「叔父が持っているアパートに空き部屋がある。そこを借りたいけれど、生活保護で家賃は出るのだろうか」
「兄の持ち家が空いているので、家賃を払って住まわせてもらう話になっている」
「親族の家だと、住宅扶助は認められないと聞いたことがある」
身近な親族の家に住めるなら、知らない大家さんの物件より安心だし、事情も分かってもらいやすい。そう考えるのは自然なことです。一方で、生活保護を受けている場合は、親族間の貸し借りならではの確認が入ることがあります。
先にお伝えします。親族が所有する家だからといって、一律に住宅扶助が出ないわけではありません。ただし、本当に家賃を払う賃貸借の関係か、家賃は相場に見合っているか、親族からの援助が期待できないか、同じ世帯ではないかといった点を、福祉事務所が確認することがあります。判断は福祉事務所が行うため、入居や契約の前に必ず相談することが大切です。
この記事では、なぜ親族所有の家では確認が多くなるのか、福祉事務所が確認しやすいポイント、パターン別の考え方、契約前に準備しておきたいことを整理します。
この記事の立場について
住宅扶助を認めるかどうかは、世帯の状況を見て福祉事務所が個別に判断します。この記事は、判断の結果を予想するものではなく、事前に相談するときに何を整理しておけばよいかをお伝えするためのものです。当社は不動産会社として、貸主・借主どちらの立場でも賃貸に関わることがあります。
結論|「一律に出ない」わけではない。ただし確認が多くなる
- 一律に不可ではない:親族所有というだけで、住宅扶助が出ないと決まっているわけではない
- 確認されやすいこと:賃貸借の実態、家賃の水準、親族からの援助(無償で住まわせること)の可能性、同じ世帯かどうか
- 扶養義務者の家は特に:親・子・兄弟姉妹などが所有する家では、援助の可能性がより検討されやすい
- 判断は福祉事務所:入居や契約の前に、必ずケースワーカーへ相談する
- やってはいけないこと:実態のない書類上だけの契約で住宅扶助を受けること。不正受給にあたるおそれがある
なぜ親族所有の家だと確認が多くなるのか|3つの原則
親族間の貸し借りで確認が多くなるのは、生活保護の制度にある、次の3つの考え方が関わってくるためです。
① 扶養は保護に優先する
生活保護法では、民法に定める扶養義務者の扶養は、生活保護に優先して行われるものとされています。民法では、親や子などの直系の家族と、兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があるとされています。
そのため、扶養義務者が所有する家の場合、家賃をとらずに住まわせる、という形の援助ができないかが検討されることがあります。ただし、厚生労働省は扶養は生活保護を受けるための「要件」ではないとしています。親族がいるだけで保護が受けられないわけではなく、実際に援助ができるかどうかが見られます。
② 保護は世帯単位で判断する
生活保護は、世帯を単位として判断するのが原則です。親族と同じ家に住み、生計を同じくしていると判断されると、その親族も含めた世帯全体で、保護が必要かどうかが判断されます。その場合、親族に家賃を払うという形は成り立ちにくくなります。
③ 家賃が実態に見合っているか
国は、生活保護を受けている世帯であることを理由に、合理的な理由もなく家賃が高く設定されていないか、実態の把握に努める必要があるとしています。親族間では家賃を自由に決めやすいため、周辺の相場と比べて妥当かが、より注意深く見られることがあります。
福祉事務所が確認しやすい5つのポイント
| ポイント | 確認されやすい内容 |
|---|---|
| ① 貸主との関係 | 親・子・兄弟姉妹など扶養義務者か、それ以外の親族か |
| ② 住まいの形 | 別の建物・独立した部屋か、貸主と同じ家の中か |
| ③ 契約の実態 | 書面の賃貸借契約があるか、家賃の支払いの記録が残る形か、以前から家賃を払っていたか |
| ④ 家賃の水準 | 周辺の相場に見合っているか、住宅扶助の上限に合わせただけになっていないか |
| ⑤ 貸主側の事情 | 家賃収入が必要な事情があるか、無償で住まわせる余裕があるか |
これらは、福祉事務所が判断するときに確認されやすい点を整理したものです。すべてがそろっていれば必ず認められる、というものではありません。「どの点を聞かれても説明できる状態にしておく」ことが、事前相談をスムーズにするコツです。
周辺の家賃相場の確認など、相談の準備をお手伝いします
親族の家を借りる場合も、一般の物件を探す場合も。
ケースワーカーに相談する前の整理からご一緒します。
営業時間 10:00〜18:00/定休日 水曜日・不定休
パターン別の考え方
親族の家を借りるといっても、状況はさまざまです。代表的な4つのパターンで、確認されやすい点の違いを整理します。
パターンA|親族が持つアパートの一室を、ほかの入居者と同じ条件で借りる
親族が賃貸経営をしているアパートや貸家の一室を、ほかの入居者と同じ家賃・同じ契約条件で借りる場合です。家賃の妥当性を説明しやすく、一般の賃貸に近い形で検討されやすいパターンといえます。それでも、事前の相談は必要です。
パターンB|親族の空き家に、ひとりで住む
