「年齢を伝えると、部屋探しで断られることが続いた」
「できることなら、最期まで今の部屋で穏やかに暮らしたい」
年齢を重ねてからの部屋探しや住み替えでは、「この先も、ここに住み続けられるのか」という不安がつきものですよね。生活保護を受けている方の中には、頼れる家族が近くにいないために、より心細く感じている方もいらっしゃると思います。
そんな不安に関わる制度のひとつが「終身建物賃貸借(しゅうしんたてものちんたいしゃく)」です。借りる方が生きている限り続き、亡くなったときに終わる賃貸借契約で、2025年10月の法改正では大家さん側の手続きも簡単になりました。この記事では、岡山市北区奉還町で高齢の方・生活保護の方のお部屋探しをお手伝いしている不動産会社の立場から、しくみと注意点を正直に整理します。
この記事で分かること
- 終身建物賃貸借のしくみと、普通の賃貸との違い
- 高齢の生活保護受給者が使うときのメリット・デメリット
- 岡山市で探すときの進め方と、相談先
結論
① 終身建物賃貸借は、60歳以上の方が借主となり、借主が生きている限り続き、亡くなったときに終わる「一代限り」の賃貸借契約です。更新はなく、契約は相続されません
② 大家さんにとっては「亡くなった後に相続人を探して解約する手間がない」という安心材料になり、高齢の方の受け入れにつながることが期待されています。生活保護を受けていても、家賃が上限内で、ケースワーカーの了承があれば検討の対象になります
③ ただし、取り扱う物件はまだ多くなく、大家さんからの解約が認められる場合や、借主からの解約の予告期間などの注意点もあります。「最期まで住める」は、条件付きの意味で理解しておきましょう
終身建物賃貸借とは? どんな契約なの?
終身建物賃貸借は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」にもとづく契約です。都道府県知事など(岡山市内の物件は岡山市長)の認可を受けた事業者、つまり大家さんが結ぶことができます。主なしくみは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借りられる方 | 60歳以上の方。単身か、同居するのが配偶者(60歳未満でも可)または60歳以上の親族の場合 |
| 契約の期間 | 借主が生きている限り続く(更新はない) |
| 契約が終わるとき | 借主が亡くなったとき(契約は相続されない) |
| 同居している方 | 借主が亡くなったことを知った日から1か月以内に申し出れば、住み続けられる |
| 契約の方法 | 書面による契約(公正証書でなくてよい)。国土交通省の標準契約書がある |
| お試しの入居 | 希望すれば、1年以内の定期建物賃貸借で仮入居できる |
| 住宅の条件 | 段差のない床、浴室などの手すり、廊下の幅といったバリアフリーの基準を満たす住宅 |
※ 国土交通省・自治体の公表資料にもとづく要点です。60歳未満の方は、要介護認定を受けていても対象外とされています。
普通の賃貸や定期借家と、何が違う?
| 普通の賃貸(普通借家) | 定期借家 | 終身建物賃貸借 | |
|---|---|---|---|
| 期間 | 2年ごとなどに更新するのが一般的 | 期間が来たら終了(再契約は合意しだい) | 借主が生きている限り |
| 借主が亡くなったら | 契約は相続人に引き継がれる | 期間が終わるまで相続人に引き継がれる | 契約は終了(相続されない) |
| 借りられる方 | 制限なし | 制限なし | 60歳以上(同居者にも条件あり) |
| 大家さんからの解約 | 正当な理由が必要 | 期間の満了で終了 | 老朽化など限られた場合で、行政の承認が必要 |
普通の賃貸で借主が亡くなると、部屋を借りる権利(賃借権)は相続人に引き継がれます。身寄りの少ない方の場合、大家さんは相続人を探して解約の手続きをする必要があり、これが高齢の方の入居に慎重になる理由のひとつといわれています。
終身建物賃貸借では、亡くなったときに契約が終わるため、この負担が軽くなります。借りる側にとっては「更新されるか」の心配が少なく、貸す側にとっては「万一のとき」の心配が少ない。双方の不安を和らげるためのしくみといえます。
2025年10月の法改正で、何が変わった?
