「親が亡くなったとき、実家を兄弟3人の共有名義にしたままになっている」
「実家には兄が住んでいて、自分は別のアパートで暮らしている」
「仕事を失って生活が苦しい。でも、実家の持分があると生活保護は受けられないのだろうか」
実家が兄弟の共有になっているケースは、岡山でもとても多いです。そして、いざ生活が苦しくなったとき、この「持分」がどう扱われるのか分からず、相談に行くことをためらっている方も少なくありません。兄弟に迷惑をかけたくない、という気持ちもあると思います。
先にお伝えします。実家の共有持分があるからといって、生活保護の相談や申請ができないわけではありません。また、持分があることで、すぐに受給が認められないと決まるわけでもありません。
共有持分は、ひとりの判断で家全体を売れないという、ほかの財産にない事情を抱えています。そのため、福祉事務所にどう状況を伝え、兄弟とどの順番で話を進めるかが、とても大切になります。この記事では、その進め方を整理します。
結論|持分があっても相談はできる。「すぐに売れない事情」を正直に伝える
- 共有持分は資産として扱われ、活用(売却など)を求められることがある
- ただし、家全体は共有者全員の同意がないと売れない。この事情は判断のなかで考慮される
- 居住用で価値が低い、売却が現実的に難しい、他の共有者が住んでいる、といった場合は、持分を持ったまま保護を受けられる可能性がある
- 売却を求められた場合も、売れるまでは保護を受けながら進め、売れたあとに精算する流れになることがある
- 判断するのは福祉事務所。状況をありのまま、具体的に伝えることが出発点
大事なのは、「持分があるから無理だ」と自分で判断して相談をあきらめないことです。持分の割合、家の価値、誰が住んでいるか、兄弟がどう考えているか。こうした事情によって、結論はかなり変わります。
共有持分は、ほかの財産と何が違うのか
生活保護は、使える資産をまず暮らしに活かすことが前提の制度です。預金や車と同じように、不動産の持分も「資産」として扱われます。ただし、共有持分には特有の事情があります。
家全体を売るには、共有者全員の同意が必要
あなたが売りたいと思っても、兄弟がひとりでも反対すれば、家全体は売れません。
自分の持分だけなら、ひとりで売ることはできる
法律上、自分の持分は他の共有者の同意なく処分できます。ただし、持分だけを買いたいという人はほとんどいないため、家全体を売って分けるより、価格は大きく下がりやすいのが実情です。
持分を売ると、兄弟の暮らしに影響が出ることがある
兄弟が実家に住んでいる場合、あなたの持分を第三者が買うと、兄弟は知らない人と家を共有することになります。
つまり、共有持分は「資産ではあるけれど、すぐにお金に変えにくい資産」です。この事情を福祉事務所に正確に伝えることが、相談の進め方の中心になります。
実家の状況別|扱われ方の考え方
同じ「兄弟と共有」でも、実家が今どうなっているかで、考え方が変わります。ご自身に近いものを見てください。
パターンA|兄弟が実家に住んでいて、自分は別の場所に住んでいる
もっとも多いケースです。家全体の売却は、住んでいる兄弟の同意が得られにくいため、現実的に難しいことが多くなります。このような事情は判断のなかで考慮され、持分を持ったまま保護を受けられる場合もあります。一方で、兄弟に持分を買い取ってもらえないか、といった話し合いを求められることもあります。
パターンB|誰も住んでいない空き家になっている
住んでいる人がいないため、生活に必要な資産とはみなされにくく、共有者全員で売却することを検討するよう求められやすいケースです。兄弟と売却の方向で話がまとまれば、比較的進めやすくなります。
パターンC|自分が実家に住んでいて、兄弟と共有している
実家が自分の生活の場そのものである場合です。居住用で、処分価値が利用価値に比べて著しく大きくなければ、住み続けながら保護を受けられる可能性があります。
パターンD|親の名義のまま、遺産分割をしていない
登記上は亡くなった親の名義でも、相続人である兄弟は、法定相続分にもとづいて実質的に共有している状態です。相続登記が2024年4月1日から義務化されているため、いずれ名義の整理が必要になります。この状態のまま相談に行っても大丈夫です。
判断するのは福祉事務所です
持分を持ったまま保護を受けられるか、売却を求められるかは、家の評価、持分の割合、世帯の状況、売却の現実性などを見て、お住まいの区の福祉事務所が判断します。ここでの説明は一般的な考え方の整理としてお読みいただき、実際の扱いは必ず担当のケースワーカーへご確認ください。