親族が所有している空き家に住み、家賃を払う場合です。契約の実態と家賃の水準が、特に確認されやすくなります。周辺の同じような貸家の家賃と比べてどうか、書面の契約があるかなどを整理しておきましょう。
パターンC|親族と同じ家、または同じ敷地の離れに住む
親族の家の一部屋や、同じ敷地内の離れに住む場合は、家賃の前に同じ世帯と判断されるかどうかが問題になります。食事や家計を別にしているか、住まいが独立しているかなどによって判断が変わります。
パターンD|親・子・兄弟姉妹の家を借りる
貸主が扶養義務者にあたる場合は、家賃をとらずに住まわせるという形の援助ができないかが、より検討されやすくなります。一方で、貸主にも住宅ローンの返済や固定資産税などの負担があり、家賃収入が必要な事情があることもあります。そうした事情も含めて、正直に伝えることが大切です。
判断するのは福祉事務所です
ここで挙げたパターンは、確認されやすい点の傾向を整理したものです。実際に住宅扶助が認められるかどうかは、世帯の状況や契約の内容を見て、お住まいの区の福祉事務所が判断します。入居や契約の前に、必ず担当のケースワーカーへご確認ください。
契約の前に準備・確認しておきたいこと
□ 書面の賃貸借契約
家賃、共益費、契約期間などを書面にしておきます。口約束だけでは、賃貸借の実態を説明しにくくなります。
□ 家賃の根拠
周辺の同じような物件の家賃と比べて、どのくらいの水準かを示せるようにしておきます。不動産会社に相場を確認してもらうのもひとつの方法です。
□ 記録が残る支払い方法
現金の手渡しではなく、振り込みや口座振替など、支払いの記録が残る方法にします。福祉事務所から大家さんへ直接支払う代理納付を利用できる場合もあります。
□ 家賃証明書
住宅扶助の額を決めるために、貸主である親族に家賃証明書を書いてもらう必要があります。様式はケースワーカーから受け取ります。
□ 生活の独立性(同じ敷地に住む場合)
食事や家計を別にしていること、住まいが独立していることを説明できるようにしておきます。
□ ケースワーカーへの事前相談
いちばん大切なのはこれです。賃貸の契約は、ケースワーカーの確認を受けてから結ぶのが原則です。ケースワーカーは、制度の中で使える道を一緒に探してくれる相手です。
気をつけたいこと
書類上だけの契約は、絶対にしない
実際には家賃を払っていないのに契約書だけをつくる、受け取った住宅扶助を親族に渡したあとで返してもらう、といった実態のない契約で住宅扶助を受けることは、不正受給にあたるおそれがあります。不正受給と判断されると、受け取った額の返還に加えて、上乗せを求められることがあり、親族にも影響が及びかねません。
家賃を上限に合わせて決めない
住宅扶助の上限にぴったり合わせて家賃を決めると、相場との関係を問われやすくなります。家賃は、その物件の相場にもとづいて決めるのが基本です。
世帯の状況は正直に伝える
実際には親族と一緒に暮らしているのに、別に暮らしているように申告することは避けてください。暮らし方は、ありのままに伝えたうえで判断してもらいましょう。
貸主になる親族の側にも、手続きがある
親族が家賃を受け取る場合、家賃収入として税金の申告が必要になることがあります。税金の扱いについては、税務署や税理士に確認してください。
具体例でイメージしてみます
岡山市の単身世帯(住宅扶助の上限は37,000円が目安)を例にした、考え方の例です。
例1|叔父が持つアパートの一室・家賃35,000円
同じ建物のほかの部屋も、家賃35,000円で貸している
→ ほかの入居者と同じ条件であることを説明しやすい
→ 書面の契約と振り込みの記録を整えて、事前に相談する
例2|兄が持つ空き家・家賃35,000円
周辺の同じような貸家は、家賃5万円前後で募集されている
→ 家賃は相場より低く、上限の範囲内
→ ただし兄は扶養義務者にあたるため、家賃をとらずに住まわせることができないかも含めて確認されやすい
→ 兄の側に住宅ローンや固定資産税などの事情があれば、それも伝える
例3|親の家の2階に住み、親に家賃35,000円を払う
台所や玄関は共用で、食事も一緒にとることが多い
→ 同じ世帯と判断される可能性があり、その場合は親も含めた世帯全体で保護が必要か判断される
→ 親への家賃としての住宅扶助は、認められにくいと考えられる
これはあくまで考え方の例です
実際の判断は、世帯の状況や契約の内容によって福祉事務所が行います。住宅扶助の上限は世帯人数や年度によって変わることがあります。上の例は、確認されやすい点をイメージしていただくための目安としてお読みください。
一般の物件を探すことも、選択肢のひとつ
親族の家を借りる話は、気持ちのうえでは心強い一方で、確認すべきことが多く、親族との関係に気をつかう場面も出てきます。家賃の話がこじれて、親族関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
事前相談の結果によっては、住宅扶助の範囲で一般の賃貸物件を探すほうが、手続きもシンプルで、親族との関係も保ちやすいことがあります。親族の家を借りるか、一般の物件にするか。どちらが合っているかは、ケースワーカーとの相談をふまえて考えるのがおすすめです。
よくあるご質問
Q1. 親族が所有する家を借りる場合、住宅扶助は出ますか?
