「グループホームを出て、ひとりで暮らしてみたい」
「息子が一人暮らしをしたいと言っている。本当にやっていけるのか、親としては心配だ」
「支援している方の部屋探しを手伝いたいが、不動産会社にどう説明すればいいか分からない」
知的障害のある方の一人暮らしは、本人にとっては大きな一歩です。同時に、家族や支援者の方にとっては、喜びと心配が入り混じるものだと思います。お金の管理はできるだろうか、困ったときに誰かに連絡できるだろうか、そもそも部屋を貸してもらえるのだろうか——不安は尽きません。
先にお伝えします。知的障害があっても、一人暮らしの部屋探しはできます。そして、うまくいくかどうかを大きく左右するのは、障害の程度よりも、支援者と一緒に、暮らしを支える仕組みを整えてから動くことです。
この記事では、岡山市での療育手帳の基本、一人暮らしを支える福祉サービス、支援者と一緒に進める部屋探しの手順、そして物件選びで見ておきたいポイントを整理します。本人の方、ご家族、支援者の方、それぞれの立場で読んでいただけるようにまとめました。
結論|「支援者と一緒に」が、一人暮らしを成功させる鍵
- 部屋探しはできる:知的障害があることだけを理由に、一人暮らしをあきらめる必要はない
- 支援の仕組みが先:訪問による見守り、金銭管理の支援、困ったときの連絡先を整えてから部屋を探す
- 使えるサービスがある:自立生活援助、地域定着支援、ホームヘルプ、社会福祉協議会の金銭管理の支援など
- 療育手帳:部屋を借りるのに必須ではないが、福祉サービスの利用や支援体制づくりで役立つ
- 合理的配慮:2024年4月から事業者にも義務化。不動産会社に分かりやすい説明を求めてよい
- 新しい住まいの仕組み:2025年10月から、見守りと福祉へのつなぎが付いた「居住サポート住宅」が始まった
岡山市の療育手帳の基本
療育手帳は、知的障害のある方が福祉サービスなどを受けやすくするための手帳です。岡山市の案内をもとに、基本を整理します。
区分
障害の程度によって、A(最重度・重度)とB(中度・軽度)に分かれています。
判定
18歳以上の方は岡山市障害者更生相談所、18歳未満の方は岡山市こども総合相談所の判定によります。
手続きの窓口
交付の申請や記載事項の変更などは、住んでいる地域を担当する福祉事務所・支所が窓口です。
判定の基準
療育手帳には、身体障害者手帳のような全国統一の基準がなく、都道府県・指定都市ごとに基準が定められています。ほかの地域から岡山市に引っ越してきた場合は、手続きが必要になることがあります。
部屋を借りるときに、手帳の提示は必須ではない
賃貸の契約で、療育手帳を見せなければならない決まりはありません。障害のことを不動産会社や大家さんにどこまで伝えるかは、本人と支援者で相談して決めて大丈夫です。ただ、支援の体制があることを伝えたほうが、大家さんが安心して入居を検討しやすくなる場面も多くあります。伝え方に迷ったら、不動産会社に相談してみてください。
部屋を探す前に、本人と支援者で整理したいこと
一人暮らしの準備は、部屋探しから始めるのではなく、暮らしのイメージを本人と支援者で共有することから始めるのがおすすめです。
「自分でできること」と「手伝いがほしいこと」
- お金の管理(家賃や光熱費の支払い、毎日のお金の使い方)
- 料理、洗濯、掃除などの家事
- 薬の管理や通院
- ゴミの分別とゴミ出し
- 郵便物や書類の確認
- 困ったとき、具合が悪いときの連絡
- 近所の人とのあいさつやつきあい
全部をひとりでできる必要はありません。「ここは手伝ってもらえば大丈夫」という部分が見えていることが、安心して一人暮らしを始めるための土台になります。
収入と、日中の過ごし方
毎月の収入(障害年金、仕事の給料や工賃、生活保護など)と、日中の過ごし方(一般就労、就労継続支援A型・B型の事業所など)を確認しておきましょう。家賃の上限や、住む場所を決めるときの大切な条件になります。生活保護を受けている、または受ける予定の場合は、家賃が住宅扶助の範囲に収まるかどうかも確認が必要です。
一人暮らしを支える主なサービス
知的障害のある方の一人暮らしを支える仕組みは、いくつも用意されています。組み合わせて使うことで、ひとりでも安心して暮らせる体制をつくることができます。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| 自立生活援助 | グループホームや施設、病院などから一人暮らしに移った方のもとへ、支援員が定期的に訪問し、生活の困りごとの確認や助言、関係機関との連絡調整を行う。相談があれば随時対応も。標準の利用期間は1年 |
| 地域移行支援 | 施設や病院から地域での暮らしに移るための支援。住まい探しへの同行なども含まれる |
| 地域定着支援 | ひとりで暮らしている方と常に連絡が取れる体制を整え、緊急のときに駆けつけるなどの支援を行う |
