「住宅扶助の範囲で見つかった部屋の募集に、『定期借家』と書いてあった」
「2年で出ないといけないなら、そのあとどうすればいいのだろう」
「生活保護を受けていても、こういう契約をして大丈夫なのか」
条件に合う部屋がやっと見つかったのに、聞き慣れない言葉が書かれていると、不安になりますよね。定期借家は、ふつうの賃貸と違って契約の更新がなく、決められた期間が来ると契約が終わる仕組みです。
先にお伝えします。生活保護を受けていても、定期借家の物件を契約すること自体は、制度上できないわけではありません。ただし、大事な確認点があります。それは、期間が終わって引っ越すときに、新しい部屋の初期費用や引っ越し代が扶助として認められるかどうかです。ここは福祉事務所の判断になるため、契約する前に必ず確認しておく必要があります。
この記事では、定期借家の仕組み、生活保護で契約するときの確認点、期間満了までのスケジュール、そして定期借家を選ぶかどうかを考えるためのポイントを整理します。
この記事の立場について
当社は不動産会社として、貸主・借主のどちらの立場でも賃貸に関わることがあります。この記事では、定期借家の契約をめぐる法的な判断や交渉の方法ではなく、生活保護を受けている方が、制度との関係で契約の前に何を確認すればよいかに絞ってお伝えします。
結論|契約はできる。ただし「出口」を先に確認する
- 契約はできる:生活保護で定期借家を契約することは制度上禁止されていない。ケースワーカーの確認を受けてから契約する
- 定期借家の特徴:更新がなく、期間が満了すると契約が終わる。住み続けるには、大家さんとの合意による「再契約」が必要
- 最大の確認点:期間満了で引っ越すとき、敷金や引っ越し代が扶助の対象になるか。これは福祉事務所の判断
- 再契約の費用:再契約料や保証料などの扱いも、事前に確認しておく
- 考え方:生活保護では、家賃が住宅扶助の範囲内なら、安くても高くても本人の負担は変わらない。家賃の安さより「住み続けられるか」を優先して考える
定期借家とは|ふつうの賃貸との違い
定期借家(定期建物賃貸借)は、借地借家法第38条にもとづく契約です。ふつうの賃貸(普通借家)との主な違いを整理します。
| 項目 | ふつうの賃貸(普通借家) | 定期借家 |
|---|---|---|
| 更新 | あり。貸主が更新を断るには正当な事由が必要 | なし。期間が満了すると契約が終わる |
| 住み続けるには | 更新すれば住み続けやすい | 大家さんとの合意による再契約が必要 |
| 契約の方法 | 口頭でも成立する | 書面(電子も可)で契約。契約前に、更新がないことを別の書面で説明する必要がある |
| 終了の知らせ | — | 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに貸主から通知 |
| 途中で出るとき | 契約の定めによる | 床面積200㎡未満の住まいで、療養や親族の介護などやむを得ない事情があれば、申し入れから1か月で解約できる |
定期借家は、建物の取り壊しが予定されている、大家さんが転勤などで一時的に家を空けているといった事情がある物件で使われることが多い契約です。そうした事情から、家賃が周辺の相場より抑えめに設定されていることもあります。
生活保護で定期借家を契約するときの6つの確認点
① ケースワーカーに「定期借家であること」を伝える
見積書を出すときに、この物件が定期借家であること、契約期間が何年かを、ケースワーカーにはっきり伝えましょう。期間が短い物件への転居をどう考えるかは、福祉事務所の判断に関わります。ケースワーカーは、制度の中で使える道を一緒に探してくれる相手です。
② 契約期間と、期間が終わったあとの見通し
契約期間は何年か。期間が終わったあと、再契約の可能性はあるのか、それとも建物の取り壊しなどで再契約はできないのか。不動産会社を通じて、できるだけ具体的に確認しておきましょう。
③ 期間満了で引っ越すとき、転居費用は認められるか
ここがいちばん大切な確認点です。生活保護で、新しい部屋の敷金などの初期費用が扶助として認められるのは、国の通知で定められた場合に限られています。その中には、大家さんが相当の理由で立ち退きを求めた場合や、契約の更新を断った場合、解約を申し入れた場合などが含まれています。
一方で、定期借家の期間満了がこれに当たるかどうかは、通知に明記されていません。契約の時点で、いつ終わるかが分かっていた契約であることから、扱いが分かれる可能性があります。そのため、契約の前に「期間満了で引っ越すことになった場合、敷金や引っ越し代は認められますか」とケースワーカーに確認しておくことが欠かせません。
もし認められない場合は、次の部屋の初期費用や引っ越し代を自分で用意することになります。生活保護を受けながら、まとまったお金を準備するのは簡単ではありません。この点を確認しないまま契約するのは避けてください。
④ 再契約するときの費用
再契約できる場合でも、再契約料や再契約事務手数料、家賃保証会社の費用、火災保険の更新料などがかかることがあります。ふつうの賃貸の更新料は、住宅扶助として認められる場合がありますが、定期借家の再契約にかかる費用がどう扱われるかは、事前にケースワーカーへ確認してください。
⑤ 終了の通知を受けてから、次の部屋を探す時間