親族の所有だからといって、一律に住宅扶助が出ないと決まっているわけではありません。ただし、賃貸借の実態、家賃の水準、親族からの援助の可能性、同じ世帯かどうかなどを、福祉事務所が確認することがあります。判断は福祉事務所が行うため、入居や契約の前に必ずケースワーカーへ相談してください。
Q2. 親や兄弟の家を借りる場合は、何が違いますか?
親・子・兄弟姉妹などは民法上の扶養義務者にあたるため、家賃をとらずに住まわせるという形の援助ができないかが、より検討されやすくなります。ただし扶養は生活保護の要件ではなく、実際に援助ができるかどうかが見られます。貸主側に家賃収入が必要な事情があれば、それも伝えてください。
Q3. 親と同じ家に住んで、家賃を払う形にできますか?
生活保護は世帯単位で判断するのが原則です。同じ家に住み生計を同じくしていると判断されると、親も含めた世帯全体で保護が必要かどうかが判断され、親に家賃を払う形は成り立ちにくくなります。食事や家計を別にしているかなど、実際の暮らし方によって判断が変わるため、ケースワーカーに相談してください。
Q4. 親族の家を借りるとき、家賃はいくらに設定すればいいですか?
周辺の同じような物件の相場にもとづいて決めるのが基本です。住宅扶助の上限にぴったり合わせて決めると、相場との関係を問われやすくなります。不動産会社に周辺の家賃相場を確認してもらい、その資料をもとにケースワーカーへ相談すると説明しやすくなります。
Q5. 親族に家賃を現金で手渡ししてもいいですか?
現金の手渡しは、支払いの記録が残りにくく、賃貸借の実態を説明しにくくなります。振り込みや口座振替など、記録が残る方法にしておくのがおすすめです。福祉事務所から大家さんへ直接支払う代理納付を利用できる場合もあります。
Q6. 書類だけ賃貸借契約にしておけば大丈夫ですか?
実際には家賃を払っていないのに契約書だけをつくるなど、実態のない契約で住宅扶助を受けることは、不正受給にあたるおそれがあります。不正受給と判断されると、返還に加えて上乗せを求められることがあり、親族にも影響が及びかねません。暮らし方や契約の実態は、ありのままに伝えてください。
まとめ
- 親族所有の家だからといって、一律に住宅扶助が出ないわけではない
- 「扶養優先」「世帯単位」「家賃の妥当性」の3つの考え方から、確認が多くなる
- 貸主との関係、住まいの形、契約の実態、家賃の水準、貸主側の事情が確認されやすい
- 親・子・兄弟姉妹の家は、援助の可能性がより検討されやすい
- 同じ家に住む場合は、同じ世帯と判断されるかが先に問題になる
- 書面の契約、相場の根拠、記録が残る支払い方法を準備する
- 実態のない契約は、不正受給にあたるおそれがある
- 入居・契約の前に、必ずケースワーカーへ相談する
親族の家を借りる話は、制度のこととあわせて、親族との関係のことも考える必要がある、繊細な問題です。確認されやすい点を事前に整理し、ありのままをケースワーカーに伝えて相談する。それが、あなたにとっても、親族にとっても、いちばん安心な進め方です。
親族に頼ることには、ありがたさと同時に、申し訳なさや気まずさがつきまとうこともあると思います。「迷惑をかけたくない」という気持ちと、「助けてほしい」という気持ちのあいだで揺れるのは、とても自然なことです。制度の確認は専門家に任せて、親族とは無理のない距離感を保てる方法を選んでください。住まいのことで、大切な人との関係まで失う必要はありません。
親族の家を借りるか迷ったら、ご相談ください
ミニクルホームは、岡山市北区・中区・南区・東区を中心に、生活保護を受給されている方のお部屋探しをお手伝いしている不動産会社です。
「親族の家を借りる前に、周辺の家賃相場を知りたい」「ケースワーカーに相談する前に、確認すべき点を整理したい」「親族の家ではなく、住宅扶助の範囲で一般の物件も探したい」——どの段階でも大丈夫です。貸主になるご親族からのご相談も承ります。
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※ 記事内の内容は一般的な考え方の整理であり、住宅扶助が認められることを保証するものではありません。住宅扶助の可否や世帯の判断は、世帯の状況により福祉事務所が行いますので、入居・契約の前に担当のケースワーカー・お住まいの区の福祉事務所へご確認ください。
※ 当社は不動産業者であり、生活保護の判断や、法律・税金に関する判断はできません。家賃収入の税金については税務署・税理士へ、法的な疑問は法テラス等の公的な相談窓口へご相談ください。賃貸の契約は、ケースワーカーの確認を受けてから結ぶようにしてください。
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