以前は、住宅ごとに認可を受ける必要があり、改修を終えてから申請するなど大家さんの手間が大きく、利用が広がりにくいとされていました。
2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法等により、大家さんは「事業者」として事前に認可を受け、実際に契約するときまでに対象の住宅を届け出ればよい形に簡素化されました。
入居する方にとって契約の中身が大きく変わったわけではありませんが、手続きが軽くなったことで、提供する大家さんが増えることが期待されています。同じ改正では、見守り付きの「居住サポート住宅」や、国が認定する家賃保証会社「認定保証業者」の制度も始まっています。
高齢の生活保護受給者にとってのメリットは?
- 更新の不安が少ない:契約が借主の生きている間ずっと続くため、「次の更新で断られたら」という心配が少なくなります
- 年齢を理由に断られにくくなる可能性:大家さんの「万一のとき」の不安が軽くなるため、高齢の方を受け入れやすくなることが期待されます(審査はあり、入居をお約束するものではありません)
- バリアフリーで暮らしやすい:段差のない床や手すりなど、年を重ねても暮らしやすい基準の住宅です
- 同居の配偶者が住み続けられる:借主が亡くなった後も、申し出れば配偶者などが住み続けられます
- 施設に移るときは1か月で解約できる:療養や老人ホームなどへの入所、親族との同居などの場合は、申し入れから1か月後に契約を終えられるとされています
デメリット・注意点は?
よい面だけでなく、気をつけたい点も正直にお伝えします。
- 物件がまだ少ない:全国的にも取り扱う物件は多くないとされ、岡山市内でも、希望の地域や家賃で見つかるとは限りません
- 「最期まで」は条件付き:建物の老朽化や損傷で維持に過大な費用がかかる場合や、長い間住んでいない場合などは、行政の承認を得て大家さんから解約されることがあります。家賃の滞納などの契約違反があれば、普通の賃貸と同じく契約解除の対象になります
- 自己都合の解約は予告期間が長い場合がある:療養・施設入所・親族との同居など以外の理由では、申し入れから6か月後に終わるのが原則とされています。契約書の解約の条件を事前に確認しましょう
- 同居できる方に条件がある:60歳未満のお子さんなど、配偶者以外の60歳未満の方との同居は対象外です
- 家賃が上限を超えることもある:バリアフリーの基準を満たす住宅のため、家賃が生活保護の上限を超える物件もあります
- 前払い方式の物件もある:家賃の一部を前払いする方式の場合、大家さんには算定根拠の書面での説明や、返金に備えた保全措置が求められます。生活保護の住宅扶助は月々の家賃として支給されるのが基本のため、前払い方式が対象になるかは福祉事務所への確認が必要です
- 亡くなった後の家財の扱いは別:契約が終わっても、部屋に残った家財の処分は別の問題です。国の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を使い、受け取る方や処分の方法を別に取り決める場合があります
生活保護の方が使うとき、家賃の上限や手続きは?
