「実家の横の通路を、隣の家の人も昔から通っている。親の代からのことで、特に約束事は聞いていない」
「売ったあとに、買主さんと隣の方がもめたりしないだろうか」
古くからの住宅地や、親族で土地を分けて家を建てた地域では、一つの通路を何軒かで使っていることがあります。普段は何の問題もなくても、売却で所有者が変わるときには、「この通路は誰のもので、隣の方はどんな理由で通っているのか」を確認されることがあります。
この記事では、相続した空き家の通路を隣家も使っている場合に、岡山で売却前に確認しておきたいことを順番にまとめました。隣の方との関係を大切にしながら、売主として整理しておきたいポイントです。
- まず通路の所有者(自分の土地か、共有か、隣地か)を、登記簿・公図・測量図で確認しましょう。
- あわせて、通路が建築基準法上の道路にあたるかを確認します。岡山市では「岡山市建築基準法関係道路マップ」や建築指導課の窓口で確認できます。
- 隣の方が通っている理由(通行の根拠)によって、売却後の扱いが変わります。囲繞地通行権や通行地役権にあたる場合は、買主が通行を認める必要があることがあります。
- 取り決めがない場合は、隣の方と話し合い、覚書を作ることを検討し、買主には通行の状況を正確に伝えましょう。
よくあるケース
- 空き家の敷地の端が通路になっていて、奥の家の人が通って道路に出ている
- 親族で土地を分けたときに、本家と分家で一本の通路を共用することにした
- 通路部分が数軒の共有になっていて、それぞれが持分を持っている
- 隣の方が車で出入りしたり、自転車や物を置いたりしている
- 通路の下に、隣の家の水道管や排水管も通っている
岡山市でも、北区・中区の古くからの住宅地や、東区・南区などで農地や屋敷を分けて家を建てた地域では、こうした通路の共用を見かけることがあります。
なぜ売却で問題になるのか
- 買主の使い方が制限される:通路部分に塀や門扉を作ったり、車を止めたりできない可能性があります。
- 建て替えの計画に影響する:通路を残す前提で建物の配置を考える必要があります。
- 隣家の暮らしに関わる:隣の家にとって唯一の出入り口であれば、通行できなくなると生活や建て替えに大きな影響が出ます。
- 売却後のトラブル:取り決めがはっきりしないと、買主と隣の方との間で話がこじれることがあります。
ステップ1:通路の所有者を確認する
まず、通路部分が誰の土地なのかを確認します。
- 登記簿(登記事項証明書):通路部分が別の地番になっていないか、共有になっていないか
- 公図・地積測量図:通路の位置と、土地の境目の関係
- 登記簿の権利部(乙区)に地役権の登記がないか
- 相続した書類の中に、通行についての承諾書・覚書や、通行料を受け取っていた記録がないか
登記簿や公図は、法務局で取得できます。古い家では、通路だけが別の地番で、親や祖父母の名義のままになっていることもあります。その場合は、通路部分の相続手続きも必要です。売却の対象に入れ忘れないよう注意しましょう。
ステップ2:建築基準法上の道路かを確認する
通路が、建築基準法上の「道路」(位置指定道路や、いわゆる2項道路など)にあたる場合は、一般の通路とは扱いが変わります。建物を建てるときに道路として扱われ、所有者でも勝手にふさげないことがあります。
岡山市では、「岡山市地図情報」の「岡山市建築基準法関係道路マップ」や、建築指導課(本庁6階)の窓口に備え付けの地図で確認できます。最新の情報は窓口の地図で確認するよう案内されています。
窓口での確認について
岡山市の建築基準法上の道路についての相談は、建築指導課 審査係(北区大供一丁目1番1号 本庁6階)の窓口で受け付けています。電話・ファックス・メールでの対応はしておらず、各区役所や支所でも対応していないとされています。登記簿や公図を持って行くと話が進みやすくなります。
道路の幅や前面道路の見方については、「道路の幅や現況を調べる 中古住宅 岡山」の記事も参考にしてください。
ステップ3:隣の方が通っている理由を整理する
