「実家の売却を相談したら、『雨どいが隣の土地の上にはみ出していますね』と言われた」
「何十年もこのままで、隣の方から何か言われたこともない。直さないと売れないのだろうか」
古い住宅地では、隣の家との距離が近く、軒(のき)や雨どいが境界線を越えて隣地の上に出ていることがあります。これを一般に「越境(えっきょう)」、空中に出ている場合は「空中越境」と呼びます。
越境があるからといって、それだけで売れなくなるわけではありません。ただ、売却のときには買主や金融機関から確認を求められることがあり、何も整理しないまま進めると、話し合いが長引く原因になることがあります。この記事では、空き家の雨どいが隣地に越境している場合に、岡山市で売る前に整理しておきたいことを順番にまとめました。
- まず境界の位置と、雨どいや軒がどのくらい越えているかを確認しましょう。
- あわせて、雨水が隣地に直接落ちていないかも見ておきます。民法では、雨水を直接隣地に注ぐ構造の屋根などを設けてはならないとされています(民法第218条)。
- 対応は、雨どいの付け替え、隣地所有者との越境覚書、現状のまま告知して売るなどから、状況に合わせて選びます。
- どの方法でも、買主に越境の事実と対応を伝えることが大切です。
雨どいの越境とは?よくあるケース
越境とは、建物や設備の一部が境界線を越えて隣の土地に入っている状態のことです。雨どいの場合は、地面ではなく隣地の上空に出ていることがほとんどです。
- 家を建てた当時は境界がはっきりせず、軒先ぎりぎりまで建てていた
- 雨どいを交換したときに、前より外側に付けた
- 雨どいが外れたり傾いたりして、隣地側に垂れ下がっている
- 隣の家が建て替えて測量をしたら越境が分かった
- 雨どいだけでなく、屋根や軒そのものが越えている
岡山市の中でも、北区の旧市街や古くからの住宅地では、隣家との間が数十センチしかない家も見かけます。空き家になって何年も経つと、雨どいの破損や詰まりに気づかないまま、雨水が隣の敷地に落ちていることもあります。
なぜ売却で問題になるのか
- 買主の不安:購入後に、隣地所有者から撤去や修理を求められないか心配されることがあります。
- 住宅ローンの審査:金融機関によっては、越境があると担保評価の面から確認を求められ、隣地所有者との覚書の提出を求められることがあります。対応は金融機関によって異なります。
- 隣地との関係:雨水や落ち葉が隣地に落ちている場合、これまで我慢していただいていた可能性もあります。売却をきっかけに話が出ることもあります。
- 建て替えのとき:買主が将来建て替える場合は、越境しない位置に建てる必要があります。
ステップ1:越境の有無と程度を確認する
まずは「本当に越境しているのか」「どのくらいか」を確認します。
- 敷地の角などに境界標(境界杭・プレート)が残っているか
- 過去の測量図・境界確認書が手元にないか(相続した書類の中を探してみましょう)
- 雨どい・軒が境界線から何センチ越えているか
- 越えているのは雨どいだけか、軒や屋根もか
- 雨どいに破損・外れ・詰まりがないか
- 隣地側にエアコンの室外機や配管、ブロック塀など、ほかに越えているものはないか
境界がはっきりしない場合は、土地家屋調査士に境界の確認や測量を依頼する方法があります。売却では、隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確定する「確定測量」を行うこともあり、その際に越境が見つかることもあります。費用や期間は、土地の広さや隣地の数によって変わるため、見積もりで確認しましょう。
ステップ2:雨水の落ち方を確認する
越境とあわせて確認したいのが、雨水がどこに流れているかです。
民法第218条では、「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」と定められています。雨どいが外れていたり、詰まってあふれていたりすると、雨水が隣の敷地に落ちてしまうことがあります。
- 雨の日やその後に、隣地側の地面がぬれていないか
- 雨どいの縦どい(たて樋)が、自分の敷地の排水につながっているか
- 隣の方から雨水や落ち葉について言われたことがないか(親が生前に言われていなかったか、近所の方に聞いてみるのも一つの方法です)
空き家で遠方に住んでいる場合は、管理をお願いしている人や不動産会社に、雨の後の様子を見てもらうと状況がつかみやすくなります。
修理で隣地に入る必要があるとき|隣地使用権のルール
雨どいの付け替えなどで、足場を隣地に置く必要があることもあります。2023年4月1日に施行された改正民法では、境界付近の建物の修繕などのために、必要な範囲で隣地を使用できることが明確にされました(民法第209条)。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 使える目的 | 境界やその付近の建物・塀などの築造・収去・修繕、境界標の調査や測量、越境した枝の切り取り |
| 住家への立ち入り | 隣の家の中に入るには、住んでいる方の承諾が必要 |
| 使い方 | 日時・場所・方法は、隣地の所有者や使用者にとって損害が少ないものを選ぶ |
| 事前の通知 | あらかじめ、目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と使用者に通知する(事前の通知が難しいときは、開始後に遅滞なく) |
| 損害が出たとき | 隣地の所有者や使用者は、償金を請求できる |
ルールが整理されたとはいえ、実際には事前にあいさつをして、了解をいただいてから工事をするほうが、その後の関係も含めてスムーズに進みやすいです。具体的な扱いで迷う場合は、弁護士など専門家に相談しましょう。
対応の選択肢|どう整理して売るか
| 方法 | よい点 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 雨どいを付け替える・短くする | 越境が解消でき、買主が安心しやすい | 工事費がかかる。軒や屋根自体が越えている場合は、雨どいだけでは解消しないことも |
| 隣地所有者と越境覚書を交わす | 大きな工事をせずに、取り決めを書面に残せる | 隣地所有者の協力が必要。金融機関によっては覚書があっても慎重に判断されることも |