契約期間が1年以上の場合、貸主は満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終わることを通知することになっています。生活保護を受けながらの部屋探しは、物件探し、見積書の提出、ケースワーカーの確認、契約と段階を踏むため、通知を受けたらすぐにケースワーカーへ伝え、早めに動き出すことが大切です。
⑥ 途中で出ることになったとき
療養や親族の介護など、やむを得ない事情で住み続けることが難しくなった場合は、定期借家でも途中で解約できることがあります。そのほかの場合は、契約書の中途解約の定めを確認しておきましょう。
判断するのは福祉事務所です
転居費用や再契約の費用を扶助として認めるかどうかは、世帯の状況や転居の理由を見て、お住まいの区の福祉事務所が判断します。ここでの説明は一般的な整理としてお読みいただき、実際の扱いは必ず契約前に担当のケースワーカーへご確認ください。賃貸の契約は、ケースワーカーの確認を受けてから結ぶのが原則です。
契約の種類まで確認して、部屋探しをお手伝いします
定期借家か普通借家か、再契約の見通しはどうか。
ケースワーカーに確認すべき点も一緒に整理します。
営業時間 10:00〜18:00/定休日 水曜日・不定休
「家賃が安いから」で選ばなくていい理由
定期借家の物件は、家賃が相場より抑えめなことがあります。でも、生活保護を受けている方にとっては、その安さが本人の暮らしを楽にするとは限りません。
住宅扶助は、家賃の実費を上限の範囲で支給する仕組みです。岡山市の単身世帯なら、家賃が33,000円でも37,000円でも、上限の範囲内であれば、その家賃がそのまま住宅扶助として支給されます。つまり、家賃が上限内に収まっている限り、安い部屋を選んでも本人の手元に残るお金は変わらないのです。
本人の負担に直接影響するのは、住宅扶助の対象にならない共益費などのほうです。だからこそ、生活保護を受けている方の部屋選びでは、家賃の安さよりも、長く安心して住み続けられるかどうかを優先して考えることをおすすめします。
期間満了までのスケジュール
契約期間が2年の定期借家を例にした、動き方の目安です。
契約の前:満了日、再契約の可能性、満了時の転居費用・再契約費用の扱いをケースワーカーと確認
↓
満了の1年前〜6か月前:貸主から契約終了の通知、または再契約の話が届く
↓
通知を受けたら:すぐにケースワーカーへ連絡。再契約か、転居かを確認する
↓
満了の6か月前ごろから:転居する場合は、物件探しと見積書の準備を始める
↓
満了の前:ケースワーカーの確認を受けて、新しい部屋を契約・引っ越し
↓
満了日:部屋を明け渡す。敷金が返ってきたら、ケースワーカーへ申告
数字でイメージしてみます
岡山市の単身世帯で、次の2つの部屋を比べたときの考え方の例です。
部屋A|定期借家・契約期間2年・家賃33,000円・共益費2,000円
部屋B|普通借家・家賃37,000円・共益費2,000円
毎月の本人の負担
家賃はどちらも住宅扶助の範囲内なので、そのまま支給される
共益費はどちらも2,000円で、生活扶助から払う
→ 毎月の本人の負担は、どちらも同じ
2年後の違い
部屋Aは期間満了で、再契約できなければ引っ越しが必要になる
仮に、次の部屋の初期費用と引っ越し代が合計で15万円かかるとすると、
→ 扶助が認められれば、本人の負担は大きくならない
→ 認められなければ、15万円を自分で用意する必要がある
毎月の負担が同じなら、2年後に引っ越しが必要になるかもしれない部屋と、住み続けられる部屋のどちらがよいかは、転居費用の扱いを確認してから判断するのが安心です。
数字はあくまで考え方の例です
住宅扶助の上限は世帯人数や年度によって変わり、転居費用の扱いは福祉事務所が判断します。上の例は仕組みをイメージしていただくための目安としてお読みください。
定期借家を選ぶ前に考えたいこと
検討しやすいケース
- 次の住まいが決まるまでの、一時的な住まいとして使いたい
- 契約期間が長く、その間に暮らしの見通しが立てやすい
- 再契約できる見通しが、不動産会社を通じて確認できている
- 期間満了時の転居費用の扱いを、ケースワーカーに確認できている
慎重に考えたいケース
- 同じ場所に長く住み続けたい
- 高齢や障害、病気のため、引っ越しが大きな負担になる
- 通院先や通所先との関係で、住む場所を変えにくい
- 期間満了時の転居費用の扱いが確認できていない
定期借家そのものが悪いわけではありません。大切なのは、期間が終わったあとのことまで見通したうえで選ぶことです。
気をつけたいこと
契約の種類を確認しないまま進める
募集の資料や契約書に「定期借家」「定期建物賃貸借」と書かれているか、契約前に更新がない旨の説明書面を受け取ったかを確認しましょう。
再契約を口約束で期待する
「たぶん再契約できますよ」という言葉だけを頼りにせず、見通しはできるだけ書面や記録で確認しましょう。
終了の通知を放置する
通知が届いたら、すぐにケースワーカーと不動産会社に相談してください。
転居費用の扱いを確認せずに契約する
期間満了後の費用が自己負担になると、暮らしに大きな影響が出ます。
契約の内容や手続きについて法的な疑問がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)や岡山市消費生活センター(消費者ホットライン188)などの相談窓口を利用できます。
よくあるご質問
Q1. 生活保護を受けていても、定期借家の物件は契約できますか?
