台風・地震で空き家が壊れたら|岡山市の所有者がすぐやること
「台風で実家の屋根がめくれたと、近所の方から連絡があった」
「地震のあと、気になって見に行ったら壁にひびが入っていた」
遠方にお住まいだと、こうした連絡を受けてから現地に着くまでに日数がかかります。その間も雨は降り、被害は広がります。何から手をつければいいのか、分からなくなるのが当然です。
この記事では、空き家が被害を受けたときにやることを順番に整理しました。そして、空き家には人が住んでいる家とは決定的に違う前提があることを、最初にお伝えします。
最初にやるのは片付けではなく、写真です。岡山市も「片付けや修理の前に、家の被害状況を写真に撮って保存しておいてください」と案内しています。片付けてから撮っても、被害の証明になりません。
空き家は、公的な再建支援の対象になりません。被災者生活再建支援法上の「住宅」は現実に居住のために使用している建物とされ、空き家、別荘、他人に貸している物件、建設中の住宅は含まれません。
つまり頼れるのは火災保険です。そして空き家は一般物件として扱われるのが一般的で、地震保険をセットできません。地震被害の場合、公的支援も地震保険もない——これが空き家の現実です。
保険金を請求する権利は、3年で時効にかかるのが原則です(保険法95条1項)。「忙しくて後回しにしていた」が通らなくなります。
り災証明書は住家の被害を証明するもので、空き家や非住家は扱いが異なる場合があります。まず区役所にご確認ください。
近隣に被害を出した場合は、別の問題です。民法717条により所有者が賠償責任を負う可能性があり、こちらは急ぎます。
まず知っておきたい|空き家の前提は違います
| 人が住んでいる家 | 空き家 | |
|---|---|---|
| 被災者生活再建支援金 | 対象(要件を満たす場合) | 対象外 |
| 地震保険 | セットできます | 一般物件扱いならセットできません |
| り災証明書 | 住家として発行 | 扱いが異なる場合があります |
| 応急修理の公的制度 | 制度の対象になり得ます | 居住要件があるものは対象外 |
| 仮住まいの支援 | 対象になり得ます | 住んでいないため対象外 |
| 固定資産税の減免 | 災害時の減免制度があります | 減免の対象になる場合があります |
同法の支援金制度における「住宅」は「現実に居住のために使用している建物」をいい、空き家、別荘、他人に貸している物件、建設中の住宅等は含まれません。
全壊で基礎支援金100万円、加算支援金で最大200万円——こうした金額が報道されることがありますが、空き家はこの制度の外にあります。
「災害になれば国が助けてくれる」という前提は、空き家には当てはまりません。この一点だけでも、知っておいていただきたいと思います。
やることの順番|7ステップ
人への被害がないかを最優先で確認する
建物より先に、人と近隣です。
- 通行人や近隣の方がけがをしていないか
- 崩れた塀や飛んだ屋根材が道路を塞いでいないか
- 隣家の建物・車・設備を傷つけていないか
- 電線が垂れていないか(触らず、電力会社と消防へ)
民法717条では、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたとき、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償責任を負うと定めています。
すぐにやること——①現場の写真を撮る ②相手の方に連絡し、謝意を伝える ③保険会社の事故受付に連絡する。この順番です。
その場で「全額払います」と約束しないでください。保険の対象になるか、金額がいくらになるかは、まだ分かりません。「保険会社に連絡しますので、担当者からご連絡させてください」と伝えるのが適切です。これは誠意を欠く対応ではなく、双方にとって確実な進め方です。
片付ける前に、写真を撮る
これを飛ばすと、あとで取り返せません。
岡山市も、り災証明書の案内の中で「片付けや修理の前に、家の被害状況を写真に撮って保存しておいてください」と明記しています。
- 全景——建物の四面を、少し離れた位置から。どの建物のことか分かるように
- 被害箇所の引き——建物のどこが壊れたかが分かる距離から
- 被害箇所の寄り——壊れ方が分かる近さで
- 室内——雨が入った場所、濡れた天井や床
- 落ちた物・飛んだ物——瓦、トタン、ガラス。どこに落ちたかも含めて
- メジャーを添えて——ひびの幅や被害の範囲が分かるように