終身建物賃貸借でも、生活保護の家賃(住宅扶助)の上限は普通の賃貸と同じ考え方です。岡山市の上限の目安は、単身でおおむね37,000円、2人世帯でおおむね44,000円です。床面積が15㎡以下の部屋は上限が低くなる場合があり、共益費や駐車場代は含まれません。
※ 2026年10月時点で確認できた岡山市の公表情報にもとづく目安です。世帯の状況によって異なるため、正確な金額は担当の福祉事務所・ケースワーカーに確認してください。
具体例で考えると
- 70代・単身・家賃36,000円+共益費3,000円の場合:家賃は単身の上限の目安(おおむね37,000円)の範囲内です。共益費3,000円は住宅扶助に含まれないため、毎月の生活費から払うことになります
- 70代の夫と50代の妻の2人世帯の場合:配偶者は60歳未満でも同居者として認められるため、対象になります。家賃の上限の目安は2人世帯のおおむね44,000円です
- 70代の母と40代の子の2人世帯の場合:60歳未満の子どもとの同居は対象外のため、終身建物賃貸借は使えません。普通の賃貸で探すことになります
※ 考え方を示すための例です。実際の上限や支給の扱いは、世帯の状況によって異なります。
進め方の手順
- ケースワーカーに住み替えを相談する
転居の理由、家賃の上限、敷金などの初期費用の扱いを確認します。代理納付(福祉事務所から大家さんへ家賃を直接払うしくみ)が使えるかもあわせて確認しましょう。 - 不動産会社に「終身建物賃貸借も検討したい」と伝える
物件が少ないため、普通の賃貸もあわせて探すと選択肢が広がります。年齢や生活保護のこと、同居する家族のことは最初に伝えるとスムーズです。 - 契約の条件を確認する
家賃・共益費、解約の予告期間、前払いの有無、保証会社・緊急連絡先、亡くなった後の家財の取り決めなどを確認します。 - 見積書を福祉事務所へ出す
初期費用を含む見積書をケースワーカーに提出し、確認してもらいます。 - 了承を得てから契約する
書面で契約を結びます。不安があれば、1年以内の仮入居ができるかも相談してみましょう。
大切なこと:契約は、必ずケースワーカーの了承を得てから。
終身建物賃貸借であっても、家賃が上限を超えていたり、初期費用が認められなかったりすると、あとから困ることがあります。
岡山市では、どこに相談すればいい?
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 物件を探したい・契約の条件を知りたい | 不動産会社 |
| 家賃の上限・初期費用・転居の可否を確認したい | 担当の福祉事務所・ケースワーカー |
| 介護や見守り、今後の暮らしを相談したい | お住まいの地域の地域包括支援センター |
| 大家さん・管理会社として制度を導入したい | 岡山市 都市整備局住宅・建築部住宅課 計画係(086-803-1466) |
※ 岡山市内の物件の認可は岡山市長が行い、申請の前に住宅課へ相談するよう案内されています。岡山市・倉敷市以外の岡山県内の物件は、岡山県の所管です。
実際のご相談で多いのは? 現場で感じること
実際のご相談では、70代前後で一人暮らしの方から「更新のたびに、次も貸してもらえるか心配」「年齢を伝えると断られることが続いた」という声をよくお聞きします。一方で大家さんのお話を伺うと、不安の中心は家賃よりも「万一のときの契約と、残された家財の扱い」であることが多いです。
終身建物賃貸借の物件は、岡山市内でもまだ多くはありません。ただ、代理納付、見守りサービス、緊急連絡先の確保、家財の取り決めを組み合わせることで、普通の賃貸でも大家さんの不安が和らぎ、話が前に進むケースがあります。制度の名前にこだわりすぎず、「長く安心して住める条件がそろうか」で選ぶのが現実的だと感じています。
ミニクルホームがお手伝いできること・できないこと
お手伝いできること
- 年齢・生活保護・同居するご家族の状況をお聞きしたうえでの、長く住みやすい物件探し(終身建物賃貸借の物件があるかの確認を含む)