隣の方が通路を通っている理由によって、売却後の扱いが変わります。主な考え方は次のとおりです。
| 通行の根拠 | どんな場合か | 売却後の扱いの目安 |
|---|---|---|
| 囲繞地 通行権 (いにょうち つうこうけん) |
隣の土地が他の土地に囲まれて公道に出られない場合に、法律上当然に認められる通行の権利(民法第210条) | 登記がなくても認められる。買主も通行を認める必要がある |
| 通行 地役権 (つうこう ちえきけん) |
契約などで、自分の土地の通行のために他人の土地を通る権利を設定したもの(民法第280条)。一定の要件で時効により取得されることも | 登記があれば買主に主張できる。登記がなくても、主張が認められる場合がある(下で説明) |
| 共有の私道 | 通路部分を数軒で共有している | 共有者として使う権利がある。持分の確認が必要 |
| 好意・口約束での通行 | 近所付き合いの中で、通ることを認めてきた | 状況による。買主が通行を認めるかどうかで、話し合いが必要になることも |
囲繞地通行権では、通行の場所や方法は、通る側に必要で、通られる土地にとって損害ができるだけ少ないものを選ぶとされ(民法第211条)、原則として償金の支払いがあります。ただし、土地を分けたり一部を譲渡したりしたことで出口のない土地ができた場合は、分けた側の土地だけを通ることができ、償金は不要とされています(民法第213条)。親族で土地を分けた場合などは、この扱いが関係することもあります。
登記がない通行地役権でも、買主が通行を認める必要がある場合
通行地役権は、登記をしておくことで、土地を買った人にも主張できるのが原則です。ただし最高裁判所は、登記がなくても、次のような場合には、土地を買った人は登記がないことを主張できないと判断しています(最高裁平成10年2月13日判決)。
- 売買のときに、その土地が隣の方によって継続的に通路として使われていることが、位置・形状・構造などから客観的に明らかであること
- 買った人が、そのことを知っていたか、知ることができたこと
つまり、目で見て通路として使われていると分かる状態なら、登記がなくても、買主が通行を認めなければならない場合があるということです。売主としては、通路の使われ方を正確に買主に伝えることが、後のトラブルを防ぐことにつながります。
どの権利にあたるかは、土地の位置関係、これまでの経緯、取り決めの内容などによって変わります。判断が難しい場合は、弁護士や司法書士に相談しましょう。
ステップ4:隣の方と取り決めを整理する
書面での取り決めがない場合は、売却の前に隣の方と話し合い、通行についての覚書を作ることを検討します。一般的には、次のような内容を書きます。
- 通行できる場所・幅(図面で示す)
- 徒歩だけか、車も通れるか
- 通路に物を置かないなどの使い方のルール
- 舗装や草取りなど、維持管理の分担
- 通行料の有無
- 土地を売却・相続したときに内容を引き継ぐこと
状況によっては、通行地役権の設定登記をする、通路部分を分けて隣の方に買い取ってもらう、といった方法も考えられます。どの方法がよいかは、隣の方の意向や費用によって変わるため、専門家や不動産会社と相談しながら進めましょう。
隣の方と話しにくいときは
長年、何も言わずに通ってもらっていた通路について、いきなり「書面を」と言うのは気が引けるものです。まずは「家を売ることを考えていて、通路のことを確認させてほしい」とあいさつから始め、隣の方の困りごとも聞いてみると、話が進みやすくなることがあります。隣の方にとっても、取り決めが書面になることは安心につながる場合があります。
反対に、空き家側が隣の土地を通っている場合
空き家の出入りのために、隣の方の土地を通らせてもらっている場合は、確認の向きが逆になります。通行の根拠がはっきりしないと、買主が住宅ローンを組みにくかったり、建て替えができなかったりすることがあります。この場合も、通路の所有者、道路の種類、通行の承諾書の有無を確認し、早めに相談しましょう。
買主に伝えたいこと