- 日付——スマートフォンなら自動で記録されます。日付入り設定なら確実です
枚数は多くて構いません。30枚、50枚でも問題ありません。あとで「あの箇所を撮っていなかった」と気づくほうが困ります。
倒壊のおそれがある建物、床が抜けそうな室内、垂れた電線のある場所。写真は命より大事ではありません。
建物の中に入るのが危険な状態なら、外から撮れる範囲でとどめ、専門業者に調査を依頼してください。
被害が広がらない応急処置をする
写真を撮ったら、被害の拡大を止めます。とくに屋根が壊れている場合、雨が入り続けると建物全体が傷みます。
| 状態 | 応急処置 |
|---|---|
| 屋根に穴・めくれ | ブルーシートで覆う。必ず業者に依頼してください |
| 窓ガラスが割れた | 板やシートで塞ぐ。防犯のためにも |
| 塀が崩れて道路側に | 危険な部分を撤去、またはカラーコーン等で囲う |
| 室内に雨水が溜まった | 排水し、風を通す。放置するとカビと腐朽が進みます |
| 電気が通っている | 漏電のおそれがあるならブレーカーを落とす |
災害後の屋根は、見た目以上に危険です。濡れていて滑り、傷んだ箇所を踏み抜きます。台風後に屋根から転落する事故は毎年起きています。
ブルーシート掛けは、足場や安全帯のある業者に依頼してください。応急処置の費用も、保険の対象になる場合があります(領収書を保管してください)。
空家等適正管理支援事業の中に、倒壊や部材の飛散を防ぐための応急措置に対する補助(上限10万円程度)が設けられている年度があります。
ただし、交付決定前に契約・着工したものは対象外になるのが通例です。急いでいる状況ではありますが、ひと呼吸おいて、まず岡山市 建築指導課 空家対策推進室(086-803-1410)に電話で確認してください。
もちろん、人に危険が及ぶ状況なら安全確保が優先です。補助のために危険を放置する必要はありません。
保険会社に連絡する
応急処置の手配と並行して、保険会社の事故受付に連絡してください。
保険法95条1項では、保険給付を請求する権利は3年間行使しないときは時効によって消滅すると定められています。
「忙しくて後回しにしていた」「そのうち請求しようと思っていた」——これが通らなくなります。空き家の場合、被害に気づくのが遅れることもあるため、気づいた時点ですぐ連絡することが大切です。
- 契約者名、証券番号(分からなければ住所と氏名で照会してもらえる場合があります)
- いつ、何が起きたか
- どこが、どう壊れたか
- 応急処置をしたか、する予定か
- この建物は現在、誰も住んでいないこと
- 近隣に損害を与えた可能性があるか
※最後の2項目は必ず伝えてください。空き家であることを伝えていないと、支払いの段階で問題になるおそれがあります。隠すほうがリスクです。
風災による被害は、築年数にかかわらず補償の対象になり得ます。「経年劣化だと言われるだろう」と自分で判断して請求しない方が多いのですが、判断するのは保険会社です。
ここで効いてくるのが被害前の写真です。巡回のたびに撮っておけば、「この時点では割れていなかった」と示せます。
り災証明書・被災証明書を申請する
税の減免や各種の手続きで、被害を公的に証明する書類が必要になる場合があります。
| 内容 | |
|---|---|
| り災証明書 | 住家の被害の程度(全壊・半壊など)を証明するもの。調査員が被害を認定します |
| 被災証明書 | 被害を受けた事実を証明するもの。被害の程度の認定は伴わないのが一般的 |
岡山市のり災証明書の案内は「お住まいの家屋が被災された方」を対象としており、世帯ごとに交付すると記載されています。店舗・事務所・工場については別の手続きが案内されています。
空き家は「住家」として扱われるのか、非住家として別の証明になるのか——これは個別の判断になります。自己判断せず、まず区役所にお問い合わせください。
申請は各区役所(北区・中区・東区・南区)および支所(御津・建部・瀬戸・灘崎)で受け付けています。本人確認書類と被害状況の写真(プリントしたもの)を持参します。お問い合わせは福祉援護課 086-803-1218です。
なお、火災のり災証明書は消防署での手続きになります。
固定資産税の減免を確認する
災害で家屋や土地に被害を受けた場合、固定資産税・都市計画税の減免を受けられる制度があります。
減免の割合は被害の程度によって決まるのが一般的で、申請にはり災証明書など被害を証明する書類と、申請期限があります。