実家全体と、あなたの持分。いくらくらいの価値か分かりますか
福祉事務所への説明にも、兄弟との話し合いにも、
まず「数字の目安」があると進めやすくなります。
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岡山市での相談の進め方|5つのステップ
ステップ1|実家の名義と持分の割合を確認する
法務局で実家の登記事項証明書を取得すると、誰が何分の何を持っているかが分かります。オンラインでも請求できます。親の名義のままであれば、その旨が分かるだけでも十分です。固定資産税の納税通知書が手元にあれば、それも用意しておきましょう。
ステップ2|実家のおおよその価値を把握する
家全体がいくらくらいで売れそうか、目安を確認します。査定を受けても、売らなければならないわけではありません。家全体の価値と、自分の持分に相当する額が分かると、福祉事務所に状況を説明しやすくなります。
ステップ3|お住まいの区の福祉事務所に相談する
ここで伝えたいのは、次のような具体的な事情です。
- 実家の持分の割合(例:3分の1)
- 実家に今、誰が住んでいるか
- 兄弟が売却に同意しそうかどうか
- 兄弟との関係(連絡を取れているか、疎遠か)
- 分かっていれば、実家の価値の目安
「兄が住んでいて、売るのは難しいと思う」「何年も連絡を取っていない」といった事情も、そのまま伝えてください。ケースワーカーは、制度の中で使える道を一緒に考えてくれる相手です。
ステップ4|持分をどう扱うか、方向性を確認する
福祉事務所から、持分を持ったままでよいのか、売却などを検討する必要があるのかについて、方向性が示されます。売却を求められた場合は、次の章で説明する方法の中から、現実的なものを考えていくことになります。
ステップ5|動いたことを記録し、こまめに報告する
兄弟に話をした、査定を受けた、不動産会社に相談した。こうした売却や活用に向けて動いた経過は、日付とともに記録しておき、ケースワーカーに報告してください。すぐに売れない事情があるとき、努力を続けていることが分かると、話が進めやすくなります。
売却を求められたときの4つの方法
共有状態を整理する方法は、主に4つあります。上から順に、兄弟関係への影響が小さく、価格面でも有利になりやすい傾向があります。
| 方法 | 兄弟の同意 | 価格の傾向 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 兄弟に持分を買い取ってもらう | 買い取る兄弟の合意が必要 | 話し合いで決まる | 兄弟に資金が必要。実家に住む兄弟にとっては、家を守れる方法になる |
| ② 共有者全員で家全体を売る | 全員の同意が必要 | 市場価格で売りやすい | 住んでいる兄弟がいると難しい。空き家なら進めやすい |
| ③ 自分の持分だけを第三者に売る | 不要 | 大きく下がりやすい | 兄弟が知らない相手と共有することになり、関係に影響が出やすい |
| ④ 共有物分割請求 | 協議で決まらなければ裁判所が判断 | 内容による | 時間と費用がかかる。弁護士の領域 |
まずは①②の話し合いから
兄弟との関係を大きく損なわずに進められるのは、①と②です。特に実家に兄弟が住んでいる場合、①の「兄弟に買い取ってもらう」は、兄弟にとっても家を守れる方法になります。兄弟が持分を一本化できれば、将来の相続でさらに共有が細かく分かれていくことも防げます。
持分だけを業者に売る場合の注意点
③の方法は、兄弟の同意がいらず、早く現金化できる点が強調されがちです。たしかに選択肢のひとつではありますが、次の点はよく考えてください。
- 価格:家全体を売って持分に応じて分ける場合と比べ、かなり低くなることが多い
- 兄弟への影響:持分を買った業者から、兄弟に「持分を買い取ってほしい」「家全体を売りたい」といった連絡が行くことがある。実家に住む兄弟にとっては、大きな負担になりうる
- 契約内容:価格の根拠、手数料、契約後の取り消しの可否を、必ず書面で確認する
- 福祉事務所への相談:売る前に相談し、売却代金の扱いを確認しておく
急ぐあまり、兄弟に何も伝えないまま持分を売ってしまうと、あとで家族関係がこじれてしまうことがあります。③を選ぶ場合でも、できれば事前に兄弟へ伝え、①の可能性がないかを確かめてからにすることをおすすめします。
数字でイメージしてみます
実家全体の査定がおおむね900万円、兄弟3人で3分の1ずつ持っている場合の、考え方の例です。
