「リフォームにお金をかける余裕がない。でも、空き家をこのまま放置するのも気になる」——そんな方が検討する選択肢の一つが、建物を今の状態のまま貸し出す「現況渡し」です。
「現況渡しなら、とりあえず貸せるらしい」という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。ただ、現況渡しは「何もしなくていい」「何も責任を負わなくていい」という意味ではなく、契約の内容次第でトラブルの種になることもあります。
この記事では、現況渡しの基本的な考え方に軽く触れたうえで、特に見落とされがちな「契約不適合責任との関係」「修繕義務がどこまで残るか」「契約書で明記しておきたいポイント」という契約面の注意点を中心に、岡山市の不動産会社が解説します。
現況渡しとは(基本のおさらい)
現況渡し(現状渡し・現状有姿渡しとも呼ばれます)とは、リフォームや修繕を行わず、建物を現在の状態のまま借主に引き渡す取引の形です。工事期間が不要なため、比較的早く貸し出しを始められる可能性があり、リフォーム費用をかけずに済むという点で、初期投資を抑えたい所有者にとって選択肢の一つになります。
どんな物件・借主に向いているか、家賃設定の考え方、オーナーが不安に思いやすいポイント(家賃滞納・孤独死・近隣トラブルへの備え)といった全体像については、【岡山市】空き家をリフォームせずに貸す方法|費用を抑えて活用で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。この記事では、そこから一歩踏み込んで「契約面で何に気をつけるべきか」を中心にまとめます。
まず押さえておきたい誤解:「現況渡し」と契約書に書けば、設備の不具合や建物の欠陥について貸主が一切責任を負わなくて済む——というのは誤解です。現況渡しは「今の状態で引き渡す」という約束にすぎず、それだけで法的な責任がすべて免除されるわけではないとされています。
契約不適合責任との関係
2020年の民法改正により、以前の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」という考え方に整理されました。現況渡しの物件であっても、契約の内容や目的に照らして「あるべき状態」と実際の状態に大きな食い違いがあった場合、貸主が一定の責任を問われる可能性があるとされています。
特に、雨漏りや構造部分の不具合など、建物の安全性や基本的な使用に関わる欠陥については、「現況渡し」の記載だけでは免責されにくいという考え方が有力です。免責を狙う場合は、現況渡しである旨とは別に、契約不適合責任を免除する特約を契約書に明記しておく必要があります。
ただし、免責特約にも限界があります。貸主が知っていながら借主に伝えなかった不具合(故意・重過失にあたる場合)については、免責特約があっても責任を免れないとされる傾向があります。また、貸主が事業として賃貸を行っている場合(宅建業者が絡む取引等)は、消費者契約法や宅建業法の規定により、免責特約自体が無効と判断される可能性もあります。契約書の作成にあたっては、宅地建物取引士など専門家の確認を受けることをおすすめします。
設備の修繕義務は、どこまで貸主に残るか
給湯器やエアコンなどの設備が入居後に故障した場合、「現状有姿」や「借主負担」といった特約があるからといって、貸主の修繕義務がすべてなくなるわけではないという見解が有力です。特に、雨漏りなど建物の躯体・屋根に関わる不具合については、借主に修繕義務を負わせるには、よほど明確で具体的な特約が必要とされる傾向があります。
一方で、使用に大きな支障のない軽微な不具合や、借主自身の使い方が原因で生じた損傷については、貸主の修繕義務の対象外とされることが多いようです。「何が貸主負担で、何が借主負担か」を、契約書上できるだけ具体的に線引きしておくことが、後々のトラブルを防ぐポイントになります。
契約書・重要事項説明で明記しておきたいポイント
- 「現状有姿のまま引き渡す」旨を契約書に明記する
- 設備ごとに、故障時の修繕義務が貸主・借主のどちらにあるかを具体的に記載する(「必要な修繕」のような曖昧な表現は避ける)
- 入居前に室内の状態を写真・動画で記録し、借主にも十分確認してもらう
- 貸主が把握している不具合(雨漏りの履歴、設備の不調等)は、告知義務としてあらかじめ借主に伝えておく
- 契約不適合責任を免除する特約を設ける場合は、その範囲と限界(故意・重過失の場合は免責されないこと等)を理解したうえで記載する
- 残置物(前の入居者や所有者の家具・家電等)がある場合、その扱い(撤去済みか、借主が自由に処分してよいか等)を明確にしておく
DIY型賃貸借という組み合わせの選択肢
国土交通省は、借主の意向を反映した改修を認める「DIY型賃貸借」の契約書式例とガイドブックを公表しています。これは、貸主が現状のまま物件を貸し出し、借主が自己負担(または貸主との合意のもと)で自由に手を加えられるようにする仕組みです。
現況渡しとDIY型賃貸借を組み合わせることで、「そのままでは借り手がつきにくい物件」を、DIYを前提とした個性的な住まいを探している層に向けてアピールできる可能性があります。この場合も、どこまでの改修を認めるか、退去時に原状回復を求めるかどうかを、事前に合意書などで明確にしておくことがトラブル防止の鍵とされています。
現況渡しが向いている物件・慎重に検討したい物件
| 向いている傾向がある物件 | 慎重な検討が必要な物件 |
|---|---|
| 立地が良く、多少古くても賃貸需要が見込める | 電気配線・給排水管・耐震性など安全面に懸念がある |
| DIY可能物件として、個性を求める層に訴求できる | 再建築不可物件、大規模な劣化・損傷がある |
| 家賃を相場より下げることで借主がつきやすいエリア | 雨漏りなど構造部分に不具合の疑いがある |
安全面に懸念がある場合は、現況渡しであっても最低限の修繕や、専門家によるインスペクション(建物状況調査)を検討することをおすすめします。
ワンポイント:家賃設定については、現況渡しの物件は周辺相場より一定程度下げて募集されるケースが多いとされていますが、値引き幅の統一的な相場データはなく、物件や地域によって差があります。近隣の類似物件の募集条件を確認しながら、個別に検討することをおすすめします。
よくあるご質問
「現況渡し」と契約書に書けば、設備の故障対応はしなくてよいのですか?
入居後に「雨漏りがあった」とクレームが来た場合、どうなりますか?
契約不適合責任を完全に免責することはできますか?
DIY型賃貸借を導入する場合、原状回復はどうなりますか?
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※本記事の内容は、複数の公開情報をもとにした一般的な目安であり、契約不適合責任や修繕義務の解釈は個別の契約内容・状況によって異なります。本記事は法的な助言を目的としたものではなく、契約書の作成や個別の法的判断が必要な場合は、宅地建物取引士や弁護士等の専門家にご相談ください。制度・法令に関する内容は記事作成時点の情報であり、将来変更される可能性があります。
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