また、家屋が全壊・滅失して建物がなくなった場合は、土地の住宅用地の特例の扱いにも影響します(災害の場合には特例的な取扱いが設けられることがあります)。
制度の内容・割合・期限は年度や災害の状況によって異なります。岡山市 資産税課(市代表 086-803-1000)へご確認ください。
修理するか、解体するか、売るかを決める
応急処置と保険の手続きが落ち着いたら、この家をどうするかという判断になります。災害は、先送りにしてきた判断を前に出す出来事でもあります。
| 選択肢 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 修理して持ち続ける | 将来使う予定がある。保険金で費用が賄える | 修理後も維持費は続きます(年16万〜28万円の目安) |
| 修理して貸す | 保険金で直せる。立地に賃貸需要がある | 住宅として貸せば保険の区分や税の特例が有利になる可能性 |
| 解体して土地を売る | 建物の損傷が大きい。再建の予定がない | 解体費用(木造3〜5万円/坪が目安)。補助制度の確認を |
| 古家付き土地として売る | 解体費用を出したくない | 被害の状況を買主に正しく伝える必要があります |
| そのまま放置する | —— | 管理不全空家等・特定空家等として指導を受けるおそれ |
保険金の額によって、修理が現実的かどうかが変わります。「壊れたからもう解体しかない」と急いで決める前に、いくら出るのかを確認してください。
逆に、修理費が保険金を大きく超え、将来使う予定もないのであれば、保険金を解体費用の一部に充てるという考え方もあります。
被災地域には「保険金が使えます」「無料で点検します」と訪問してくる業者が現れます。中には、必要のない工事を勧めたり、保険金の請求を代行すると称して高額な手数料を取ったりする事業者もあります。
保険金の請求は、契約者ご自身が保険会社に対して行うものです。代行を名乗る事業者に依頼する必要はありません。
その場で契約せず、まず保険会社に相談してください。不安な勧誘を受けた場合は、消費生活センターにご相談いただけます。
岡山市の相談窓口
| 内容 | 窓口 | 連絡先 |
|---|---|---|
| り災証明書の申請 | 各区役所・支所 | 問い合わせ:福祉援護課 086-803-1218 |
| 火災のり災証明書 | 所管の消防署 | 岡山市消防局 086-234-1515 |
| 危険な空き家の応急措置・補助 | 建築指導課 空家対策推進室 | 086-803-1410 |
| 危険なブロック塀・違反建築物 | 建築指導課 建築安全推進係 | 086-803-1445 |
| 固定資産税の減免 | 資産税課 | 市代表 086-803-1000 |
| 災害ごみ・廃材の処分 | 各区の環境事業所/粗大ごみ受付センター | 粗大ごみ 086-227-5300 |
| 悪質な訪問勧誘の相談 | 岡山市消費生活センター | 市代表 086-803-1000 |
※大規模な災害が発生した場合、市が災害ごみの特別な受入窓口や相談窓口を臨時に設けることがあります。市の公式サイトや広報でご確認ください。窓口・連絡先は変更される場合があります。
岡山で意識しておきたいこと
岡山県は「晴れの国」と呼ばれ、災害の少ない地域という印象があります。実際、全国と比べれば穏やかな気候です。
ただし「少ない」は「ない」ではありません。
- 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)——岡山県内でも大きな被害が発生しました。「岡山は大丈夫」という感覚が崩れた出来事でした
- 台風——瀬戸内でも強風は吹きます。古い瓦屋根やトタンは飛びやすく、空き家は被害に気づくのが遅れます
- 地震——南海トラフ地震の影響が想定される地域です。そして空き家には地震保険が付けられません
・被災者生活再建支援金は対象外
・地震保険は一般物件扱いならセットできない
つまり、公的支援も地震保険も使えないという状態になり得ます。
これは、空き家を持ち続けることのリスクとして、正面から向き合っていただきたい点です。「売る」「貸す」という選択肢を検討する理由のひとつにもなります。
全部を今日やる必要はありません。今日できるのは、写真を撮ること。そして保険会社に電話を1本入れること。この2つだけで、あとの選択肢がぐっと広がります。
判断を急がなくても大丈夫です。応急処置で雨の侵入を止めてしまえば、そこからは落ち着いて考える時間が持てます。
よくある質問
- Q. 台風で空き家が壊れたら、まず何をすればいいですか?