方法②|3人の同意で家全体を売る場合
900万円 ÷ 3人 = おおむね300万円が自分の取り分(売却にかかる費用を差し引く前)
方法①|実家に住む兄が持分を買い取る場合
兄弟の話し合いで決まります。仮に250万円で合意すれば、兄は家を守れ、あなたは250万円を受け取ることになります。
方法③|自分の持分だけを業者に売る場合
持分だけでは使い道が限られるため、300万円より大きく下がることが多くなります。仮に120万円で買い取られた場合、方法②と比べて180万円ほど少なくなる計算です。
どの方法でお金を受け取っても、そのお金は資産として扱われます。保護を受けながら売却を進めた場合は、売れたあとに、それまでに受けた保護費の範囲内で返還を求められることがあります(生活保護法第63条)。受け取ったお金が当面の生活費になると判断されれば、保護が停止・廃止になることもあります。
数字はあくまで考え方の例です
実際の価格は、家の状態、立地、持分の割合、買い手によって大きく変わります。返還の額や保護の扱いは福祉事務所が判断します。上の数字は、方法による違いをイメージしていただくための目安としてお読みください。
兄弟との関係で、知っておきたいこと
兄弟には「扶養照会」が行くことがあります
生活保護の申請をすると、福祉事務所が親族に援助ができないかを問い合わせる扶養照会が行われることがあります。兄弟姉妹は、法律上の扶養義務者に含まれます。
ただし、扶養照会は一律に行われるわけではありません。長く連絡を取っていない、関係が悪化している、暴力などの事情があるといった場合には、照会を控える運用もあります。兄弟との関係について事情があれば、相談の際に率直に伝えてください。
話を切り出すときは、責める形にしない
「生活が苦しいから、実家を売りたい」と突然切り出すと、実家に住んでいる兄弟は身構えてしまいます。「福祉事務所から持分の扱いについて聞かれている。どうするのがいいか一緒に考えたい」という形で相談を持ちかけると、話が前に進みやすくなります。
兄弟との話し合いが難しい場合は、無理にひとりで抱え込まず、ケースワーカーにその状況を伝えてください。家族間の調整がつかないことも、判断の材料になります。
固定資産税は、共有者が連帯して納める仕組み
共有の不動産にかかる固定資産税は、共有者が連帯して納める義務を負うとされています。実家に住む兄弟が毎年払っていても、納税通知は共有者の代表者あてに届くため、あなたの元に請求が来ることもありえます。
生活保護を受けている方については、固定資産税の減免を受けられる場合があります。共有の場合の扱いも含めて、岡山市の資産税を担当する窓口で確認してください。
気をつけたいこと
持分があることを伝えずに申請する
不動産は登記で確認できるため、後から分かることがほとんどです。伝えていないと、不正受給として扱われるおそれがあります。最初から正直に伝えてください。
相談せずに持分を兄弟へ無償で譲る
「どうせ売れないから」と、福祉事務所に相談しないまま兄弟へ持分を無償で譲ってしまうと、資産を手放したことが問題視される場合があります。譲る、売るといった判断は、必ず事前に相談してください。
売却代金を報告せずに使う
どの方法で売った場合も、受け取ったお金は資産です。使い道を決める前に、ケースワーカーへ報告してください。
名義を親のまま放置する
相続登記は義務化されています。放置していると、次の相続でさらに共有者が増え、整理がいっそう難しくなります。
岡山市で相談できる先
お住まいの区の福祉事務所
生活保護の相談・申請。持分の扱い、扶養照会、売却代金の扱いの確認。
法テラス岡山・岡山弁護士会・岡山県司法書士会
遺産分割、相続登記、共有物分割請求など、法律の手続きに関する相談。法テラスは、条件を満たせば無料で相談できます。
岡山市の資産税担当窓口
固定資産税の納付や減免についての相談。
不動産会社
実家全体の査定、持分に相当する額の目安、兄弟全員での売却、住み替え先の賃貸探し。
当社にできること・できないこと
当社は不動産業者として、実家の査定、共有者全員での売却のお手伝い、住み替え先の賃貸探しを行います。一方、遺産分割、相続登記、共有物分割請求、兄弟間の交渉の代理は、弁護士・司法書士の領域です。当社は法的な判断を行うことも、相続人の間に立って交渉する代理人となることもできません。必要に応じて、提携する専門家や法テラス等の公的窓口をご案内します。
よくあるご質問
Q1. 兄弟と共有名義の実家があると、生活保護は受けられませんか?