| 居宅介護(ホームヘルプ) | ヘルパーが自宅を訪問し、家事や身の回りのことを手伝う |
| 計画相談支援 | 相談支援専門員が、本人の希望をもとにサービスの利用計画をつくり、全体を調整する |
| 日常生活自立支援事業 | 社会福祉協議会が、福祉サービスの利用の手続きや、日常のお金の管理を手伝う |
| 成年後見制度 | 判断する力の程度に応じて、後見人・保佐人・補助人が契約や財産の管理を支える |
どのサービスを使えるか、どう組み合わせるかは、本人の状態や希望によって変わります。まずは相談支援専門員に一人暮らしの希望を伝えて、一緒に考えてもらうのが近道です。相談支援専門員がまだいない場合は、お住まいの区の福祉事務所や、岡山市の障害者基幹相談支援センター・サブセンターに相談できます。岡山市では、基幹相談支援センター等で一般住宅への入居を支援する「住宅入居等支援(居住サポート)」も案内されています。
サービスの利用は、市の決定によります
障害福祉サービスを利用できるかどうか、どの程度利用できるかは、申請にもとづいて市が決定します。ここでの説明は一般的な整理としてお読みいただき、実際の利用については、相談支援専門員やお住まいの区の福祉事務所にご確認ください。
支援者の方とご一緒のご相談も歓迎しています
ご本人のペースに合わせて、分かりやすい言葉でご説明します。
相談支援専門員さんやご家族との打ち合わせも可能です。
営業時間 10:00〜18:00/定休日 水曜日・不定休
支援者と一緒に進める部屋探し|6つのステップ
ステップ1|支援者に一人暮らしの希望を伝える
まず、相談支援専門員やグループホームの職員、家族など、身近な支援者に「一人暮らしをしてみたい」と伝えます。本人の気持ちを出発点にすることが何より大切です。支援者は、その希望をもとに、必要なサービスや暮らしの体制を一緒に考えます。
ステップ2|住まいの条件を整理する
家賃の上限、住みたい地域、通う事業所や病院への行きやすさ、支援者が訪問しやすい場所かどうかなどを整理します。「今の生活の場所から離れすぎない」ことは、慣れた環境や人間関係を保つうえで大切なポイントです。
ステップ3|不動産会社に、支援者と一緒に相談する
最初の相談から、支援者に同席してもらうのがおすすめです。どんな支援の体制があるか、どこまで事情を伝えるかを、本人・支援者・不動産会社で共有しておくと、物件探しや大家さんへの説明がスムーズになります。
ステップ4|内見で、暮らしの動きを確かめる
内見には、できれば支援者と一緒に行きましょう。部屋の広さだけでなく、鍵の開け閉め、ゴミ置き場の場所、コンロの種類、バス停までの道のりなど、実際の暮らしの動きを本人と一緒に確かめることが大切です。
ステップ5|審査と契約は、分かるまで説明してもらう
重要事項の説明や契約書の内容は、難しい言葉が多いものです。分かりやすい言葉で、何度でも説明してもらってかまいません。契約の日に支援者に同席してもらう、事前に書類のコピーをもらって一緒に読んでおく、といった方法も役立ちます。生活保護を受けている場合は、契約はケースワーカーの確認を受けてから結ぶのが原則です。
ステップ6|入居の準備と、入居後の見守りを整える
電気・ガス・水道の手続き、ゴミ出しのルールの確認、近所へのあいさつなどを、支援者と一緒に進めます。そして入居後は、誰が、いつ、どんな形で訪問するかを決めておきましょう。困ったときの連絡先を、紙に書いて冷蔵庫に貼っておくのもおすすめです。
物件選びで見ておきたい7つのポイント
家賃や広さに加えて、ひとりで安全に、迷わずに暮らせるかという視点で物件を見ることが大切です。
① コンロの種類
火を使わないIHクッキングヒーターや、消し忘れ防止の機能が付いたコンロだと、火の扱いの心配が小さくなります。
② 鍵とオートロック
暗証番号式のオートロックは、番号を覚えることが負担になる場合もあります。鍵の種類や開け方が、本人にとって扱いやすいかを確かめましょう。
③ ゴミ置き場
場所が分かりやすいか、出せる曜日や時間に決まりがあるかを確認します。いつでも出せるゴミ置き場がある物件は、暮らしやすさにつながります。
④ 通う場所への行きやすさ
仕事や事業所、病院、支援者の事業所に、乗り換えなしで行けるか。迷いにくい道のりかどうかも大切です。
⑤ 部屋の階と周りの環境
1階やエレベーターのある建物、夜道が明るい場所かどうかなど、安全面も見ておきましょう。
⑥ 困ったときの連絡先
水漏れや鍵の紛失など、部屋のトラブルのときに、管理会社にすぐ連絡できるか。連絡先が分かりやすいことは、本人にとっても支援者にとっても安心材料です。
⑦ 家賃の払い方
口座振替や、生活保護の場合の代理納付(福祉事務所から大家さんへ直接支払う仕組み)など、払い忘れが起きにくい方法を選べると安心です。