- A. 人や近隣への被害がないかを確認し、次に片付ける前に写真を撮ってください。岡山市も片付けや修理の前に被害状況を写真に撮って保存するよう案内しています。写真を撮ったあと、応急処置の手配と保険会社への連絡を並行して進めます。
- Q. 空き家でも被災者生活再建支援金はもらえますか?
- A. もらえません。被災者生活再建支援法上の「住宅」は現実に居住のために使用している建物とされ、空き家、別荘、他人に貸している物件、建設中の住宅は含まれないと定められています。空き家は制度の対象外です。
- Q. 空き家の保険金請求に期限はありますか?
- A. 保険法95条1項により、保険給付を請求する権利は3年間行使しないときは時効によって消滅するのが原則です。空き家は被害に気づくのが遅れることもあるため、気づいた時点ですぐ保険会社に連絡してください。
- Q. 空き家でもり災証明書は発行されますか?
- A. 扱いが異なる場合があります。岡山市のり災証明書の案内は「お住まいの家屋が被災された方」を対象とし、世帯ごとに交付すると記載されています。空き家が住家として扱われるかは個別の判断になるため、まず区役所にお問い合わせください。問い合わせ先は福祉援護課086-803-1218です。
- Q. り災証明書と被災証明書の違いは何ですか?
- A. り災証明書は住家の被害の程度(全壊・半壊など)を調査員が認定して証明するものです。被災証明書は被害を受けた事実を証明するもので、被害の程度の認定は伴わないのが一般的です。
- Q. 空き家の屋根にブルーシートを自分で掛けてもいいですか?
- A. おすすめできません。災害後の屋根は濡れて滑り、傷んだ箇所を踏み抜く危険があります。台風後の屋根からの転落事故は毎年起きています。足場や安全帯のある業者に依頼してください。応急処置の費用も保険の対象になる場合があるため、領収書を保管してください。
- Q. 隣家に被害を出してしまった場合はどうすればいいですか?
- A. 現場の写真を撮り、相手の方に連絡して謝意を伝え、保険会社の事故受付に連絡してください。その場で全額払うと約束しないでください。民法717条により所有者が賠償責任を負う可能性がありますが、金額や保険の適用はまだ分かりません。保険会社の担当者から連絡させる旨を伝えるのが適切です。
- Q. 災害のあとに訪問してくる業者に依頼して大丈夫ですか?
- A. その場で契約せず、まず保険会社に相談してください。保険金の請求は契約者ご自身が保険会社に対して行うもので、代行を名乗る事業者に依頼する必要はありません。不安な勧誘を受けた場合は消費生活センターにご相談いただけます。
- Q. 岡山市外(倉敷市・玉野市・瀬戸内市・備前市など)でも相談できますか?
- A. はい。ミニクルホームでは岡山市周辺エリアについてもご相談を承っています。り災証明書や税の減免、補助制度の窓口は市町村ごとに異なるため、所在地に応じてご案内します。
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「連絡はもらったが、すぐには行けない」——そうした状況でしたら、現地を確認して写真でご報告します。応急処置が必要な状態であれば、対応できる業者のご案内もできます。
ミニクルホームは、JR岡山駅西口から徒歩7分の奉還町にある不動産会社です。空き家の管理・売買仲介・賃貸仲介を扱っており、県外にお住まいの所有者さまからのご依頼も多くいただいています。
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※本記事は民法、保険法、被災者生活再建支援法、地方税法および内閣府・岡山市等の公表情報、当社の実務経験にもとづき、一般的な考え方を整理したものです(2026年10月時点)。り災証明書・被災証明書の対象や発行の判断、固定資産税の減免の割合・期限、補助制度の要件・金額・受付期間は、災害の規模、建物の状況、年度により個別に異なります。掲載している金額はすべて目安です。当社は保険代理店・法律事務所・税理士事務所ではなく、個別の保険契約の判断、法律判断、税務判断を行う立場にはありません。保険の補償内容と請求手続についてはご契約の保険会社または取扱代理店へ、り災証明書については各区役所および福祉援護課(086-803-1218)へ、応急措置の補助については岡山市 建築指導課 空家対策推進室(086-803-1410)へ、税の減免については岡山市 資産税課へ、賠償責任については弁護士へ必ずご確認ください。制度は改正される場合があります。
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