共有持分があるからといって、相談や申請ができないわけではありません。持分は資産として扱われますが、家全体は共有者全員の同意がないと売れないという事情は判断のなかで考慮されます。居住用で価値が低い、売却が難しい、他の共有者が住んでいるといった場合は、持分を持ったまま保護を受けられる可能性もあります。判断は福祉事務所が行います。
Q2. 実家に兄が住んでいます。売却を求められますか?
家全体の売却には住んでいる兄の同意も必要なため、現実的に難しい場合が多く、その事情は考慮されます。持分を持ったまま保護を受けられる場合もありますが、兄に持分を買い取ってもらえないかなど、活用の可能性について話し合いを求められることもあります。
Q3. 自分の持分だけを売ることはできますか?
法律上、自分の持分は他の共有者の同意なく売ることができます。ただし、家全体を売って分ける場合より価格は大きく下がりやすく、持分を買った相手と兄弟が共有することになるため、家族関係に影響が出ることがあります。売る前に福祉事務所へ相談し、できれば兄弟にも事前に伝えることをおすすめします。
Q4. 生活保護を申請すると、兄弟に連絡がいきますか?
兄弟姉妹は扶養義務者に含まれるため、援助ができないかを問い合わせる扶養照会が行われることがあります。ただし、長く連絡を取っていない、関係が悪化しているなどの事情がある場合は、照会を控える運用もあります。事情があれば、相談の際に伝えてください。
Q5. 持分を兄弟に無償で譲れば、生活保護を受けやすくなりますか?
福祉事務所に相談しないまま無償で譲ると、資産を手放したことが問題視される場合があります。譲る、売るといった判断をする前に、必ず担当のケースワーカーへ相談してください。
Q6. 実家が親の名義のままです。それでも相談できますか?
相談できます。親の名義のままでも、相続人である兄弟は法定相続分にもとづいて実質的に共有している状態です。登記の状況が分かる書類があれば持参してください。なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されているため、名義の整理についても専門家へ相談しておくと安心です。
まとめ
- 共有持分があっても、生活保護の相談・申請はできる
- 持分は資産だが、家全体は全員の同意がないと売れない事情は考慮される
- 兄弟が住んでいる、空き家、自分が住んでいる、親名義のまま、で考え方が変わる
- 相談の前に、持分の割合と実家の価値の目安を確認しておく
- 福祉事務所には、誰が住んでいるか、兄弟の意向、関係性を具体的に伝える
- 売却を求められたら、まず兄弟による買い取りや全員での売却から検討する
- 持分だけを業者に売る方法は、価格と兄弟への影響をよく考えてから
- 譲る・売る・代金を使う前に、必ずケースワーカーに相談する
- 動いた経過は記録し、こまめに報告する
共有の実家は、お金の問題であると同時に、家族の問題でもあります。だからこそ、急いで答えを出そうとせず、福祉事務所に事情を伝えたうえで、兄弟とも少しずつ話を重ねていくことが、結果的にいちばん負担の少ない道になることが多いです。
生活が苦しいことを兄弟に知られたくない、迷惑をかけたくない。そう思うのは、家族を大切に思っているからこそだと思います。けれど、そのためにひとりで我慢を重ねて、体や心を壊してしまっては元も子もありません。生活保護は、困ったときに誰もが使える制度です。家族に事情がある場合も含めて、まずは福祉事務所で話してみてください。相談することは、家族を裏切ることではありません。
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