今回は登記簿についてお話しします。
目次
登記と現実は一致しているのか?
登記内容は常に正しいとは限らないんです。法務局が管理しているのにそれはないと思うことが普通なんですけど、そうではないんです。これからその意味をお話ししますね。ここでいう正しいとは、登記内容が、現実の物的状況や権利関係を正しく反映している一致していることです。早い話が、登記内容が現実と一致していないことが、日常的によくあるんです。
①存在についての不一致
登記上に存在することと、現実に存在することが一致しない。
②記載についての不一致
登記の記載内容が、現実の状況と一致しない。
こんな感じで登記と現実の不一致を理解しないで無条件に登記を信じると思わぬ間違いを犯してしまいます。登記資料を見る場合は、このことをよく理解してないといけません。具体的な事例でご説明します。
すべての不動産は登記されているか?
まず、存在に関する不一致をご説明いたします。次のように登記上の存在の有無と現実の存在の有無は、必ずしも一致しないんです。
①現実に存在する不動産の中には、登記されていない不動産もある。
②登記されている不動産の中には現実に存在しないものもある。
建物を新築したら
建物について考えると、建物を新築したら表題登記(※①)を申請しないと、その建物は登記上では存在していないことになります。登記されないことを未登記と言います。このような建物を未登記建物と言います。
※①表題登記とは、まだ登記されていない土地や建物について、新規で行う登記のこと。 … これを「建物表題登記」という。 建物を新築したら、まず最初に行わなければならない登記で、建物の所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積、所有者の住所・氏名などを登録する。
逆に、建物を取り壊したときに滅失登記(※②)を申請しなければ、その建物はいつまでも登記上は残っていることになります。
※②解体工事後の「建物滅失登記」とは、建物の登記簿を閉鎖する手続きのことで、解体工事後の申請が義務付けられています。 建物滅失登記とは、法務局に記録されている登記簿に、その建物がなくなったことを登記することです。 建物の解体が完了したら建物滅失登記申請書を作成し、1か月以内に管轄の法務局へ申請しなければなりません。
建物を新築したり取り壊した時は、
表示登記・滅失登記の申請が義務付けられていますが、いつも守られているわけではないので問題になります。登記上の存在と現実の存在の不一致は、登記の申請を当事者に任せる申請主義なのが大きな問題点ですから登記させられる限界があります。
こんな現状があるので、新しく存在する建物や存在しなくなった建物が、事実と登記が連動しないことになります。これにより、登記と現実の不一致が発生します。そのために、ある土地の上に建っている建物の登記簿を請求すると未登記のため登記簿がなかったり、すでにない建物があったりするんです。
その他の事情
土地について、埋め立てによって新たに土地が現れたり、河川の流水面下や海面下になって私権の対象と認められない場合もあります。こんなことがあると、建物と同じで申請・手続きが必要です。もっと面白いのが消失した場合はそのまま放置することが多いんですよね。
不動産登記制度の歴史
でも土地に場合、事情がもう少し複雑なんです。出現と消失に関する登記未了に加えて、より本質的な問題があって、それは不動産登記制度の歴史に由来する問題です。
地租改正を足がかりとする日本の不動産登記制度は、課税対象となる民有地を中心に進められて、整理確定にために1筆ごとの土地に番号(地番)を付けて登記しました。その一方で、ほとんどの公有地は地番が付けられず、登記されないままとなりました。
そのために、その時点で公共用に使われていた道路や水路などは、現実には存在しながら、登記上には現れていません。この道路・水路等が登記と現実の不一致に大きな要因となっています。まとめたらこんな感じです。
まとめ
①現実にあり、登記上もある通常のケース
②現実には消滅しているが、登記上は存在している
③現実には存在するが、登記されていない
とてもややこしいですよね。
初歩的な話はここまでで次回に続きを書きますね。