知っている事情を伝えずに売却すると、後から契約不適合責任を問われるおそれがあります。告知書(物件状況等報告書)に記載し、次の内容を整理して伝えましょう。
- 通路の位置と所有者(図面・登記簿)
- 隣の方の通行の状況(徒歩・車、頻度、いつ頃から)
- 通行の根拠として分かっていること(登記、覚書、経緯)
- 通路の下の配管の有無
- 過去のトラブルや話し合いの有無
売却前に確認する流れ
- 通行の状況を把握する
誰が、どこを、どのように通っているかを確認し、写真に残します。 - 登記簿・公図・測量図を取り寄せる
通路の所有者、地役権の登記の有無を確認します。 - 道路の種類を確認する
岡山市建築基準法関係道路マップや建築指導課の窓口で確認します。 - 通行の根拠を整理する
書類や経緯をもとに、必要に応じて弁護士・司法書士に相談します。 - 隣の方と話し合い、売り方を決める
覚書の作成などを検討し、告知書に記載して買主に伝えます。
ミニクルホームにご相談ください
ミニクルホームでは、相続した家や空き家の売却のご相談をお受けしています。通路の使われ方や登記の状況をうかがったうえで、確認しておきたいことの整理や、買主への伝え方、売り方の判断をお手伝いします。
まずはLINEで「空き家の通路を隣の家も使っている」と一言送っていただくだけでも大丈夫です。
※当社は不動産会社のため、通行権の有無などについての法的な判断や、隣地所有者との交渉の代理はできません。弁護士・司法書士など専門家にご相談ください。
※売却価格や売却期間は、物件の状況や市場の動向によって異なります。
よくある質問
- 隣の家が通路を使っている空き家は売れますか?
- 売ることはできます。通路の所有者と、隣の方が通っている理由を確認し、買主に伝えたうえで売却します。取り決めがない場合は、隣の方と話し合って覚書を作ることを検討しましょう。
- 売却したら、買主は隣の方の通行を止められますか?
- 通行の根拠によって変わります。囲繞地通行権にあたる場合や、通行地役権が登記されている場合は、買主も通行を認める必要があります。登記がない通行地役権でも、通路として使われていることが客観的に明らかで、買主がそれを知ることができた場合などは、買主が通行を認めなければならない場合があります(最高裁平成10年2月13日判決)。
- 通路が建築基準法上の道路かどうかは、どこで調べられますか?
- 岡山市では、「岡山市地図情報」の「岡山市建築基準法関係道路マップ」や、建築指導課(本庁6階)の窓口で確認できます。窓口での相談は対面で受け付けており、電話・ファックス・メールでの対応はしていないとされています。
- 通行についての覚書には何を書けばいいですか?
- 一般的には、通行できる場所と幅、徒歩か車か、使い方のルール、維持管理の分担、通行料の有無、売却や相続のときに内容を引き継ぐことなどを書きます。内容は専門家と相談しながら決めると安心です。
- 通路部分だけ親の名義のままでした。どうすればいいですか?
- 通路部分も相続の手続きが必要です。売却の対象に含めるか、隣の方との共有になっていないかなどもあわせて確認し、司法書士に相談しましょう。
まとめ
- まず通路の所有者を、登記簿・公図・測量図で確認しましょう。
- 通路が建築基準法上の道路かを、岡山市の道路マップや窓口で確認します。
- 隣の方が通る理由(通行の根拠)によって、売却後の扱いが変わります。
- 登記がなくても、買主が通行を認める必要がある場合があります。
- 取り決めがなければ覚書を検討し、買主には通行の状況を正確に伝えましょう。
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参考:岡山市「建築基準法の道路について」/全日本不動産協会「地役権の対抗要件」(最判平成10年2月13日)/弁護士法人ひょうご「囲繞地通行権とは」(民法210条〜213条)/三井住友トラスト不動産「通行地役権のトラブル」
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