不動産会社に求めてよいこと|合理的配慮の義務化
2024年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、民間の事業者にも、障害のある方への「合理的配慮の提供」が法的な義務になりました。これまでは努力義務でした。不動産会社も、もちろん対象です。
してはいけないこと(不当な差別的取扱いの禁止)
国土交通省は、不動産業者向けの対応指針を示しています。正当な理由なく、障害があることを理由に物件の紹介を断ったり、障害のない人には付けない条件を付けたりすることは、不当な差別的取扱いにあたるとされています。
お願いしてよいこと(合理的配慮の例)
- ゆっくり、分かりやすい言葉で説明してもらう
- 大事なところを紙に書いてもらう、図や写真で説明してもらう
- 説明を一度で終わらせず、何回かに分けてもらう
- 契約書類を事前に渡してもらい、支援者と一緒に読む時間をとる
- 支援者の同席を認めてもらう
合理的配慮は、本人と事業者が話し合いながら、できる方法を探していくものです。事業者にとって負担が重すぎる場合は、別の方法を一緒に考えることになります。「こうしてもらえると助かります」と、遠慮せずに伝えてみてください。
なお、大家さんや家賃保証会社による入居審査そのもの(家賃を払い続けられるかどうかの確認など)は、これとは別に行われます。だからこそ、次にご紹介する「安心材料」をそろえておくことが大切になります。
大家さんが安心して貸せるための材料
大家さんが心配するのは、障害そのものよりも、「何かあったときに誰とつながれるか」「家賃をきちんと払ってもらえるか」という点であることがほとんどです。次のような材料があると、入居を前向きに検討してもらいやすくなります。
支援の体制が見えること
相談支援専門員や訪問する支援員の連絡先、どんな頻度で関わっているかが分かると、大家さんの不安は大きく減ります。
家賃の支払いが安定していること
障害年金や給料など、毎月の収入があること。生活保護を受けている場合は、代理納付を利用できることも安心材料になります。
居住支援法人の関わり
住まいに困る方の入居や見守りを支援する「居住支援法人」が関わることで、入居後の見守りや相談の体制を整えられることがあります。
居住サポート住宅
2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法で、居住支援法人などが見守りや福祉サービスへのつなぎを行う「居住サポート住宅」の仕組みが始まりました。生活保護を受けている方が入居する場合は、家賃の代理納付が原則とされています。
具体例でイメージ|一人暮らしの1週間
グループホームから一人暮らしに移った、療育手帳Bの30代の方を想定した、支援の組み立ての一例です。
平日の日中:就労継続支援B型の事業所に通う(バスで乗り換えなし)
月曜の夕方:ヘルパーが訪問し、一緒に料理と掃除
水曜の夕方:自立生活援助の支援員が訪問し、困りごとや郵便物を一緒に確認
金曜:社会福祉協議会の担当者と、1週間分の生活費を受け取る
困ったとき:地域定着支援の連絡先に電話。部屋のトラブルは管理会社へ
家賃:口座振替(生活保護の場合は代理納付)
→ ひとりで過ごす時間を大切にしながら、週に何度かは誰かが様子を見に来る形です。
→ 慣れてきたら、訪問の回数を減らしていくこともできます。
これはあくまで一例です
必要な支援は、一人ひとりまったく違います。どのサービスをどのくらい使うかは、本人の希望と状態をもとに、相談支援専門員と一緒に決めていきます。
契約と、本人の意思を大切にすること
賃貸の契約は、住む本人が自分で結ぶのが基本です。大切なのは、本人が内容を理解し、納得したうえで決められるように支えることです。家族や支援者が先回りして決めてしまうのではなく、分かりやすく伝え、本人の選択を尊重する姿勢が求められます。
契約や財産の管理について判断する力に不安がある場合は、成年後見制度を利用し、後見人などが契約に関わる方法もあります。どの方法が合っているかは、相談支援専門員や、社会福祉協議会、法律の専門家に相談してください。
気をつけたいこと
支援の体制を決めずに部屋を決めてしまう
部屋が先に決まっても、入居後の支援が整わないと、暮らしが不安定になりやすくなります。
今の生活圏から遠く離れる
慣れた事業所や病院、知り合いから離れると、思った以上に負担になることがあります。
分からないまま契約書に署名する
分かるまで説明してもらうこと、支援者に同席してもらうことは、遠慮しなくて大丈夫です。
お金の管理を後回しにする
家賃や光熱費の支払いが滞ると、住まいを失うことにもつながります。入居前に、お金の管理の方法を決めておきましょう。
よくあるご質問
Q1. 知的障害があっても一人暮らしの部屋は借りられますか?