| 現状のまま告知して売る | 売主の手間や費用が少ない | 買主が限られたり、価格の調整が必要になったりすることがある |
| 建物を解体して更地で売る | 建物の越境はなくなる | 解体費がかかる。住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がる場合がある |
雨どいの越境は、付け替えや位置の調整で解消できることもあります。まずは屋根や板金の業者に、越境を解消できるか、費用はどのくらいかを見てもらうと、ほかの方法と比べやすくなります。
越境覚書に書いておきたいこと
工事をせずに売る場合や、工事ですぐに解消できない場合は、隣地所有者と越境についての覚書を交わす方法があります。一般的には、次のような内容を書きます。
- 雨どい(軒)が境界線を越えている事実をお互いに確認すること
- 建て替えや改修のときに、所有者の負担で越境を解消すること
- それまでの間は、現状のままとすることを了承すること
- 土地や建物を売却したときは、新しい所有者に内容を引き継ぐこと
覚書の内容は、物件や隣地との関係によって変わります。司法書士・弁護士・土地家屋調査士などの専門家や、売却を依頼する不動産会社と相談しながら作成すると安心です。
隣の方と話しにくいときは
親の代から疎遠になっている、以前に気まずいことがあった、隣地の所有者が遠方にいる——そうした事情で話を切り出しにくい方も少なくありません。いきなり書面を持っていくのではなく、まずは「売却を考えていて、雨どいのことを確認させてほしい」とあいさつから始めると、話が進みやすくなることがあります。一人で抱え込まず、売却の相談先に状況を話してみてください。
買主に伝えたいこと
知っている越境を伝えずに売却すると、後から契約不適合責任を問われるおそれがあります。越境があることは、告知書(物件状況等報告書)に書き、次の内容を整理して伝えましょう。
- 越境しているもの(雨どい・軒など)と越えている長さ(測量図や写真)
- 雨水が隣地に落ちていないか、過去に苦情がなかったか
- 隣地所有者との覚書の有無と内容
- 付け替え工事をした場合は、工事の内容と時期
- 工事をしていない場合は、解消にかかる費用の見込み
売る前に整理する流れ
- 書類と現地を確認する
測量図・境界確認書を探し、雨どいや軒の位置、破損の有無を見ておきます。 - 境界と越境の程度を確かめる
必要に応じて、土地家屋調査士に境界確認や測量を依頼します。 - 雨水の落ち方を確認する
雨の後の隣地側の様子や、縦どいの排水先を確認します。 - 付け替え工事の見積もりをとる
越境が解消できるか、費用と、足場を隣地に置く必要があるかを確認します。 - 隣地所有者にあいさつし、方針を決める
工事をするか、覚書を交わすか、現状で告知して売るかを決め、告知書に記載します。
ミニクルホームにご相談ください
ミニクルホームでは、相続した家や空き家の売却のご相談をお受けしています。雨どいや軒の越境、隣地との関係をうかがったうえで、確認しておきたいことの整理や、工事をしてから売るか、現状で売るかの判断をお手伝いします。当社はリフォームの相談も受けているため、雨どいの付け替えなどの工事についてもあわせてご相談いただけます。
まずはLINEで「雨どいが隣地に越境している空き家を売りたい」と一言送っていただくだけでも大丈夫です。
※当社は不動産会社のため、境界や越境についての法的な判断や、隣地所有者との交渉の代理はできません。弁護士・司法書士・土地家屋調査士など専門家にご相談ください。
※売却価格や売却期間は、物件の状況や市場の動向によって異なります。
よくある質問
- 雨どいが隣地に越境している家は売れますか?
- 売ることはできます。越境の程度と隣地との取り決めを確認し、買主に説明したうえで売却します。状況によっては、雨どいを付け替えて越境を解消してから売る方法もあります。
- 越境しているかどうかは、どうやって調べますか?
- 境界標や過去の測量図・境界確認書で境界の位置を確認し、雨どいや軒がどのくらい越えているかを見ます。境界がはっきりしない場合は、土地家屋調査士に境界の確認や測量を依頼する方法があります。
- 雨水が隣の敷地に落ちているとどうなりますか?
- 民法第218条では、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならないとされています。雨どいの破損や詰まりで雨水が隣地に落ちている場合は、早めに修理を検討しましょう。
- 雨どいの修理で、隣の土地に足場を置けますか?
- 2023年4月1日施行の改正民法で、境界付近の建物の修繕などのために、必要な範囲で隣地を使用できることが明確にされました。あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と使用者に通知することなどのルールがあります。実際には、事前にあいさつをして了解をいただくほうがスムーズです。
- 越境覚書には何を書きますか?
- 一般的には、越境の事実の確認、建て替えや改修のときに越境を解消すること、それまでは現状のままとすること、売却したときは新しい所有者に引き継ぐことなどを書きます。内容は専門家と相談しながら決めると安心です。
まとめ
- まず境界の位置と、雨どい・軒がどのくらい越えているかを確認しましょう。
- 雨水が隣地に直接落ちていないかもあわせて確認します。
- 修理で隣地を使う場合は、隣地使用権のルールを踏まえ、事前のあいさつを大切にします。
- 対応は、付け替え工事・越境覚書・現状で告知などから選びます。
- どの方法でも、買主に越境の事実と対応を伝えることが大切です。
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参考:民法第218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)/TMI総合法律事務所「隣地使用権の整備(民法209条)」/リアルインフォバンク「越境と住宅ローン・覚書」
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