積書のご用意
- 入居後の困りごとのLINE相談
すべての方に部屋が見つかるとお約束はできません。それでも、早めに準備を始め、支援と組み合わせるほど、選べる物件は増えていきます。
よくあるご質問
Q1. 刑務所を出てすぐに、自分でアパートを借りられますか?
不可能ではありませんが、出所直後は住民票・収入・保証人・緊急連絡先などがそろっていないことが多く、一人で進めるのは難しくなりがちです。家族のもと、更生保護施設、自立準備ホーム、就労先の寮などで生活を整えてから移る方が多くいます。
Q2. 出所後の住まいの準備は、いつから始めればいいですか?
受刑中から始まっています。帰住先の希望を刑務所の職員に伝え、保護観察所などによる生活環境の調整を受けます。高齢や障害があり福祉の支援が必要な場合は、刑務所の福祉専門官に相談しましょう。
Q3. 行き先がないまま満期で出所したら、どうすればいいですか?
保護観察所に「更生緊急保護」を申し出ることができます。原則として釈放後6か月以内で、宿泊場所の手配などを相談できます。生活に困る場合は、福祉事務所で生活保護も相談できます。
Q4. 更生保護施設と自立準備ホームは何が違いますか?
更生保護施設は、法務大臣の認可を受けた法人などが運営し、職員が常駐する施設です。自立準備ホームは、保護観察所に登録したNPO法人などが、施設の一室や借り上げのアパートなどで宿泊場所と生活の支援を提供します。委託が終わったあと、同じ部屋で賃貸契約を結ぶ例もあります。
Q5. アパートに移るまでに、いくらくらい貯めればいいですか?
家賃40,000円の部屋の場合、初期費用でおおむね17万円、家具・家電や引っ越しを含めると22万〜27万円ほどが一つの目安です。敷金・礼金なしの物件や家具つきの物件を選ぶと、必要な金額を下げられます。
Q6. 家族が連帯保証人や同居を引き受けないといけませんか?
必ず引き受けなければならないわけではありません。保証会社を使える物件や、更生保護施設・自立準備ホームなど、家族以外の選択肢もあります。同居する場合は、期間の目安を最初に話し合っておくと負担を減らせます。
まとめ
- 出所後の住まいは、施設や家族のもとなどで生活を整えてからアパートへ移るのが一般的
- 準備は受刑中から。帰住先の希望を伝え、生活環境の調整を受ける
- 行き先がないまま満期で出所したら、保護観察所に更生緊急保護を申し出る
- 出所後すぐに住民票・身分証・携帯電話・口座を整える
- 施設にいる間に貯金と部屋探しを並行し、退所に合わせて入居する
出所してからの毎日は、思うように進まないことも多いかもしれません。焦りや不安で眠れない夜があっても、それはあなたが新しい生活に真剣に向き合っているからです。一人で抱え込まず、施設の職員や支援者、そして私たちに、困っていることをそのまま話してください。自分の部屋の鍵を手にする日まで、一緒に準備を進めましょう。
保証人のいない方、生活保護を受ける方、審査に不安がある方の部屋探しをお手伝いしている地域の不動産会社です。
ご本人からも、ご家族・支援者の方からもご相談をお受けしています。
対応エリア:岡山市北区・中区・南区・東区を中心に、玉野市・瀬戸内市・備前市・総社市など周辺エリアもご相談ください。
※記事内の内容は公表資料をもとにした一般的な整理であり、物件の確保や審査の結果を保証するものではありません。
※当社は不動産業者であり、更生保護・生活保護・法律についての判断や、交渉の代理はできません。保護観察中の手続きは担当の保護観察官・保護司に、生活保護の扱いは福祉事務所にご確認ください。
※生活保護を受けて部屋を借りる場合、賃貸の契約はケースワーカーの確認を受けてから結ぶようにしてください。
所在地:〒700-0026 岡山県岡山市北区奉還町二丁目19番14号(JR岡山駅西口 徒歩7分)
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参考にした公的情報
・岡山県|第2次岡山県再犯防止推進計画(帰住先の統計・県内施設数)
・法務省|再犯防止推進白書(生活環境の調整・帰住先の確保)
・法務省|岡山保護観察所における更生緊急保護の実情・自立準備ホームの取組
・法務省|岡山保護観察所
※2026年10月時点で確認できた情報をもとにしています。
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