定期借家の物件を契約すること自体は、制度上できないわけではありません。ただし、期間満了で引っ越すときの転居費用の扱いなどを、契約前に担当のケースワーカーへ確認し、確認を受けてから契約することが大切です。
Q2. 定期借家とふつうの賃貸は何が違いますか?
定期借家は契約の更新がなく、決められた期間が満了すると契約が終わります。住み続けるには大家さんとの合意による再契約が必要です。契約は書面で行い、契約前に更新がないことを別の書面で説明することになっています。期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに貸主から終了の通知があります。
Q3. 期間満了で引っ越すとき、敷金や引っ越し代は生活保護で出ますか?
敷金などの初期費用が扶助として認められるのは、国の通知で定められた場合に限られています。大家さんが立ち退きを求めた場合や更新を断った場合などは含まれていますが、定期借家の期間満了がこれに当たるかは明記されていないため、福祉事務所の判断になります。契約前に必ずケースワーカーへ確認してください。
Q4. 定期借家で再契約するときの費用は生活保護で出ますか?
再契約では、再契約料や事務手数料、保証会社の費用、火災保険の更新料などがかかることがあります。ふつうの賃貸の更新料は住宅扶助として認められる場合がありますが、定期借家の再契約の費用がどう扱われるかは、事前に担当のケースワーカーへ確認してください。
Q5. 定期借家は家賃が安いので、生活保護の人にはお得ですか?
住宅扶助は家賃の実費を上限の範囲で支給する仕組みのため、家賃が上限内に収まっていれば、安い部屋を選んでも本人の手元に残るお金は変わりません。本人の負担に影響するのは共益費などです。家賃の安さより、長く安心して住み続けられるかを優先して考えるのがおすすめです。
Q6. 定期借家の終了の通知が届いたら、どうすればいいですか?
すぐに担当のケースワーカーへ連絡し、再契約か転居かを確認してください。転居する場合は、生活保護での部屋探しは段階が多いため、満了の6か月前ごろから物件探しと見積書の準備を始めると安心です。新しい部屋の契約は、ケースワーカーの確認を受けてから結びます。
まとめ
- 生活保護でも、定期借家の物件を契約すること自体はできる
- 定期借家は更新がなく、期間満了で終わる。住み続けるには再契約が必要
- 期間満了で引っ越すときの転居費用が認められるかは、福祉事務所の判断
- 契約前に「満了時の転居費用」と「再契約の費用」の扱いをケースワーカーに確認する
- 家賃が住宅扶助の範囲内なら、安くても高くても本人の負担は変わらない
- 家賃の安さより、住み続けられるかを優先して考える
- 終了の通知が届いたら、すぐにケースワーカーへ。6か月前から動き出す
- 契約は、ケースワーカーの確認を受けてから
部屋を選ぶときは、つい「入るとき」のことばかり考えてしまいがちです。でも、定期借家では「出るとき」のことを先に確認しておくことが、安心して暮らすための鍵になります。
住まいが「いつか終わる」と分かっていると、落ち着かない気持ちになることもあると思います。でも、先のことが分かっているからこそ、準備ができるとも言えます。ひとりで先行きを心配し続けるより、ケースワーカーや不動産会社と一緒に、期間が終わったあとのことを今のうちに話しておきましょう。見通しが立つと、今の暮らしにも安心が生まれます。
長く安心して住める部屋探し、ご相談ください
ミニクルホームは、岡山市北区・中区・南区・東区を中心に、生活保護を受給されている方のお部屋探しをお手伝いしている不動産会社です。
「気になる物件が定期借家だった」「再契約の見通しを確認したい」「定期借家の期間満了が近づいて、次の部屋を探したい」——どの段階でも大丈夫です。契約の種類や再契約の条件を確認したうえで、ケースワーカーに相談すべき点も一緒に整理します。
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※ 記事内の制度の取扱いは一般的な整理であり、特定の結果を保証するものではありません。転居費用や再契約の費用の扱いは、世帯の状況により福祉事務所が判断しますので、契約前に担当のケースワーカー・お住まいの区の福祉事務所へご確認ください。
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