借りることはできます。うまく進めるためには、訪問による見守りや金銭管理の支援、困ったときの連絡先など、暮らしを支える体制を支援者と一緒に整えてから部屋を探すことが大切です。支援の体制が見えると、大家さんも安心して入居を検討しやすくなります。
Q2. 部屋を借りるとき、療育手帳を見せる必要はありますか?
賃貸の契約で療育手帳を見せなければならない決まりはありません。障害のことをどこまで伝えるかは、本人と支援者で相談して決めて大丈夫です。支援の体制があることを伝えると、大家さんが安心しやすくなる場面もあります。
Q3. 岡山市の療育手帳はどこで手続きしますか?
交付の申請や記載事項の変更などは、住んでいる地域を担当する福祉事務所・支所が窓口です。判定は、18歳以上の方は岡山市障害者更生相談所、18歳未満の方は岡山市こども総合相談所が行います。区分はA(最重度・重度)とB(中度・軽度)です。
Q4. 一人暮らしを支えるサービスにはどんなものがありますか?
グループホームなどから一人暮らしに移った方を定期的に訪問する自立生活援助、常に連絡が取れる体制を整える地域定着支援、家事などを手伝うホームヘルプ、社会福祉協議会による金銭管理の支援、成年後見制度などがあります。利用については相談支援専門員や福祉事務所にご相談ください。
Q5. 不動産会社に、分かりやすい説明をお願いしてもいいですか?
お願いして大丈夫です。2024年4月から、民間の事業者にも障害のある方への合理的配慮の提供が義務になりました。ゆっくり分かりやすい言葉で説明してもらう、紙に書いてもらう、支援者の同席を認めてもらうなど、助かることを遠慮せずに伝えてください。
Q6. 家族が離れて暮らしていても、一人暮らしはできますか?
できます。家族が近くにいなくても、相談支援専門員や訪問の支援員、居住支援法人などが関わることで、見守りや相談の体制をつくることができます。2025年10月からは、見守りと福祉サービスへのつなぎが付いた居住サポート住宅の仕組みも始まっています。
まとめ
- 知的障害があっても、一人暮らしの部屋探しはできる
- 部屋探しの前に、本人と支援者で暮らしのイメージを共有する
- 自立生活援助、地域定着支援、ホームヘルプ、金銭管理の支援などを組み合わせる
- 岡山市の療育手帳はA・Bの2区分。手続きは福祉事務所・支所
- 部屋を借りるのに療育手帳の提示は必須ではない
- 不動産会社への相談、内見、契約は、支援者と一緒に
- コンロ、鍵、ゴミ置き場、通う場所への行きやすさなどを確認する
- 2024年4月から合理的配慮が義務化。分かりやすい説明を求めてよい
- 支援体制や家賃の支払い方法が、大家さんの安心材料になる
- 本人の意思を出発点に、本人が納得して決められるよう支える
一人暮らしは、ゴールではなく、新しい暮らしのスタートです。最初から完璧である必要はありません。支えてくれる人とつながりながら、少しずつ自分の暮らしをつくっていく。その一歩を、私たちもお手伝いできればと思っています。
「自分の部屋で暮らしてみたい」という気持ちは、とても大切なものです。うまくいかないことがあっても、それは失敗ではなく、暮らし方を見直すきっかけです。困ったら、支援者に相談して、やり方を変えればいいのです。ご家族の方も、心配な気持ちを支援者と分け合ってください。本人の挑戦を見守ることも、立派な支えです。ひとりで暮らすことと、ひとりで抱え込むことは違います。
ご本人・ご家族・支援者の方、どなたからでもご相談ください
ミニクルホームは、岡山市北区・中区・南区・東区を中心に、障害のある方や、生活保護を受給されている方のお部屋探しをお手伝いしている不動産会社です。
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