- 物件のメリット・デメリットの両方のご説明と、申込前の管理会社・大家さんの傾向や注意点のお伝え
- 入居費用の計算(LINEや店頭でその場でお出しします)と、福祉事務所提出用の見積書の作成
- 代理納付を前提にしたご相談、来店が難しい方へのオンラインでの重要事項説明
- 相談〜契約〜入居中〜退去後までのLINEでの継続サポート
当社ではできないこと
- 審査結果のお約束、終身建物賃貸借の認可や契約内容に関する法律上の判断
- 生活保護や費用の支給に関する判断、福祉事務所・大家さんとの交渉の代理
よくある質問
Q. 終身建物賃貸借とは何ですか?
A. 高齢者住まい法にもとづく賃貸借契約で、60歳以上の方が借主となり、借主が生きている限り続き、亡くなったときに終わる「一代限り」の契約です。更新はなく、契約は相続されません。都道府県知事など(岡山市内の物件は岡山市長)の認可を受けた事業者が結ぶことができます。
Q. 生活保護を受けていても終身建物賃貸借を利用できますか?
A. 制度上、生活保護を受けていることで対象外になるという決まりはありません。60歳以上などの条件を満たし、家賃が住宅扶助の上限内で、ケースワーカーの了承が得られれば検討できます。ただし、大家さんや保証会社の審査はあり、入居をお約束するものではありません。
Q. 夫婦で住んでいて借主が亡くなったら、配偶者は住み続けられますか?
A. 同居していた配偶者や60歳以上の親族は、借主が亡くなったことを知った日から1か月以内に申し出れば、住み続けられるしくみがあります。配偶者は60歳未満でも同居者として認められます。申し出の期限があるため、契約時に手続きを確認しておきましょう。
Q. 施設に入ることになったら、途中で解約できますか?
A. 療養、老人ホームなどへの入所、親族との同居などで住む必要がなくなった場合は、申し入れから1か月後に契約を終わらせることができるとされています。それ以外の理由では原則として6か月後の終了になるため、契約書の解約の条件を事前に確認してください。
Q. 大家さんから途中で退去を求められることはありますか?
A. 大家さんからの解約は、建物の老朽化や損傷で維持に過大な費用がかかる場合や、借主が長期間住んでおらず今後も住む見込みがない場合などに限られ、行政の承認が必要です。また、家賃の滞納など契約違反があれば、普通の賃貸と同じように契約解除の対象になります。
Q. 家賃を前払いしなければいけませんか?
A. 物件によって、毎月払う方式と、家賃の一部を前払いする方式があります。前払いを受け取る大家さんには、算定の根拠を書面で示すことや保全措置が求められます。生活保護の方は、住宅扶助が月々の家賃として支給されるのが基本のため、前払い方式の物件が対象になるかを福祉事務所に確認してください。
Q. 岡山市で終身建物賃貸借の物件を探すには、どこに相談すればいいですか?
A. 取り扱う物件はまだ多くないため、まずは不動産会社に「終身建物賃貸借も検討したい」と伝えて相談するのがおすすめです。生活保護の方はケースワーカーにも住み替えを相談しましょう。大家さん・管理会社で制度の導入を考えている方の窓口は、岡山市住宅課です。
まとめ:「長く住める」契約を知って、住み替えの選択肢を広げよう
- 終身建物賃貸借は、60歳以上の方が借主となり、亡くなるまで続く一代限りの賃貸借契約です
- 更新がなく契約が相続されないため、借りる側・貸す側の双方の不安を和らげるしくみです
- 2025年10月の改正で大家さんの手続きが簡素化され、物件が増えることが期待されています
- ただし物件はまだ少なく、解約の条件・同居者の条件・前払いの有無などの注意点があります
- 岡山市の家賃の上限の目安は単身おおむね37,000円。契約は必ずケースワーカーの了承を得てから進めましょう
「この先、どこで暮らしていけばいいのだろう」と考えると、気持ちが重くなることもあると思います。でも、制度は少しずつ整ってきていますし、普通の賃貸でも工夫しだいで長く安心して暮らせる住まいは見つけられます。一人で抱え込まず、つらいときはケースワーカーさんや身近な方、地域の相談窓口を頼ってください。私たちも、岡山市で長く住める住まいを一緒に考えます。
※ 本記事は、2026年10月時点で確認できた国土交通省・岡山市などの公表情報にもとづく一般的な解説です。制度の内容は変更される場合があります。審査の結果や入居をお約束するものではありません。契約内容の法的な判断は専門家に、生活保護の可否や費用の支給は担当の福祉事務所・ケースワーカーにご確認ください。
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